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気管支炎・肺炎

別名 bronchitis,pneumonia

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 下気道感染はもっとも死亡につながる頻度の高い感染症である.
  2. 肺炎は臨床症状から疑い,X 線もしくは CT で診断する.
  3. 肺炎の治療に際しては,①市中肺炎か院内肺炎か,②細菌性肺炎か非定型肺炎か,によって大きく方針が異なる.重症度判定,起炎菌の同定,抗菌薬の適正使用が肝心.
  4. 喀痰グラム染色はプライマリ・ケア医の必須技能.実施できない場合は,empiric therapyに頼らざるをえない.
  5. 抗菌薬の投与は「十分量を短期間」を基本に.抗菌薬の変更・中止などの判断は速やかに行い,漫然と投与し続けることのないように.起炎菌が判明したら,なるべく狭域の抗菌薬に変更(de-escalation).

●市中肺炎
  1. 重症度を判断し,入院治療か外来治療かを決定する.
  2. 起炎菌が判明しなければ,細菌性肺炎か非定型肺炎かを鑑別する.
  3. 抗菌薬が効果的であると思われるのになかなか治癒しない場合には,悪性腫瘍や気管支結核などによる器質的狭窄も考え,胸部 CT や気管支鏡も検討する.

●院内肺炎
  1. 院内肺炎は「入院後 48 時間以後に発症した肺炎で,入院時すでに感染が成立している場合を除外したもの」と定義される.
  2. 院内肺炎は院内感染のなかで致死率がもっとも高く,迅速な診断と適切な治療が必要である.抗菌薬の投与期間は何らかの基礎疾患を有している患者が多いことから,市中肺炎よりは長く必要.

●医療・介護施設関連肺炎
  1. 人口の高齢化に伴い,自宅と医療機関以外の施設で過ごす方も増えたために提案された概念.死亡率も市中肺炎と院内肺炎の中間に位置する.
  2. 耐性菌のリスクがあるかどうかの判断が重要.

●誤嚥性肺炎
  1. 65 歳以上の高齢者の肺炎の約 1/3 は誤嚥性肺炎である.通常は重力に従い下葉背側に好発するが仰臥位では下肺の上区,側臥位では上葉後方・下葉上方の肺区域に好発する.
  2. ムセがなくても誤嚥している“silent aspiration”(不顕性誤嚥)が誤嚥患者の約 30%に存在するといわれる.
  3. 嫌気性菌は誤嚥性肺炎であれば「関与しているもの」と想定して治療を行う.

●MRSA肺炎
  1. 肺炎患者の喀痰から MRSA が検出されても,多くは定着(colonization)と考えられるが,インフルエンザ罹患後などの状況下では MRSA 肺炎も留意する必要がある.
  2. まだまれではあるが,市中での黄色ブドウ球菌の耐性化に伴い,市中肺炎で MRSA が起炎菌というケースも散見されるようになった.

●マイコプラズマ肺炎
  1. 非定型肺炎の代表的なもの.あまり重症化しないことが多いが,まれに人工呼吸を要することもある.
  2. マクロライド系抗菌薬の耐性化が懸念されるが,現状では安易なレスピラトリーキノロンを避けるため,ファーストチョイスはマクロライド系抗菌薬とする.

●オウム病・クラミジア肺炎
  1. オウム病は鳥類から感染し,重症化することがあり病歴聴取が重要.クラミジア肺炎はほとんど軽症であるが細菌性肺炎と合併することが多いことがわかっており,高齢者の市中肺炎ではそれも念頭に置いて治療する.

