慢性リンパ性白血病
CLL
chronic lymphocytic leukemia
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- CLL とは末梢血,骨髄,リンパ節で単クローン性の CD5,CD23 陽性成熟 B 細胞が蓄積・増殖する腫瘍として定義されている.欧米では年間 100,000 人当たり 3.9 人が発症するが,日本では 1/6~1/10 の発症率でまれな疾患である.
- 最近では,無症状で血液検査にてリンパ球増加の異常所見を指摘され,診断される症例が増加している.リンパ節腫脹が重要な所見であるが,なかには,発熱や全身倦怠などの全身症状を呈することがある.
- 検査所見
①末梢血のクローナルな B リンパ球増加(>5,000/μL)の所見が,診断に必須である.
②表面マーカーでは,CD 5 と CD 23 陽性を示す B 細胞のクローナルの増加が認められる.B 細胞マーカーである CD19 もまた陽性となる.さらに,B 細胞マーカーのうち B細胞受容体と関連する CD20,CD79a/b,表面免疫グロブリン(surface immuno-globulin:sIg)の発現は弱いかときに欠如している.これは CLL 細胞が何らかの抗原刺激のよって活性化していることを意味しているとされている.
③低ガンマブロブリン血症や免疫異常が認められ,多くの症例は易感染性を示す.また,自己抗体をしばしば認め,自己免疫性溶血性貧血(20~30%に合併)などの自己免疫性疾患を合併する. - 治療
①CLL は,疾患の経過が緩徐であり,高齢者に発症することが多く,治療の目標は症状と QOL の改善,生存期間の延長が主であるため,病期の進行を確認するまで,治療を開始すべきではない.
②進行期の治療として,これまでアルキル化剤やフプリンアナログによる治療が中心エンドキサンの治療が施行されてきたが,抗体薬や B 細胞受容体を介するシグナル伝達系や異常な分子をターゲットとした新しい治療の開発が進んできている. - 生存期間の中央値は約 10 年であるが,予後は患者によってさまざまである.
診断基準
末梢血のクローナルなB リンパ球増加(>5,000/μL)の所見が,診断に必須である.なお,小リンパ球性リンパ腫(small lymphocytic lymphoma:SLL)は,末梢血ではCLL と診断されないが(すなわちB 細胞は5,000/μL 未満),リンパ節腫大と肝脾腫の両者または一方を認めるものをいう.CLL とSLL は同一疾患の臨床像が異なるものと理解されている.CLL と同じ特徴をもつモノクローナルのB細胞の増加を認めながら,その数が5,000/μL 未満でCLL の定義を満たさず,しかもリンパ節腫大や肝脾腫がなく,血球減少や疾患に関連した臨床症状がない例が欧米では知られており,単クローン性B リンパ球増加症(monoclonal B-lymphocytosis:MBL)と呼ばれている.形態的にCLLとして典型的なB細胞の白血病で,マーカーが一部非典型的な場合,CLL と診断しないのか,CLLに含めるのかは必ずしも明瞭ではない.そのために,欧米ではCLL の診断のためのスコアシステムが用いられている.これを「Matutes E, et al:Best Pract Res Clin Haemat 23:3-20, 2010」に示す.スコアが4 点以上はCLL として間違いなく,2 点以下はCLL ではないとされ,3 点の場合に検討が必要である.