リンパ球交差試験
リンパ球交差試験
別名 | LCTクロスマッチ |
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臨床的意義
- 抗リンパ球抗体は,標的リンパ球の種類(T細胞,B細胞)と抗体のクラス(IgG,IgM)とによって,4種類に分けられる.本試験は,臓器移植の予後推測やPTRがみられたときに実施される.
- 臓器移植の予後推測:腎移植の場合は,ドナーT細胞に対する抗体が陰性であることを確認する必要がある.特に,LCT交差試験でHLAクラスⅠに対するIgG抗体が認められた場合は,移植後,超急性拒絶反応を生じ移植臓器が生着しない危険性が高い.
- 肝移植の場合には,本試験が陰性であることは必須条件ではなく,臨床的意義も確立されていないため,本試験陽性を理由に移植を回避することはない.しかし,陽性の場合には,移植後1年以内の拒絶反応による生着不全が有意に多いとする報告もある.
- PTRがみられたとき:頻回に輸血を行った患者では,抗リンパ球抗体により,発熱などの非溶血性輸血副作用や,血小板輸血不応状態(PTR)を生じることがある.PTRの約90%はHLAクラスⅠ抗体によるものなので,このような場合には,HLAクラスⅠ抗原適合血小板製剤を輸血する必要がある.適合するドナーを選択するためにLCT交差試験が行われる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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陰性(Grade 1以下)
変動要因 - 陽性
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経産婦、 血小板輸血不応状態(PTR)
- 血小板輸血不応状態(PTR)
- 輸血既往例,経産婦
- 次に必要な検査
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- 抗体の免疫グロブリンのクラス(IgGかIgMか)を鑑別する.
- 抗体のHLA特異性を決定する.
- PTRの場合,血小板特異抗体および他の補体非結合性抗体が関与している可能性を検索する.
- 変動要因
- LCTは補体を用いた血清反応なので,補体が活性化されない場合は偽陰性を呈する.偽陰性が否定できない場合は,クームス法の原理を用いたAHG-LCT法(抗HLA抗体を検出する最も信頼性の高い方法である)を用いる.
- PTR症例に対し,本試験が陰性の適合血小板を輸血したにもかかわらず,血小板数が期待どおり増加しないことがある.この場合は,HLA以外の血小板特異抗体,あるいは他の補体非結合性抗体が関与している可能性が考えられる.
( 村上純子 )
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