鉄欠乏性貧血
iron deficiency anemia
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
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Clinical Chart
- 鉄欠乏性貧血は,原発性貧血の 80~90%を占める.
- 鉄の喪失(消化管出血,月経,血尿,血液透析,runner’s anemia など),摂取量の低下(栄養不良,Crohn 病,胃部分切除による吸収低下)または需要増大(妊娠,成長)が原因となる.
- 一般的貧血症状以外に特徴的所見として,口角炎,萎縮性舌炎,異食症(pica),匙状爪(spoon nail)がある.
- 診断
①病態の進行に伴い小球性正色素性貧血から小球性低色素性貧血に進行する.
②病態が増悪すると赤血球大小不同や奇形赤血球が増加する.
③血清鉄の低下,フェリチンの低下.
④ 出血となる原因疾患の検索:消化性潰瘍,消化器癌,痔核,動静脈奇形,婦人科疾患(子宮筋腫や子宮癌による性器出血)・泌尿器科疾患(尿路悪性腫瘍などによる血尿). - 原因疾患の治療を行う.その上で経口による鉄剤投与が基本.
- 基礎疾患にもよるが,鉄欠乏性貧血のみであれば予後はよい.
検査所見
- ①末梢血液
- ① 赤血球指標:MCV(<80 fL),MCH(<26 pg)の低下.MCHC は,必ずしも低下しないが,高度の貧血が長期になると低下する(<31%).
- ② 血液像:鏡検すると,中心の色素を欠いた(central pallor)部分が,径の1/3 以上に及ぶ薄い赤血球をみかけ,ときに変形した赤血球(poikilocyte)や大小不同(anisocytosis)をみる.標的赤血球(target cell)をみかけることもある.網赤血球は,正常か軽度に増加している.白血球は正常か軽度に低下し,血小板は正常の2 倍程度までに増加する(エリスロポエチン増加による).
- ③ 最近では自動血球測定機器により,網赤血球数の比率と絶対数が同時に測定できるようになり,赤血球数に対する比率(%)で表し基準値は0.5~1.5%である.網状赤血球の絶対数の基準値は,男性が8,000~11 万/μL,女性は8,000~12.5万/μL である.
- ① 赤血球指標:MCV(<80 fL),MCH(<26 pg)の低下.MCHC は,必ずしも低下しないが,高度の貧血が長期になると低下する(<31%).
- ②血清鉄の減少(<60μg/dL),総鉄結合(TIBC)の増加(>360μg/dL),不飽和鉄結合能(UIBC)の増加(UIBC=TIBC-Fe,>300μg/dL),トランスフェリン鉄飽和度(血清鉄/総鉄結合能)の低下(<16%).
- ③血清フェリチンの低下(<12 ng/mL)
- ① 貯蔵鉄の指標であり,鉄欠乏状態を早期の段階で反映する.
- ②二次性貧血との鑑別に重要である.
- ① 貯蔵鉄の指標であり,鉄欠乏状態を早期の段階で反映する.
- ④骨髄(必ずしも必要ではないが,補助診断としては,意義がある)
骨髄像では,赤血球は過形成で小型.鉄芽球の減少(sideroblast<10%)も認められる.