呼吸不全
respiratory failure
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
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Clinical Chart
- 呼吸不全とは,「動脈血液ガス分析(主として PaO2,PaCO2)が異常な値を示し,そのために生体が正常な機能を営みえない状態」と定義され,室内気吸気時の PaO2≦60 Torr 以下となる呼吸障害またはそれに相当する異常状態,と定義される.
- 呼吸不全を呈さないが,労作などにより容易に低酸素血症を呈しうる病態を準呼吸不全として,60<PaO2≦70 Torr で分類する.
- PaCO2≦45 Torr である場合をⅠ型呼吸不全,PaCO2>45 Torr の場合をⅡ型呼吸不全と分類する.
- Ⅰ型呼吸不全の病態として,換気血流不均等,肺内シャント,拡散障害,吸入気酸素濃度低下が,Ⅱ型呼吸不全の病態として肺胞低換気があげられる.
- 呼吸不全の持続期間により急性と慢性に分類され,1 カ月未満は急性呼吸不全,1 カ月以上続く場合が慢性呼吸不全に分類される.
- パルスオキシメーターによる SpO2は低酸素血症のスクリーニングに有用であるが,Ⅱ型呼吸不全(高二酸化炭素血症)では PaO2に対して SpO2が過大に低値を示すことがあり注意を要する.
検査
①動脈血液ガス分析
パルスオキシメーターでSpO2の低下を認める場合には,動脈血液ガス分析を行うとともにA-aDO2なども併せて検討し,呼吸不全の病態を同定する.とくに,Ⅱ型呼吸不全においては酸素解離曲線が右方シフトするため,SpO2とPaO2の間に乖離が起り得るため,必須となる.
②採血
細菌性肺炎では白血球数の増加,左方移動,CRP の上昇,血沈の亢進などが認められる.易感染宿主の場合には,ニューモシスチス肺炎の鑑別にβ-D-グルカンを検索する.また,粟粒結核ではしばしばARDS を呈するため,疑われる場合にはinterferon gamma release assay(IGRA)としてT-SPOT またはQFT-3 G を提出する.
間質性肺炎では肺胞上皮の障害に伴いLDH,KL-6,SP-D(サーファクタントプロテインD)などが上昇する.必要に応じて各種膠原病マーカー,ACEを追加する.
また,担がん患者で間質性陰影を呈する場合には癌性リンパ管症を念頭に該当する腫瘍マーカーを追加する.
心原性肺水腫ではBNP の上昇を呈する.また,ハイリスク群では肺血栓塞栓症などの検索のためにD-dimer も提出する.
なお,肺胞低換気によるⅡ型呼吸不全で拘束性換気障害を呈する場合は神経筋疾患による場合もあり,CK やアルドラーゼに加えて,重症筋無力症が疑われる場合は抗アセチルコリン受容体抗体を,多発性筋炎/皮膚筋炎が疑われる場合は抗Jo-1抗体などを含めた抗アミノアシル転移RNA 合成酵素(ARS)抗体も提出する.
③胸部単純Xp
気胸の有無,心拡大の有無,うっ血像の有無,浸潤影やすりガラス陰影,牽引性気管支拡張像,蜂窩肺などの有無とその分布(両側性か否か,非区域性か否かなど間質性肺炎も念頭に)を検索する.
④胸部CT
呼吸不全を呈して,胸部単純Xp で明らかな異常を認めない場合には,CT により判明する淡いすりガラス陰影などの微細な病変を検索する(ニューモシスチス肺炎が代表的).また,CT で肺野に異常を認めない場合は,必要に応じて肺血栓塞栓症などの除外を胸部造影CT で行う.
⑤呼吸機能検査
閉塞性換気障害,拘束性換気障害,混合性換気障害,拡散障害の有無を検索する.
⑥心電図,心エコー図
心原性肺水腫の除外のために,心エコー図は重要で,収縮能のみならず拡張能の検索も行う(拡張不全心不全の除外).明らかな推定肺動脈圧の上昇が認められなければ,BNP 上昇がないことと併せて心原性肺水腫を否定することが多い.
