慢性閉塞性肺疾患
COPD
chronic obstructive pulmonary disease
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
(リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- COPD は 40 歳以上の成人の 10%弱が罹患していると予測されるが,実際に診断されているのはそのうちの約 1 割.すなわち,圧倒的に「気づかれにくい疾患」であり,早期発見し適切な治療を促すのは,すべての臨床医の役割である.40 歳以上の喫煙者には,COPDのスクリーニング検査をする必要がある.
- 肺気腫と慢性気管支炎で閉塞性換気障害を伴えばCOPDであるが,伴わないこともある.
- 慢性的に咳・痰,労作性呼吸困難がある場合に COPD を疑う.症状がなくとも,喫煙歴のある中高年者も COPD を疑い,肺機能検査を実施することが重要.
- 肺機能検査で,気管支拡張薬吸入後の FEV1(forced expiratory volume in one second)/FVC(forced vital capacity)<70%を認めれば気流制限があり,COPD と診断する.
- COPD の病期分類には%FEV1(=FEV1/予測 FEV1)が用いられる.Ⅰ期:%FEV1≧ 80%,Ⅱ期:80>%FEV1≧50%,Ⅲ期:50%>%FEV1≧30%,Ⅳ期:30%>%FEV1.病期と重症度とは必ずしも一致せず,重症度は総合的に判断するとされている.
- 国際的な GOLD(Global Initiative of Chronic Obstructive Lung Disease)のガイドライン 2014 では,増悪のリスクと症状の強さで 4 群に分類することが提案されている.
- 重症度に基づいた薬物療法(気管支拡張薬,ステロイド薬)と同時に禁煙指導,感染予防,を含めた患者・家族指導,呼吸リハビリテーション,栄養指導を包括的に実施する.
- 進行すると肺高血圧,右心不全を合併するようになる.呼吸不全には在宅酸素療法を導入すると生存期間の延長や QOL 改善が期待できる.
- COPD の増悪は管理の上でもっとも注意すべき病態で,適切に判断し入院・人工呼吸を含めた治療が必要.
診断・検査
①肺機能検査
気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC<70%で気流制限ありと判断.気管支拡張薬の吸入方法(日本呼吸器学会:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン, 第2版. 2004 参照)に留意すること.フローボリューム曲線は下に凸,FEV1,FVC,FEV1/FVC 低下(気道閉塞所見),測定可能な施設ではRV(residual volume),TLC(total lung capacity)増加(過膨張所見),拡散能低下(図1).
気管支拡張薬吸入後に肺機能検査を実施する理由は,①FEV1/FVCが70%以上に改善すればCOPDでなく気管支喘息を考える,②気管支拡張薬の使用で到達可能な肺機能を明らかにする,③治療に対する反応性を評価する,④予後の予測(可逆性があるほうが予後はよい).FEV1が吸入前後で200mL以上かつ12%の増加がある場合には気流制限の可能性があると判断するが,可逆性の有無で喘息とCOPDを区別するものではないことに注意する.
②胸部Xp
軽症の場合には有意な所見を認めないこともあり,早期発見への寄与は限界がある.気腫型のCOPDの場合,胸部Xp 正面像で,①肺野の透過性亢進,②肺野末梢の血管陰影の細小化,③横隔膜低位平坦化,④滴状心,⑤肋間腔の開大,側面像で①横隔膜の平坦化,②胸骨後腔の拡大,③心臓後腔の拡大,を認める.また非気腫型ではこれらの変化が目立たず,肺機能検査を行ってかなり進行したCOPDであるとわかることもあり,画像診断をあまり意識しすぎるのは要注意である.
③胸部CT
上葉優位の低吸収域(low attenuation area=LAA)を認める.非気腫型では肺紋理の増強やtram line,胸部CT で気管支壁の肥厚を認める.
④血液ガス
PaO2低下,PaCO2横ばいから上昇.疾患の診断に必要な検査ではないが,呼吸不全の診断,COPDの病期・重症度診断には必要な検査である.血液ガスの結果と気流制限の程度(一秒率・一秒量)は相関しないことも多く,血液ガスが正常であっても著明な労作時の呼吸困難を自覚する症例もあるため,運動負荷試験(6分間歩行試験)も評価のためには必要となる.
⑤その他
肺性心の評価には心電図,心エコーを施行(右心カテがゴールドスタンダードであるが現実的ではない),睡眠時無呼吸症候群を合併していると入院回数や死亡率が高いという報告もあり,簡易モニターや終夜睡眠ポリグラフィー検査などを必要性を予測し行う.
気管支拡張薬吸入後のFEV1/FVC<70%で気流制限ありと判断.気管支拡張薬の吸入方法(日本呼吸器学会:COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン, 第2版. 2004 参照)に留意すること.フローボリューム曲線は下に凸,FEV1,FVC,FEV1/FVC 低下(気道閉塞所見),測定可能な施設ではRV(residual volume),TLC(total lung capacity)増加(過膨張所見),拡散能低下(図1).
気管支拡張薬吸入後に肺機能検査を実施する理由は,①FEV1/FVCが70%以上に改善すればCOPDでなく気管支喘息を考える,②気管支拡張薬の使用で到達可能な肺機能を明らかにする,③治療に対する反応性を評価する,④予後の予測(可逆性があるほうが予後はよい).FEV1が吸入前後で200mL以上かつ12%の増加がある場合には気流制限の可能性があると判断するが,可逆性の有無で喘息とCOPDを区別するものではないことに注意する.
②胸部Xp
軽症の場合には有意な所見を認めないこともあり,早期発見への寄与は限界がある.気腫型のCOPDの場合,胸部Xp 正面像で,①肺野の透過性亢進,②肺野末梢の血管陰影の細小化,③横隔膜低位平坦化,④滴状心,⑤肋間腔の開大,側面像で①横隔膜の平坦化,②胸骨後腔の拡大,③心臓後腔の拡大,を認める.また非気腫型ではこれらの変化が目立たず,肺機能検査を行ってかなり進行したCOPDであるとわかることもあり,画像診断をあまり意識しすぎるのは要注意である.
③胸部CT
上葉優位の低吸収域(low attenuation area=LAA)を認める.非気腫型では肺紋理の増強やtram line,胸部CT で気管支壁の肥厚を認める.
④血液ガス
PaO2低下,PaCO2横ばいから上昇.疾患の診断に必要な検査ではないが,呼吸不全の診断,COPDの病期・重症度診断には必要な検査である.血液ガスの結果と気流制限の程度(一秒率・一秒量)は相関しないことも多く,血液ガスが正常であっても著明な労作時の呼吸困難を自覚する症例もあるため,運動負荷試験(6分間歩行試験)も評価のためには必要となる.
⑤その他
肺性心の評価には心電図,心エコーを施行(右心カテがゴールドスタンダードであるが現実的ではない),睡眠時無呼吸症候群を合併していると入院回数や死亡率が高いという報告もあり,簡易モニターや終夜睡眠ポリグラフィー検査などを必要性を予測し行う.
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図1 健常者,COPDの肺気量分画
TLC:全肺気量, FRC:機能的残気量, RV:残気量, VC:肺活量, IC:最大吸気量
進行したCOPDでは,RV,TLCが増大し,VC,ICが減少する.