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吐血・下血

別名 hematemesis, hemorrhagic stool

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. まず行うべきことは,循環動態の評価と安定化などの全身管理であり,ショック指数(心拍数/収縮期血圧)1.0は軽症,1.5は中等症,2.0は重症である.吐血では,まず上部消化管からの出血かどうかを見極めることが重要である.鼻出血,喀血などのこともあるので,これらに留意した問診と診察が必要になる.
  2. 下血では色調により,上部消化管出血(タール様),下部消化管出血(暗赤色~鮮血)のどちらであるかを推測することが可能である.しかし,大量の上部消化管出血でも暗赤色となりうるので,総合的判断が必要である.
  3. 吐血・下血いずれの場合においても致死率の高い食道静脈瘤破裂かどうかを見極めることが重要である.下部消化管出血では,大量出血の原因となる大腸憩室出血と出血性直腸潰瘍に注意する.
  4. バイタルサインが不安定の場合は,安定化後に,食道静脈瘤破裂を疑う場合は即座に内視鏡検査を行う.
  5. 止血手技は術者がもっとも慣れた手技を中心に,出血状態に応じて2種類ほどを使い分けることが肝要である.
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診断

  1. ①問診
    1. ① 吐血の性状:鮮血の場合は,食道静脈瘤破裂,胃潰瘍からの大量出血を除けば,上部消化管以外の出血(鼻出血,喀血,歯肉出血など)を疑う.嘔吐している途中から嘔吐物が血性となった場合は,Mallory-Weiss 症候群を疑う.
    2. ② 吐血の量:大量に吐血する場合は,食道・胃静脈瘤破裂,Mallory-Weiss 症候群,胃・十二指腸潰瘍,大血管腸管瘻のいずれかである.
    3. ③ 下血の性状:タール便であれば上部消化管出血(表1),赤黒~鮮血便であれば下部消化管出血(表2)を疑うが,食道静脈瘤破裂など大量に出血をきたす疾患では,赤黒い下血となることもある.
    4. ④ 下血の量:下血量が多いにもかかわらずバイタルサインが安定している場合には下部消化管出血を疑う.
    5. ⑤ 肝疾患(特に肝硬変)の既往歴:食道静脈瘤破裂は緊急性が高いため必ず問診する.
    6. ⑥薬剤使用歴(NSAIDs,ステロイド,抗凝固薬)
    7. ⑦飲酒歴,喫煙歴
    8. ⑧ヘリコバクター・ピロリの検査歴や除菌歴

  2. ②診察
    1. ①眼瞼結膜:貧血がないか確認をする.
    2. 肝硬変を疑わせる所見:黄疸,腹水,くも状血管腫,手掌紅斑,女性化乳房,下腿浮腫など.
    3. ③ 腹部圧痛の有無:反跳痛や筋性防御も合わせて確認し,腸閉塞や消化管穿孔を起こしていないかの確認をする.
    4. ④ 直腸診:下血の場合,色調の確認や疾患がないかの確認をする.

  3. ③検査
    1. ① 採血:Ht1%の低下はおよそ100 mL の出血と概算するが,急性期はHb も含めて低下していないこともある.貧血を認めた際,MCV が低値であれば鉄欠乏性貧血=慢性の経過である.MCV が正常値であれば比較的急性経過の出血を示唆する.血小板数の低下は肝硬変を疑うべきである.その他BUN,Cre 含む生化学,肝機能検査,凝固系検査,輸血を念頭において血液型などを確認する.
    2. ② 血液ガス:乳酸アシドーシスはショックを示唆する.
    3. ③ 胸部Xp:吐血により誤嚥性肺炎を起こしていないかを確認する.
    4. ④ 腹部Xp:腸閉塞や,消化管穿孔を起こしていないかを確認する.
    5. ⑤ 腹部CT:侵襲の少ない検査であり,得られる情報も大きい.食事をしばらくしていないのに,胃内に残渣があれば上部消化管出血を疑う根拠にもなる.緊急内視鏡検査が困難な下部消化管出血に関しては,第一選択になりうる.0.5 mL/分以上の活動性出血時に造影CT で,出血部位の同定が可能とされる.
    6. ⑥ 上部消化管内視鏡検査:緊急止血を要する吐下血は,圧倒的に上部消化管に多いので,通常まず上部消化管内視鏡検査を行う.これで出血源が判明しない場合は,下部消化管内視鏡検査,血管造影を行う.なお24 時間以内に内視鏡を施行しないと予後が悪くなるというエビデンスはあるが,24時間以内のどのタイミングで内視鏡を施行したらよいか,ということに関する確固としたエビデンスはない.

  4. ④内視鏡で診断できない下血:内視鏡で診断できない下血は小腸病変のことが多い.
    1. ① 血管撮影:0.5 mL/分以上の動脈性出血は造影剤の漏れで診断が可能である.出血が確認されれば引き続き塞栓療法やバソプレシンの持続動注により止血をはかることができる.
    2. ② 出血シンチ:99mTc を用いて出血シンチ,Meckel憩室の診断が行われる.

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表1 上部消化管出血をきたす代表的な疾患
表はPC版サイトをご覧ください
表2 下部消化管出血をきたす代表的な疾患
表はPC版サイトをご覧ください
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