肺真菌症
pulmonary mycosis
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
(リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 肺は外界から真菌が侵入する門戸として重要で,深在性真菌症の好発部位である.
- 肺真菌症は,肺アスペルギルス症,肺クリプトコックス症,ムコール症,カンジダ症で大半を占める.
- 多くは化学療法や免疫抑制療法を行っている易感染宿主に発症するが,クリプトコックス,一部の輸入感染症のように免疫能が障害されていない個体に発症するものもある.
- 侵襲性肺アスペルギルス症やアレルギー性気管支肺アスペルギルス症など早期の治療を要する疾患も含まれており,注意を要する.
- 治療には,予防投与,経験的治療,標的治療があり,呼吸器領域では菌種の違いだけでなく,同一菌種でも病型により対応が異なる.例えば,単純性肺アスペルギローマ,慢性進行性肺アスペルギルス症では経験的治療を行わず,臨床診断例もしくは確定診断例に対して標的治療を行う一方,侵襲性肺アスペルギルス症では真菌症疑い例に対して経験的治療を,臨床診断例,確定診断例には標的治療を行う.
検査
深在性真菌症の診断と治療は密接に結びついており,ハイリスク患者への予防投与,臨床症状と画像所見による真菌疑い例に対して行う経験的治療,そして「臨床症状あるいは画像所見」と「血清診断または病理組織学的診断」による臨床診断例と,臨床診断と培養陽性による確定診断例に対する標的治療に分けられる.これについては「深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014」に,各々の菌種に応じたフローチャートが作成されており参考になる.
一般に,深在性真菌症は培養陽性率が低いことから,病変部における菌の存在を示す確定診断法と,菌の関与を示唆する補助診断法の両者を組み合わせる必要がある.各検査の有用性について「深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014」に示す.真菌学的診断法として顕微鏡検査(鏡検),培養検査があり,これに病理組織学的診断を合わせた確定診断法に加えて,補助診断法として血清診断法なども併用し,臨床診断例に対して標的治療を行う.
①採血
白血球増加,CRP 上昇,血沈亢進,β-D-グルカン,アスペルギルス(ガラクトマンナン)抗原,クリプトコックス抗原などを臨床・画像所見に応じて行う.
なお,β-D-グルカンはセルロース膜による血液透析,血液製剤(アルブミン製剤,グロブリン製剤など)の使用,非特異反応(溶血検体,高ガンマグロブリン血症など)により偽陽性を呈する.また,アスペルギルス抗原はPIPC/TAZ の使用,Cryptococcus neoformans感染,大豆を含む経管栄養などで,クリプトコックス抗原は播種性トリコスポロン症で偽陽性を呈することが知られている.
②胸部Xp・CT
次項のとおり,所見は各病原微生物別,病型別に異なる.
③気管支鏡
肺真菌症の確定診断のために気管支鏡を用いて病変部の生検を行い,病理組織学的診断に導く.病変部もしくは下気道からの検体採取により,精度の高い培養検査を行うことが可能となる.ただし,気管支鏡検体による培養検査でも陽性率は十分なものではない場合があり,総合的な判断が求められる.
④培養検査(深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014 参照)
深在性真菌症の原因真菌の培養陽性率は低いが,分離同定は感染症診断のゴールドスタンダードであり確定診断には重要である.分離培養には血液培養などの無菌的検体がもっとも適切であるが,喀痰のような汚染検体であっても同一菌種が繰り返し分離される,または血液培養と一致する,などにより原因真菌として推定することが可能である.また,原因真菌としてはまれな真菌(環境由来真菌)が分離同定された場合も複数回にわたり同一菌種が分離される必要がある.
⑤病理組織学的診断
細胞診よりも組織診のほうが診断率は高く,アスペルギルス症では糸状菌と気道粘膜の破綻,炎症性肉芽腫,器質性線維化,柵状肉芽腫反応などが(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では粘液栓に脱顆粒した好酸球,Charcot-Leyden crystal などとともにGrocott染色で糸状菌),クリプトコックス症では肉芽腫性感染巣,粘液嚢胞様感染,莢膜形成を伴う菌体が,カンジダ症では組織内で酵母形発育と偽菌糸または真性菌糸発育の二形性発育を示す糸状菌が,ムコール症では血管侵襲性を示し血栓形成を伴う糸状菌が認められる.
⑥遺伝子診断
深在性真菌症の遺伝子診断法は,保険適用がなく一部の実験施設において実施可能な特殊検査で,現時点で商業的に利用できるものを「深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014」に示す.
一般に,深在性真菌症は培養陽性率が低いことから,病変部における菌の存在を示す確定診断法と,菌の関与を示唆する補助診断法の両者を組み合わせる必要がある.各検査の有用性について「深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014」に示す.真菌学的診断法として顕微鏡検査(鏡検),培養検査があり,これに病理組織学的診断を合わせた確定診断法に加えて,補助診断法として血清診断法なども併用し,臨床診断例に対して標的治療を行う.
①採血
白血球増加,CRP 上昇,血沈亢進,β-D-グルカン,アスペルギルス(ガラクトマンナン)抗原,クリプトコックス抗原などを臨床・画像所見に応じて行う.
なお,β-D-グルカンはセルロース膜による血液透析,血液製剤(アルブミン製剤,グロブリン製剤など)の使用,非特異反応(溶血検体,高ガンマグロブリン血症など)により偽陽性を呈する.また,アスペルギルス抗原はPIPC/TAZ の使用,Cryptococcus neoformans感染,大豆を含む経管栄養などで,クリプトコックス抗原は播種性トリコスポロン症で偽陽性を呈することが知られている.
②胸部Xp・CT
次項のとおり,所見は各病原微生物別,病型別に異なる.
③気管支鏡
肺真菌症の確定診断のために気管支鏡を用いて病変部の生検を行い,病理組織学的診断に導く.病変部もしくは下気道からの検体採取により,精度の高い培養検査を行うことが可能となる.ただし,気管支鏡検体による培養検査でも陽性率は十分なものではない場合があり,総合的な判断が求められる.
④培養検査(深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014 参照)
深在性真菌症の原因真菌の培養陽性率は低いが,分離同定は感染症診断のゴールドスタンダードであり確定診断には重要である.分離培養には血液培養などの無菌的検体がもっとも適切であるが,喀痰のような汚染検体であっても同一菌種が繰り返し分離される,または血液培養と一致する,などにより原因真菌として推定することが可能である.また,原因真菌としてはまれな真菌(環境由来真菌)が分離同定された場合も複数回にわたり同一菌種が分離される必要がある.
⑤病理組織学的診断
細胞診よりも組織診のほうが診断率は高く,アスペルギルス症では糸状菌と気道粘膜の破綻,炎症性肉芽腫,器質性線維化,柵状肉芽腫反応などが(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症では粘液栓に脱顆粒した好酸球,Charcot-Leyden crystal などとともにGrocott染色で糸状菌),クリプトコックス症では肉芽腫性感染巣,粘液嚢胞様感染,莢膜形成を伴う菌体が,カンジダ症では組織内で酵母形発育と偽菌糸または真性菌糸発育の二形性発育を示す糸状菌が,ムコール症では血管侵襲性を示し血栓形成を伴う糸状菌が認められる.
⑥遺伝子診断
深在性真菌症の遺伝子診断法は,保険適用がなく一部の実験施設において実施可能な特殊検査で,現時点で商業的に利用できるものを「深在性真菌症のガイドライン作成委員会:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン 2014」に示す.