プライマリケア Primary Care

sysmex

疾患スピード検索

胆管癌、乳頭部癌

別名 bile duct cancer, cancer of papilla of Vater

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 胆管癌の90%は黄疸で発症している.黄疸患者を診察した場合,必ず腹部エコー(ultra-sonography:US)検査にて閉塞性黄疸の有無のチェック,閉塞部位の確認,病因の大まかな判断(結石か腫瘍か)を行う.
  2. 無黄疸例の症状は右上腹部痛,食思不振,発熱などである.血液検査で胆道系酵素の上昇があれば必ずUS検査を行う.無黄疸が必ずしも早期癌ではないが,早期発見のきっかけとなりうる.検診でチェックされるケースもある.乳頭部癌では黄疸の消長が見られる場合がある.
  3. 近年画像診断の能力が発達し,胆管癌に対しても多くの医療機関で活用されてきている.胆管癌の確定診断・治療法決定(特に手術術式と切除範囲決定)においては患者侵襲度の低いモダリティから順次適応し,癌の進展範囲の確定などで最終判定不可能な場合にのみ高侵襲の検査へステップアップしていく.
  4. ハイリスク群に先天性胆道拡張,膵・胆管合流異常(総胆管拡張を伴うもの),原発性硬化性胆管炎,肝内結石,肝吸虫があり,さらに近年,印刷労働者(ジクロロメタンなどの有機溶媒長時間高濃度曝露者)の胆管癌発症が問題になっている.比較的若年者で胆管癌を疑う場合には詳細な職業歴聴取が必須である.
  5. 胆管炎合併例には早急に,また広範肝切除予定例には術前に減黄処置〔経皮経肝胆道ドレナージ術(percutaneous transhepatic biliary drainage:PTBD),内視鏡的逆行性胆管ドレナージ術(endoscopic retrograde biliary drainage:ERBD),内視鏡的経鼻胆管ドレナージ(endoscopic nasobiliary drainage:ENBD)〕を行う.胆管の断絶(いわゆる泣き別れ)がある場合には,片側肝葉(残存予定側)のドレナージにて一定の減黄効果が得られれば,すべての閉塞胆管をドレナージする必要はない.欧米では術前減黄術の有効性・安全性を否定する報告が多い.
  6. 癌の進展様式を詳細に検討し,根治切除が可能と判断されればさまざまな術式で対応する.術中は肝側断端の迅速病理検査を必ず行う.根治切除不能と判定された症例には化学療法,放射線療法(腔内照射併用),またはこれらの併用療法を行うがその評価は現在まだ定まっていない.さらには黄疸とQOLの改善を目指した胆道ステント術の積極的適応を検討する.
  7. 胆管癌に対する化学療法として5-FU,TS-1が用いられてきたが,その後ゲムシタビン,シスプラチンも保険適用となり,現在1stラインとしてはゲムシタビン+オキザロプラチン(Gemox)療法が有望である.2ndライン以降の評価は定まっていない.
  8. 2014年11月,7年ぶりに『胆道癌診療ガイドライン 改訂第2版』が刊行された(胆道癌診療ガイドライン 改訂第2版,2014参照).その序では,「胆道癌の診療領域では必ずしも充分なエビデンスが得られていないテーマが多々存在」と述べられており,実際にエビデンスレベル(A~D)でAはわずか3件,編集委員の70%以上の賛成による推奨度(1,2,なし)の1の項目も多くないことに留意するべきである.しかし,今後はこの『ガイドライン』に準拠した診療が望まれる.その内容は,従来の本書(および今次改定版)の記述とほぼ同一である.
  9. 2013年11月『胆管癌取扱い規約』が改訂され(第6版),国際化に対応してUICC分類および病理学的にはWHO分類と整合性が図られた.また解剖学的分類なども若干変更された.
詳細を見る

