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全身性エリテマトーデス

略称 SLE
別名 systemic lupus erythematosus

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. SLE は,自己免疫を機序とした全身の炎症性疾患で,皮膚や関節を含むさまざまな臓器の組織と漿膜や血管に慢性の炎症をきたし,その機能を障害する疾患である.特定疾患受給者数は,56,254 人(2012 年)である.男女比は 1:9 で若年女性に好発し,発症年齢は20 歳代にピークがある.
  2. 原因として家族内発症もあり,何らかの遺伝的素因を背景とする.出産後に発症しやすいことなど,性ホルモン,感染,紫外線,薬物などの環境因子が加わって発症するものと推測されている.
  3. 症状や所見は多彩である.発熱,蝶形紅斑や手掌紅斑などの皮疹,口腔潰瘍などの粘膜病変,関節痛,漿膜炎,蛋白尿や多彩な円柱が出現するループス腎炎,意識障害や脳炎などのCNS ループス,血球減少などの造血器障害や血栓症状など多臓器障害を示す.
  4. 抗核抗体は活動期には全例に陽性となる.抗 2 本鎖 DNA(抗 dsDNA)抗体や抗 Sm 抗体,抗リン脂質抗体は疾患標識抗体である.ループス腎炎の症例では,免疫複合体が陽性となり補体が消費され低下する.
  5. 治療はステロイド投与を中心に,免疫抑制剤も使用する.初回治療は良く反応し軽快するが,寛解と憎悪を繰り返して慢性の経過を取ることが多い.大量のステロイドや免疫抑制剤の併用により,感染症が死因となるケースが増加している.
  6. SLE は,国の特定疾患に指定されており,申請すれば医療助成を受けることができる.
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検査

①血液検査
 白血球減少,リンパ球減少,血小板減少,溶血性貧血が観察される.白血球やリンパ球の減少は多くの症例でみられ,しばしばSLE 診断の決め手となる.末梢での破壊によるものと考えられている.血小板減少は,抗カルジオリピン抗体(aCL),ループス抗凝固因子(LAC)を測定し抗リン脂質抗体(aPL)症候群を確認する必要がある.
②尿検査
 蛋白尿と尿沈渣で赤血球や白血球などの細胞性円柱や顆粒円柱脂肪円柱などが多数多種類出現する(telescoped sediment).
③CRP
 通常陰性である.しかし,漿膜炎,感染症の合併,関節炎を合併した場合陽性となる.
④抗核抗体
 SLE 活動期には全例で陽性となる.抗核抗体の染色パターンで,自己抗体の種類が推定できる.
⑤自己抗体
 抗2 本鎖DNA 抗体(抗dsDNA 抗体)はSLE に特異度が高いとされ,疾患活動性を示す抗体でもある.ループス腎炎では抗DNA 抗体価は高く血清補体価は低値である.これらは腎炎の治療効果判定に有用である.
 抗1 本鎖DNA 抗体が陽性の場合は薬剤性ループスやSLE 以外の膠原病を考える.
 抗Sm 抗体は,SLE に特異度が高いとされる.
 その他,抗SS-A 抗体,抗U1-RNP 抗体,RF などの自己抗体が陽性となる.抗SS-A 抗体はSLE 以外にシェーグレン症候群の多くで検出され,抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病や強皮症でも検出され,RFは関節リウマチで検出され,いずれもSLE に特異度は低い.SLE による神経障害(NPSLE)では,血清中に抗リボソームP 抗体,髄液のIL-6 上昇を認めることがあり,診断の補助となる.
⑥低補体血症と免疫複合体
 免疫複合体がいずれかの組織に沈着すると炎症が広がり補体が動員される.その結果補体が消費されるため末梢血中ではC3C4 などの補体が減少しCH50も低下する.免疫複合体の関与した代表疾患であるループス腎炎では,DNA を抗原とした抗dsDNA 抗体が免疫複合体を形成し,腎糸球体に沈着し腎炎が広がり補体が動員される.このような病態の活動期には,抗dsDNA 抗体や免疫複合体が陽性となり,CH50C3が低下する.これらは腎炎治療により正常化することが確認できる.NPSLE は免疫複合体の関与した病態とは異なるため,これらの指標はあてはまらない.
 補体は,一般的な炎症では増加するため,漿膜炎や関節炎を合併する場合,正常値を超えて上昇することもある.
抗リン脂質抗体症候群(aPL 症候群)
 血栓症や血小板減少を手掛かりに疑う.抗カルジオリピン抗体(aPL),ループスアンチコアグラント(LAC),β2-GPI 依存性抗カルディオリピン抗体が陽性に検出されることがある.
⑧X 線
 関節X 線では,原則として関節びらんや骨破壊がない.例外的に手指関節の亜脱臼が見られる(Jaccoud関節症).
 胸部X線で胸水貯留像や心胸郭比の拡大など漿膜炎の確認を行う.肺野では浸潤影やすりガラス陰影・網状影などの肺胞出血や間質性肺炎を確認し,疑わしいときは胸部CT を撮像する.
⑨心エコーでは,心嚢液貯留が確認され,腹部エコーで腹水貯留が観察される.
⑩腎生検は,腎病理組織分類(ISN 分類)による腎組織分類に基づいて治療が選択されるため,禁忌がないかぎり行う.患者に積極的に同意を得る努力が必要である.
 蛋白尿や円柱がある場合,とくに,telescoped sediment を認める場合には早急に行う.腎組織では補体の沈着が観察され,C1q の沈着はSLE に比較的特徴的である.
 Ⅲ型,Ⅳ型,Ⅲ+Ⅳ型が難治性である.活動性群だけでなく慢性病変を併せ持つ群,とくに半月体形成などの症例では,早急に適切な治療が求められる(Weening JJ, et al:J Am Soc Nephrol 15:241-250, 2004).
⑪皮膚生検
 検体を蛍光抗体で染めると表皮真皮境界部にIgGの沈着を認めることがあり「ループスバンド」とよばれる.
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