また,僧帽弁腱索断裂などで急性心不全を呈した際に,断裂部位により僧帽弁逆流のジェットが偏移している場合は,胸部単純Xp で両側性の肺うっ血像を呈さず,片側性の浸潤影,うっ血像となることもある.その際は聴診所見と併せて心エコー図での検索が重要となる.
⑦換気血流シンチグラフィー
肺血栓塞栓症や腫瘍による塞栓などを念頭に,必要に応じて追加する.換気とミスマッチした血流の欠損を認める場合に塞栓症が疑われる.肺血栓塞栓症でない場合には,intravascular lymphoma(IVL)や,担がん患者ではpulmonary tumor thrombotic microangiopaty(PTTM)なども念頭に置く必要がある.
パルスオキシメーターでSpO2の低下を認める場合には,動脈血液ガス分析を行うとともにA-aDO2なども併せて検討し,呼吸不全の病態を同定する.とくに,Ⅱ型呼吸不全においては酸素解離曲線が右方シフトするため,SpO2とPaO2の間に乖離が起り得るため,必須となる.
②採血
細菌性肺炎では白血球数の増加,左方移動,CRP の上昇,血沈の亢進などが認められる.易感染宿主の場合には,ニューモシスチス肺炎の鑑別にβ-D-グルカンを検索する.また,粟粒結核ではしばしばARDS を呈するため,疑われる場合にはinterferon gamma release assay(IGRA)としてT-SPOT またはQFT-3 G を提出する.
間質性肺炎では肺胞上皮の障害に伴いLDH,KL-6,SP-D(サーファクタントプロテインD)などが上昇する.必要に応じて各種膠原病マーカー,ACEを追加する.
また,担がん患者で間質性陰影を呈する場合には癌性リンパ管症を念頭に該当する腫瘍マーカーを追加する.
心原性肺水腫ではBNP の上昇を呈する.また,ハイリスク群では肺血栓塞栓症などの検索のためにD-dimer も提出する.
なお,肺胞低換気によるⅡ型呼吸不全で拘束性換気障害を呈する場合は神経筋疾患による場合もあり,CK やアルドラーゼに加えて,重症筋無力症が疑われる場合は抗アセチルコリン受容体抗体を,多発性筋炎/皮膚筋炎が疑われる場合は抗Jo-1抗体などを含めた抗アミノアシル転移RNA 合成酵素(ARS)抗体も提出する.
③胸部単純Xp
気胸の有無,心拡大の有無,うっ血像の有無,浸潤影やすりガラス陰影,牽引性気管支拡張像,蜂窩肺などの有無とその分布(両側性か否か,非区域性か否かなど間質性肺炎も念頭に)を検索する.
④胸部CT
呼吸不全を呈して,胸部単純Xp で明らかな異常を認めない場合には,CT により判明する淡いすりガラス陰影などの微細な病変を検索する(ニューモシスチス肺炎が代表的).また,CT で肺野に異常を認めない場合は,必要に応じて肺血栓塞栓症などの除外を胸部造影CT で行う.
⑤呼吸機能検査
閉塞性換気障害,拘束性換気障害,混合性換気障害,拡散障害の有無を検索する.
⑥心電図,心エコー図
心原性肺水腫の除外のために,心エコー図は重要で,収縮能のみならず拡張能の検索も行う(拡張不全心不全の除外).明らかな推定肺動脈圧の上昇が認められなければ,BNP 上昇がないことと併せて心原性肺水腫を否定することが多い.
また,僧帽弁腱索断裂などで急性心不全を呈した際に,断裂部位により僧帽弁逆流のジェットが偏移している場合は,胸部単純Xp で両側性の肺うっ血像を呈さず,片側性の浸潤影,うっ血像となることもある.その際は聴診所見と併せて心エコー図での検索が重要となる.
⑦換気血流シンチグラフィー
肺血栓塞栓症や腫瘍による塞栓などを念頭に,必要に応じて追加する.換気とミスマッチした血流の欠損を認める場合に塞栓症が疑われる.肺血栓塞栓症でない場合には,intravascular lymphoma(IVL)や,担がん患者ではpulmonary tumor thrombotic microangiopaty(PTTM)なども念頭に置く必要がある.