閉塞性動脈硬化症
略称 | ASO |
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別名 | arteriosclerosis obliterans |
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 50 歳以上の高齢男性,喫煙,糖尿病,高血圧,脂質異常症などの動脈硬化の危険因子を有しているものに多く認められる.
- 腹部大動脈を含め腸骨動脈,大腿動脈が侵されやすいが,糖尿病患者や透析患者では下腿病変(膝下)を合併しやすい.
- 病態は間欠性跛行と重症虚血肢に大別される.
- 間欠性跛行に対しては運動療法,薬物療法を第一選択とし,改善のない場合に血行再建術(血管内治療,バイパス術)を検討する.
- 重症虚血肢に対しては血行再建を第一選択とし,困難症例に対しては疼痛コントロールを含め,薬物療法を行うが,40%は初診から 6 カ月以内に大切断となっている.
- 重症虚血肢の 1 年死亡率は 20%以上であり,下腿切断例の 2 年死亡率は 25%である.
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診断・検査
- ①脈拍の触知および血管雑音
- 最も基本的で簡便な診断法であり,両側の頸動脈,上腕動脈,橈骨動脈,大腿動脈,膝窩動脈,足背動脈,後脛骨動脈の触知をそれぞれ確認することにより,どの範囲に狭窄,閉塞が存在するかを予測することが可能である.また,血管雑音は,動脈が狭窄を呈しているときに聴取できる.とくに頸部,鼠径部,下腹部でよく聴取される.
- ②局所所見のチェック
- ① チアノーゼ,冷感,蒼白,下肢の萎縮,爪の変形,脱毛,潰瘍,壊死などをチェックする.
- ② 挙上試験:患者を仰臥位とし,両下肢を挙上して30~60 秒間足趾を屈伸させて足底部の色調を観察すると正常肢では色調の変化はないが,虚血肢では蒼白になる.中等度以上に虚血が進行している場合にみられる.
- ③ 下垂試験:挙上試験に続き,椅子などに腰掛けて両下肢を下垂させ,足の色調が回復するまでの時間を観察する.正常肢では10 秒前後で元の色調に戻るが,狭窄・閉塞があると1 分以上遅れる.
- ③四肢血圧測定
- 評価方法として,足関節上腕血圧比(ABI)が最も用いられている.ABI は足関節収縮期血圧/上肢収縮期血圧で,正常値は1.0~1.3 である.0.9 以下は何らかの虚血があることが示され,1.3 以上は動脈の石灰化が著明な患者にみられる.また安静時のABI が正常であっても負荷後に低下する例もあり,トレッドミル施行後のABI 測定が有用である.
- ④皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)
- 足趾,足部,足関節用のカフの内側にレーザドプラを内蔵して皮膚灌流圧を測定し,皮膚表面から1 mmの深さまでの皮膚血流を評価する.主に重症虚血肢の評価に有用である.
- ⑤超音波検査
- 検者の技量に左右されやすいが,腸骨動脈~大腿,膝窩動脈にかけての評価が可能であり,血流速度,波形により狭窄重症度の判定が可能である.
- ⑥CT
- Multidetector-row CT angiography(MDCTA)は,1 回の息止めで腹部大動脈から下肢全体の高速撮像が可能であるが,80~100 mL 程度の造影剤の使用が必要であるが,血管造影では評価困難な動脈壁性状(石灰化,プラーク性状など)の評価が可能である.
- ⑦血管造影
- 上腕動脈,大腿動脈などからのカテーテルの挿入が必要となるが,CT よりも少ない造影剤で施行可能である.造影剤の流れを経時的に観察でき,血行動態の評価に役立つ.Digital subtraction angiography(DSA)を用いることにより,骨などの背景を消した状態で血管内腔のみを鮮明に描出することが可能であり,詳細な診断,治療方針の決定にも有用性が高い.
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