検査・診断

  1. ①血液生化学検査
     AlP,γGTP の上昇が必発.黄疸例では当然 T-Bil上昇がみられるが,必ず D-Bil も測定し,閉塞パターン(D 型優位)を確認しておく.AST,ALT などの肝機能異常,炎症反応の程度はさまざま.腫瘍マーカーでは CA19-9 がもっとも鋭敏(陽性率 70%)だが,胆管閉塞や炎症による偽陽性に要注意.ほかにCEA, DUPANⅡ,CA125 など.
  2. ②US
     検査手技の熟達と熱意で約半数に腫瘤描出可能といわれるが,腸管ガスなどによる死角がある.肝内胆管拡張,総胆管拡張,胆嚢腫大(Courvoisier 兆候)所見があれば必ず精査(セカンドステップ)にまわす.
    以上が「ファーストステップ」である.
  3. ③CT(MD-CT)
     造影CT,ダイナミックCTは腫瘍占居部位の診断,進展度診断(とくに壁内深達度である垂直方向進展)に有用で,さらに進行した壁外進展(とくに隣接血管への浸潤の有無など)や遠隔転移診断にも用いる.また,冠状断描画や脈管などの 3 D 画像が容易となり,切除術式決定や手術オリエンテーションに重要な情報となる.ただし,MRI,CT ともに平坦型,壁内浸潤型胆管癌の進展度診断は今なお困難を伴うことがある.その対策のひとつは MRI,CT 検査の留意点として必ず胆道ドレナージ術施行前に行うことによりわずかな壁肥厚の所見を見逃さないようにすることである.
  4. ④上部消化管内視鏡検査
     乳頭部癌では有症状・無症状患者の上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で発見される場合があり,Vater乳頭に腫瘤を認めれば腺腫疑いであっても必ず生検を行う.また以後のステップアップ検査を進めて行く.
    以上が「セカンドステップ」である.
  5. ⑤MRI(MR cholangiopancreatography:MRCP)
     閉塞部位の確定,管内進展度の診断,膵・胆管合流異常の確認に有用である.造影 MRI や新撮像法,画像作成ソフトを駆使すればとくに壁面に沿った広がりである水平方向進展のより詳細な描出が可能で,内視鏡的逆行性胆道造影(endoscopic retrograde chol-angiography:ERC)を避けうる可能性もある.ただし,3 テスラの装置においても呼吸変動などによるアーチファクトも多く,拡散強調画像,呼吸同期法,パラレルイメージングなどの対応が有用である.
  6. ⑥ERCP,管腔内超音波検査(intraductal ultrasono-graphy:IDUS)
     セカンドステップで水平進展度診断困難例に ERCを行う.直接造影像の壁不正の詳細な読影が必要であるが,黄疸例ではENBDを行い減黄後に十分な造影剤の圧をかけて撮像する.また肝門部領域胆管癌では想定手術の残肝側胆管のみ造影する.症例によっては引き続き IDUS で垂直進展診断(壁構造の肥厚・不整・菲薄・断裂),さらに病巣から連続する壁肥厚・不整像を追うことにより表層(水平)進展の診断に有用である.ただし,微小浸潤の診断には限界がある.質的診断として胆汁細胞診や病変部の擦過細胞診も可能であり,陽性的中率は高いが感度はさほど高くない.また胆道癌には前癌病変や移行病変が存在し,固定標本の病理診断も困難な例があることに留意が必要である.
  7. ⑦超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography:EUS)超音波造影剤併用で血流を見ながら観察でき,遠位胆管癌の水平方向・垂直方向進展度評価の精度が上昇した.とくに乳頭部癌においては,膵臓・十二指 腸・胆管・膵管進展や門脈浸潤の有無,近傍リンパ節転移の有無の診断に優れている.また非露出腫瘤型乳頭部癌では引き続き細経針吸引細胞診による診断確定も可能である.他方 EUS は肝門部領域胆管の観察には不向きである.
  8. ⑧PET-CT
     胆管癌の原発巣検出率は 70%前後といわれ期待されたよりは低い.したがってスクリーニング検査には適さない.その代わり遠隔転移やとくにリンパ節転移の診断率では MD-CT をしのぎ,病期診断や術後の再発検索に優れた検査法で保険適用となった.
  9. ⑨胆道ファイバー
     PTBD の経路を広げて施行する経皮経肝胆道鏡(percutaneous transhepatic cholangioscopy:PTCS)や ENBD,または ERC に引き続いた経口胆道鏡(peroral cholangioscopy:POCS)による胆管壁の直接観察〔さらに狭帯域光(narrow band imag-ing:NBI)観察〕や生検・細胞診は胆管癌の水平進展診断および質的診断の精度をさらに増す.また診断困難な良性病変(硬化性胆管炎)との鑑別にも有用である.
    以上が「サードステップ」である.これらの診断法を順を追って駆使し,系統的に胆管癌のステージング診断,根治切除可能性検索,切除術式の選択,切除範囲(特に肝門部領域胆管癌では肝内胆管の切除限界との位置関係)の確定に進めて行く.

詳細を見る
お問い合わせ サイトマップ
個人情報の取り扱いについて ご利用に際して
会社概要
PAGE TOP