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NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患/NASH+NAFL)

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は,飲酒歴がなく(エタノール換算で男性30 g/日未満,女性20 g/日未満),ウイルス性肝疾患・自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis:AIH)・原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis:PBC)・薬物性肝障害などの慢性肝疾患を有さず,かつ肝臓に脂肪沈着を認める疾患の総称である.軽症型といえる単純性脂肪肝(simple steatosis:SS)から,1980年にLudwigらにより提唱された非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH),さらにNASH肝硬変(NASH LC)までと,幅広いスペクトラムをもつ.2014年4月に,日本消化器病学会から「NAFLD/NASH診療ガイドライン2014」(以後,ガイドライン)が公表された.さらに,その後の進歩も反映させて,日本肝臓学会から「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」が刊行されている.
  2. ガイドラインでは,今回NAFLDを大きく2つに分類した.ひとつは「NAFL(nonalcoholic fatty liver,非アルコール性脂肪肝)」で,もうひとつが「NASH」である.
  3. 以下の場合などではNAFLD/NASHを念頭におく.①アルコール摂取:男性30 g/日未満,女性20 g/日未満.②ALT(GPT)>AST(GOT)の肝障害:アルコール性との違い.③ウイルス性肝炎やAIH,PBCなど他に肝障害の原因がない.④遺伝性・代謝性疾患が否定される(糖原病,Wilson病,ヘモクロマトーシスなど).⑤薬物性肝障害が否定される.⑥エコーでの肝腎コントラスト陽性(bright liver),単純CTでのCT値を用いた肝脾CT値比(L/S比,H/S比)が0.9未満.⑦BMIが25以上の肥満(ただし,肥満がないNAFLD症例はある).
  4. ガイドラインによると,「NAFLDの有病率は欧米諸国で20~40%,わが国では9~30%で,世界的に男性が女性より多く,年齢分布では,わが国では,男性は中年層,女性は高齢者に多い傾向である」と報告されている.また「一方,NASHの有病率は世界的に3~5%と推定されているが,有病率の性差は明らかでない」とある.
  5. NAFLDのなかでの重症型がNASHと考えられ,その絞り込みは重要.NASH診断において肝生検での組織診断がgold standardであるが,どのような症例に対し肝生検を行うかの判断は十分検討すべきである.肝臓の線維化の評価には,NAFLD fibrosis scoreやFIB4 indexといった簡単に算出できるスコアリング法も大いに参考になる.
  6. メタボリックシンドロームの一環として,肝障害にのみとらわれず,高脂血症,耐糖能異常などの存在に目をむける.米国の大規模studyで,糖尿病患者(173,643人)の肝臓癌の発生頻度は,ハザード比2.16倍で,非糖尿病患者(650,620人)に対して高いとの報告がある.
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検査

  1. ①一般血液検査,エコー,単純 CT.必ず L/S 比(H/S 比)を算出する.すなわち,肝臓と脾臓にロイ(region of interest:ROI)をたて,CT 値を測定する.ALT 優位のトランスアミナーゼ上昇,γ-GTP 上昇.線維化が進行するにつれ,AST 上昇(AAR の上昇)をきたし,血小板低下,Ⅳ型コラーゲン 7S 上昇,P-Ⅲ-P 上昇,ヒアルロン酸上昇などがみられる.2015 年から保険適用で測定可能となった M2 binding pro-tein Gi(Mac-2 結合蛋白糖鎖修飾異性体)も,線維化マーカーとして有用である.
  2. ②Fe,フェリチン測定(NASH では上昇していることが多い).FBS および空腹時インスリン(IRI)を測定し,HOMA-R の算出を必ず行う.インスリン抵抗性は NAFLD/NASH の多くが有しているとされる.この観点などからNAFICスコアがわが国より提唱されている.場合によっては OGTT を施行し,耐糖能異常をチェックする.
  3. レプチンアディポネクチンの測定.保険適用はない.これらは,TNFαと同じくアディポサイトカインの一種である.NAFLD/NASH において,レプチンは高値,アディポネクチンは低値を示すことが多い.
  4. ④NASH の確定診断は,あくまで肝生検.ただし, NAFLD の全例に肝生検を施行するのではなく,上記検査などから総合的かつ効率的に絞り込みを行い,生検するかどうか決定すること.この観点では,Fibroscan®などの非侵襲的なモダリティを利用した評価も考慮したい.また,NAFLD fibrosis score やFIB4 index といった簡単に算出できるスコアリング法も十分活用したい.
  5. ⑤NAFLD/NASH の診断後は,合併症としての食道静脈瘤や肝臓癌の検索を怠らないこと.また,腫瘍マーカーとして,NASH 関連の HCC(hepatocellular carcinoma)は,PIVKA Ⅱの上昇例の頻度が高いという報告がある.

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