頭痛
headache
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 頭痛の診療で重要なことは一次性頭痛(片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛など)と二次性頭痛(脳腫瘍,クモ膜下出血など)の鑑別である(日本頭痛学会・日本神経学会(監)慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会(編):慢性頭痛の診療ガイドライン2013.医学書院,2013 参照).とくに二次性頭痛に含まれる危険な頭痛を確実に診断することが大切である.50 歳以降で新規に生じた頭痛,神経脱落症候を伴う頭痛など,危険度の高い頭痛の臨床的特徴を知っておく必要がある.
- 一次性頭痛の診療の目標は適切な治療により生活の質(QOL)と日常生活機能(ADL)の改善を図ることである.一次性頭痛に対する治療の基本は発作頓挫薬による鎮痛,再発予防および非薬物療法である.
- 緊張型頭痛の生涯有病率は 30~78%といわれ,一次性頭痛のなかでもっとも多い.あらゆる疾患のなかでも,もっとも多い疾患のひとつである.
- 片頭痛のわが国での有病率は 8.4%と高率であり,さらに本症は慢性的に身体的,心理的,社会的機能を阻害する.世界保健機関は片頭痛について,健康寿命を短縮する疾患のなかで第 19 位と高位に位置づけている.本症の正確な診断と適切な管理が求められる.
- 薬物乱用頭痛は,片頭痛や慢性緊張型頭痛の患者が頭痛頓挫薬を過剰に使用することにより,慢性的に頭痛を生じる状態である.治療の基本は起因薬の中止である.抑うつ,不安を合併する場合は精神神経科との連携が必要である.
- 髄膜刺激徴候の明らかでない髄膜炎はまれではない.発熱と頭痛の患者をみた場合には髄膜炎を常に念頭におき,疑われる場合は髄液検査を実施する.
- クモ膜下出血は発症 12 時間以内の頭部 CT により高感度に検出できる.頭部 CT で所見がなく,本症が疑わしい場合には MRI の FLAIR 撮影を実施する.画像所見が陰性でも,発症後 12 時間以降の場合は腰椎穿刺で確認する.
- 日本神経学会・日本頭痛学会より「慢性頭痛治療ガイドライン 2013」が発行されており,診療に際して参考にする.
検査
二次性頭痛の可能性がある場合は頭部CT,頭部MRI,髄液検査,血液検査などにより鑑別診断を進める.
- ①突然発症で,5分以内に痛みのピークとなる激しい頭痛に対しては,クモ膜下出血を鑑別するために,頭部CT や頭部MRI(Flair 法)と髄液検査を実施する.
- ②新規発症の頭痛には頭部CT や頭部MRI を実施する.慢性頭痛では,①群発するタイプの頭痛,②神経学的異常所見を認める頭痛,③片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛として分類できない頭痛,④前兆のある頭痛,⑤労作やバルサルバ手技で悪化する頭痛,⑥嘔吐を伴う頭痛は危険度が高く,画像検査を実施する.
- ③慢性頭痛患者で過去に画像検査を受けたことがない場合は,頭部CT または頭部MRI を実施する.脳実質の病変だけでなく,副鼻腔を含めて頭部全体の変化に注意する.
- ④発熱を伴う頭痛では髄膜炎を念頭におく.無菌性髄膜炎患者で髄膜刺激徴候が認ないことはまれではない.髄膜炎の可能性を疑う場合には腰椎穿刺を行う.
- ⑤腰椎穿刺を施行する前に,頭部CT で頭蓋内占拠性病変を否定する.
- ⑥緊張型頭痛の症例では,頸椎単純Xp 撮影で変形性頸椎症,生理的前彎の消失の有無などを検索する.