多発性骨髄腫
MM
multiple myeloma
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖と,血清や尿中の M 蛋白の存在によって特徴づけられる疾患である.
- CRAB(高カルシウム血症,腎機能異常,貧血,骨病変)が典型的な症状である.
- 多発性骨髄腫には類縁疾患があり,IMWG の診断基準に基づいて,形質細胞性腫瘍の鑑別をする.
- MGUS は無治療経過観察が望ましく,3 カ月ごとを目安に M 蛋白を評価する.
- 無症候性骨髄腫の場合もすぐには治療介入せず,症候性骨髄腫に進行するまで経過観察が望ましいとされている.しかし近年では,一部の無症候性骨髄腫を「高リスク群」と同定し,早期治療介入の有効性が示されている.
- 治療戦略は,「大量化学療法/自家末梢血幹細胞移植(以下,自家移植)」の適応の有無で二種類に分かれる.自家移植の適応は,一般的に 65 歳未満でかつ重要臓器の機能が保持されている場合である.
- 深い完全奏功(CR)が得られた患者は,その後の予後も比較的良好であるため,自家移植の適応にかかわらず,多くの場合,CR 達成が治療の第一目標になる.
- 初期治療/寛解導入療法には,新規薬剤といわれる,bortezomib(ベルケイド),thalido-mide(サレド),lenalidomide(レブラミド)などの併用療法を考慮する.その際,それぞれの薬剤の特性を理解して選択する必要がある.なお,自家移植を予定する場合は melpha-lan 併用を避ける.
- 寛解導入療法後に,自家移植,地固め療法,維持療法を考慮する.
- 骨髄腫細胞が有する染色体異常が予後に関連しているため,診断時にG-band法やFISH法を用いて染色体異常を評価する.予後不良群の場合は,初期治療から積極的な治療介入が望ましい.再発時には,それまで用いていない薬剤を中心に治療する.pomalidomide(ポマリスト)や panobinostat(ファリーダック)などの新規薬剤も検討する.
- 初回治療から支持療法を積極的に行う.
検査
①確定診断,類似疾患との鑑別診断,および病期分類のために必要な検査を表に示す(表2).
②確定診断
血清および尿中のM蛋白の同定には,蛋白電気泳動法,免疫蛋白電気泳動法(特異抗体),免疫固定法,free light chain(FLC)法があり,FLC の感度が一番高い.通常,蛋白免疫電気泳動法を用いて,重鎖(IgG やIgA)および軽鎖(κまたはλ)の種類を同定する.形質細胞の腫瘍性増殖の診断には腸骨骨髄穿刺が必須である.免疫染色でκ鎖/λ鎖の染色の偏りの存在で腫瘍性増殖(クロナリティー)の判断をする.髄外腫瘤や骨病変の評価のために,Xp,CT,FDG-PET などを考慮する.AL アミロイド沈着は,骨髄生検,腹壁脂肪生検,胃十二指腸粘膜生検などで評価する.
③多発性骨髄腫の病期分類にはDurie&Salmon病期分類および国際病期分類(International StagingSystem:ISS)が知られる.後者は,血清アルブミンと血清β2 ミクログロブリンのみを用いるため評価が簡便で,現在広く用いられている.しかし,通常の化学療法によって治療された症例が解析対象であったことに加えて,染色体異常のデータが含まれておらず,新規薬剤による治療が主流である現在は予後予測が見直される可能性がある.最近では,新規薬剤による治療を受けた患者を対象として,染色体異常によるリスク分類を加味した新ISS(revised ISS)も提唱された.これは,ISS に用いた血清アルブミンと血清β2 ミクログロブリンに加えて,LDH 値や高リスクとされるdel(17)やt(4;14),t(14;16)などの染色体異常のデータを含めて解析した予後予測方法であるが,今後の検証が待たれる.
④染色体・遺伝子検査
G-band 検査およびFISH 検査で染色体異常を検出し,予後不良例の抽出や治療層別化が可能となる場合があり,初発時に限らず再発・再燃時にも測定する(表3).
②確定診断
血清および尿中のM蛋白の同定には,蛋白電気泳動法,免疫蛋白電気泳動法(特異抗体),免疫固定法,free light chain(FLC)法があり,FLC の感度が一番高い.通常,蛋白免疫電気泳動法を用いて,重鎖(IgG やIgA)および軽鎖(κまたはλ)の種類を同定する.形質細胞の腫瘍性増殖の診断には腸骨骨髄穿刺が必須である.免疫染色でκ鎖/λ鎖の染色の偏りの存在で腫瘍性増殖(クロナリティー)の判断をする.髄外腫瘤や骨病変の評価のために,Xp,CT,FDG-PET などを考慮する.AL アミロイド沈着は,骨髄生検,腹壁脂肪生検,胃十二指腸粘膜生検などで評価する.
③多発性骨髄腫の病期分類にはDurie&Salmon病期分類および国際病期分類(International StagingSystem:ISS)が知られる.後者は,血清アルブミンと血清β2 ミクログロブリンのみを用いるため評価が簡便で,現在広く用いられている.しかし,通常の化学療法によって治療された症例が解析対象であったことに加えて,染色体異常のデータが含まれておらず,新規薬剤による治療が主流である現在は予後予測が見直される可能性がある.最近では,新規薬剤による治療を受けた患者を対象として,染色体異常によるリスク分類を加味した新ISS(revised ISS)も提唱された.これは,ISS に用いた血清アルブミンと血清β2 ミクログロブリンに加えて,LDH 値や高リスクとされるdel(17)やt(4;14),t(14;16)などの染色体異常のデータを含めて解析した予後予測方法であるが,今後の検証が待たれる.
④染色体・遺伝子検査
G-band 検査およびFISH 検査で染色体異常を検出し,予後不良例の抽出や治療層別化が可能となる場合があり,初発時に限らず再発・再燃時にも測定する(表3).
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表2 骨髄腫の診断時の検査
ⅰ. 血算:目視による分画 ⅱ. 生化学:総蛋白,アルブミン,ALP,LDH,BUN クレアチニン,カルシウム,その他電解質 ⅲ. 血清免疫:免疫グロブリン定量,蛋白電気泳動法,蛋白免疫電気泳動法,蛋白免疫固定法,free light chain (FLC) 定量*,β2ミクログロブリン,CRP ⅳ. 尿:蛋白定量(24時間),尿蛋白電気泳動,尿蛋白免疫電気泳動法,尿蛋白免疫固定法 ⅴ. 骨髄穿刺・生検:骨髄像,表面マーカー,染色体(G-band),FISH ⅶ. 画像検査:前腕および下腿を除く全身の骨 Xp,CT,MRI,PET/CT *IMWGではFLCの測定にFreelite assay (Binding Site社) が用いられている.
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表3 染色体・遺伝子検査等によるリスク分類
High risk Intermediate risk* Standard risk ・del(17)(p13)
・t(14;16)
・t(14;20)
・LDH≧ULN×2
・plasma cell leukemia
・high risk gene
expression profiling
signature・t(4;14)
・del(13)
・hypodiploidy by
conventional
karyotyping・trisomies
(hyperdiploidy)
・t(11;14)
・t(6;14*t(4;14)はベルケイドを導入前はhigh riskとされていた.