MPO-ANCA関連血管炎、顕微鏡的多発血管炎(顕微鏡的PN)
MPA
microscopic polyangitis
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
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Clinical Chart
- 小血管(毛細血管,細小動・静脈)を主体とした壊死性血管炎群は,血管壁への免疫複合体沈着がほとんどみられず抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性率が高いことを特徴とし, ANCA 関連血管炎症候群と定義される.2011 年の Chapel Hill 会議で,そのうち,肉芽腫性病変のみられないものが顕微鏡的多発血管炎(micorscopic polyangiitis:MPA)と分類された(尾崎承一:日本臨床71(suppl 1)362-371,2013 参照).
- 高齢者に発熱,体重減少,易疲労などの全身症状とともに,組織の小血管炎による糸球体腎炎や間質性肺炎,多発性単神経炎などの徴候が出現する疾患である.
- MPO-ANCAが70%に陽性であり疾患標識抗体で疾患活動性を示す抗体でもある.PR3-ANCA は陰性である.
- 腎限局型 ANCA 関連血管炎は,顕微鏡的多発血管炎の腎限局型である.
- MPA は,国の特定疾患に指定されており,申請すれば医療助成を受けることができる.近年,MPA が増加し,血管炎の 9 割を占める.
診断
(尾崎承一・他:血管炎症候群診療ガイドライン,表1 参照)
腎・肺・神経障害が短期間に進行する場合があるため,早期に治療を開始できるよう感染症や悪性腫瘍,膠原病などの除外とともに積極的にMPO-ANCA を測定し,皮膚や腎生検を行ない診断する.障害組織の生検により免疫複合体沈着に乏しい細小血管主体の壊死性血管炎を証明する.確定診断には組織の生検,特に腎生検が必要である.半月体形成や糸球体のフィブリノイド壊死を伴う壊死性糸球体腎炎で免疫グロブリンや補体の沈着がないか乏しいことを確認する.
ANCA は,疾患特異性が高い自己抗体である.ELISA 法による抗原特異性からMPO-ANCA やPR3-ANCAに分類される.顕微鏡的多発血管炎では,MPO-ANCA の感度は58%,特異度は91%であった.まれにPR3-ANCA 陽性の報告があるが,多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangitis:GPA)(旧名Wegener 肉芽腫)などの疾患を考えるべきである.ANCA 陽性の診断的価値は高いが,確定診断はあくまで組織診断であり,可能な場合は実施する必要がある.
ANCA は,疾患特異性が高い自己抗体である.ELISA 法による抗原特異性からMPO-ANCA やPR3-ANCAに分類される.顕微鏡的多発血管炎では,MPO-ANCA の感度は58%,特異度は91%であった.まれにPR3-ANCA 陽性の報告があるが,多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangitis:GPA)(旧名Wegener 肉芽腫)などの疾患を考えるべきである.ANCA 陽性の診断的価値は高いが,確定診断はあくまで組織診断であり,可能な場合は実施する必要がある.
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表1 MPA の診断基準(1998 年厚生労働省)
主要症候 ①急速進行性糸球体腎炎(RPGN)
②肺胞出血もしくは間質性肺炎
③腎・肺以外の臓器症状:紫斑,皮下出血,消化管出血,多発性単神経炎など主要組織所見 細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死,血管周囲の炎症性細胞浸潤 主要検査所見 ①MPO-ANCA 陽性
②CRP 陽性
③蛋白尿・血尿,BUN,血清クレアチニンの上昇
④胸部X 線所見:肺胞出血を疑う浸潤影や間質性肺炎像判定 確実(definite)
a .主要症候の2 項目以上と,組織所見の存在する例
b .主要症候の①および②を含め2 項目以上を満たし,MPO-ANCA が陽性疑い(possible)
a .主要症候の3 項目を満たす
b .主要症候のうち1 項目とMPO-ANCA 陽性参考事項
①主要症候の出現する1~2 週間前に先行感染(多くは上気道感染)を認める例が多い
②主要症候①,②は約半数例で同時に,その他の例ではいずれか一方が先行する
③多くの例でMPO-ANCA の力価は疾患活動性と並行して変動する
④治療を早期に中止すると,再発する例がある
⑤鑑別診断の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが,特徴的な症候と検査所見から鑑別できる