便中白血球 | シスメックスプライマリケア

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「臨床医マニュアル　第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部（各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」）を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は，他に出典の明示があるものを除き，医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル　第5版」編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.

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Clinical Chart

急性下痢と慢性下痢で疾患が異なる．
ほとんどの急性下痢は感染性腸炎であるが，一見腸炎様にみえる致死的な疾患であるTSS(toxic shock syndrome)，心筋梗塞，アナフィラキシー，甲状腺クリーゼなどを見逃さないようにする．
急性下痢の重症時にはショックの有無，脱水の重症度の把握を行う．
急性下痢では便の鏡検・培養が重要である．
感染性腸炎の治療では止痢薬，抗菌薬の投与は慎重に判断する．

診断・検査

１．急性下痢
［診断］

③検査項目

①便検査：便の鏡検・培養が重要
- a：鏡検で便中白血球が陽性の場合は，感染型腸炎であり，中等症以上の場合が多い．この場合は培養が必須であり，治療も抗菌薬を使用することもある．陰性の場合は，毒素分泌型もしくは感染型でも軽症の場合が多い
- b：その他：虫卵，寄生虫の存在に注意
- c：培養検査：適切な検査施設に依頼すること．施設のバラツキが意外に大きい．便検体量は十分でなくてはならない．
- ・クロストリジウム，ディフィシルトキシンA（ユニクイック^®，イムノカードCD トキシンA^®）
- ・ロタレックス（ロタウイルス）：ラテックス凝集反応法で行うロタウイルス抗原診断法で，検体採取後10 分以内で判断できる．
- その他，エルシニア抗体価，アデノウイルスなどの検査が可能．
②血液検査
　CRP，赤沈，CBC，生化学，血液ガス（重症例）：電解質異常のチェック，脱水のチェック，肝胆膵系のチェック
③腹部X 線検査，腹部エコー検査
④ 内視鏡検査：鑑別診断上，内視鏡検査が有効なことがある．
　下部消化管内視境検査は，器質的疾患を有する例での急性増悪時に適応されることが多い(表2)．まれに上部消化管検査で，十二指腸の観察と生検で診断される疾患もある(表3)．

２．慢性下痢
［検査］
①便CD トキシン

②虫卵検査: 　ランブル鞭毛虫の診断に使用．
③Sudan Ⅲ染色: 　脂肪便，つまり吸収不良症候群を診断するのに調べる．感度，特異度はそれほど高いわけではないが簡便に行える．
④PFD 試験: 　慢性膵炎など膵外分泌機能不全を調べるために行うが，検査はかなり面倒である．
⑤便浸透圧: 　便の浸透圧を用いて，浸透圧性かどうかを調べると成書などには記載してあるが実際に検査できる検査室はほとんどなく，現実的ではない．

表2　慢性の下痢で急性発症もしくは急性増悪するもの

①慢性腸管感染症	結核，サルモネラ，HIV 感染，アメーバ赤痢，回虫症など
②IBD	潰瘍性大腸炎，Crohn 病
③胃腸手術後
④吸収不良症候群	アミロイドーシス，蛋白胃腸漏出症など
⑤消化酵素不足	慢性萎縮性胃炎，肝硬変，慢性膵炎，膵癌など
⑥薬剤性	ジフェニルヒダントイン，コルヒチン，アミノサリチル酸，メソトレキサート，5-FU，シクロホスファミド隠れた下剤の乱用
⑦神経内分泌性腫瘍

表3　上部消化管検査で診断されうる十二指腸の病変

・イソスポーラ症（ATL，AIDS患者の日和見感染）

・糞線虫（九州，沖縄に多い）

・immunoproliferative small intestinal disease

・好酸球性胃腸炎

・アミロイドーシス

・リンパ管拡張症

・Zollinger-Ellison症候群