●レジオネラ肺炎
  1. 病状も感染経路も特徴的で,鑑別診断に含め適切な治療方針を取らないと,死亡に至る.
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検査

  1. 白血球数(血液像も),赤沈,CRP
     細菌性肺炎では白血球は増加するが,ウイルス性やマイコプラズマなどの非定型肺炎では10,000/μL 以上になることはすくない.細菌感染でも敗血症を伴うような重症な場合はかえって減少することもある.
  2. ②胸部Xp
     肺炎の診断を行う上で不可欠である.典型的な大葉性肺炎では肺葉に一致した濃い均一な陰影で,air bronchogramを伴う.小葉性肺炎では種々の大きさの境界不明瞭で癒合傾向のある斑状影となる.ウイルス性,マイコプラズマなどの非定型肺炎では淡い均一な陰影となる.起炎菌によって空洞形成,胸水貯留など傾向が異なるが,一般に胸部Xp 所見のみで起炎菌を決定するのは困難である.両側S5や左S10などは正面像のみでは見逃すこともあり,必ず左側面像も併せて撮影するようにする.肺気腫患者に発症した肺炎では,一見間質性肺炎の蜂窩肺様の胸部Xp を呈することがあり,この場合胸部CTでの評価が有効である.
     また,寝たきり患者の場合,肺炎像が背側(S6,S9~10)に広がっていると正面像の胸部Xp では診断がつけにくく,肺炎が強く疑われる場合は胸部CT が必要である.
  3. ③動脈血液ガス
     最近はパルスオキシメーターのみで酸素飽和度は評価できるが,頻呼吸や意識障害がある場合は必ず動脈血液ガスを実施し,AaDO2を評価したい.通常は低酸素血症があればある程度過換気となるため,PaO2は低下しPaCO2は正常ないしは低下する.急性の経過であれば呼吸性アルカローシスとなるが,重症で末梢循環不全を伴うと代謝性アシドーシス,COPD でもともと慢性呼吸不全をもつ患者が重症感染症を合併すれば呼吸性アシドーシスとなり補助換気の適応となる.
  4. ④喀痰検査
     肺炎の治療を進める上で羅針盤となる検査で必須である.必ず抗菌薬を投与する前に検体を採取する.喀出が困難な場合は,生理食塩水や去痰薬,3%の高張食塩水をネブライザーで吸入してもらい,喀出しやすくする.唾液成分の多い痰や意識障害のある患者に対して吸引で採取した痰は口腔内常在菌の混入を念頭に置く.
  5. ⑤血液培養
     菌血症を呈している肺炎の場合,特に肺炎桿菌は市中肺炎で菌血症を呈しやすく,治療期間も異なるので軽症でなければ喀痰検査と併せ抗菌薬治療開始前に実施することが望ましい.
  6. ⑥胸部CT
     感染症状が明らかで胸部Xp で診断がつけば,あえてCTを追加で行う必要はない.肺炎の診療で胸部CTを施行する道理があるのは,①臨床的に肺炎を強く疑うが浸潤影がはっきりしない場合,②基礎疾患に心不全,COPD,肺線維症などがあり微妙な変化を把握したい場合,③肺がんや結核など他の呼吸器疾患の可能性が否定できず,単純な肺炎と解釈しがたい場合,と考える.
  7. ⑦その他
     肺炎球菌尿中抗原は感度が80%程度だが特異度が95%前後と報告されており,陽性となった場合,肺炎球菌が起炎菌と判断して良い.マイコプラズマは咽頭ぬぐい液を用いた迅速診断キットが保険適用となっている.ウイルス性肺炎が強く疑われれば各種ウイルス抗体価の測定を行う.通常,パラインフルエンザ,アデノ,小児または高齢者ではRS,免疫不全患者ではサイトメガロウイルスなどの抗体価(CF)を測定する.インフルエンザA・B,アデノ,RSウイルスは咽頭・鼻腔ぬぐい液の迅速診断キットが保険適用となっている.ほかに肺炎を起こすウイルスに麻疹水痘があるが皮膚症状が起こるので診断には苦慮しない.乾性咳嗽などマイコプラズマを疑ったらマイコプラズマ抗体(PA もしくはCF),オウム病を疑ったらオウム病・クラミジア抗体(CF),クラミジア肺炎の診断のためにはChlamydia pneumoniae(IgG,IgA 抗体)の採血を行う.いずれも診断のためには発症時と2週間後のペア血清を取り判断する.

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