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胆汁酸抱合体分画

胆汁酸抱合体分画

別名 BAC-F

臨床的意義

本検査は以下の場合に行われる.
  1. 胆汁酸の腸肝循環系における動態を知りたいとき.
  2. 総胆汁酸が高いとき.
  3. 腸疾患を想定するとき.
  4. 黄疸が遷延するとき.
〈肝内輸送,胆汁中排泄機構からみた病態生理〉
  • 胆汁うっ滞を中心にした疾病機構を知る上で,有機アニオンの代表的な胆汁酸の肝細胞における取り込み,肝内輸送,胆汁中排泄機構を知ることはきわめて重要なことである.おおまかな流れとしては,肝細胞の類洞側細胞膜(sinusoidal membrane,baso-lateral membrane)での摂取(uptake),肝細胞内での輸送,毛細胆管膜(bile canalicular membrane)での排泄である.
  • 類洞側細胞膜での摂取:疾病や有機陰イオンの取り込みに関して重要なものは,Na依存性,ATP依存性の二次性能動輸送による取り込みである.タウロコール酸(TCA)などの抱合型胆汁酸が細胞内へ摂取される.タウロコール酸を代表的な基質とするNa依存性の輸送担体として,sodium-dependent taurocholate cotransporting polypeptide(NTCP)が確認されている.Na非依存性の有機陰イオン輸送担体としてorganic anion transporting peptide(OATP)が胆汁酸輸送にも関与している.類洞側細胞膜傷害で胆汁酸の取り込みは低下する.
  • 肝細胞内での輸送:胆汁酸は肝細胞類洞側細胞膜での摂取後,肝サイトゾール結合蛋白と結合する.胆汁酸,ビリルビンなどの有機陰イオンと強い結合能をもつリガンジンは,強い胆汁酸結合能を持つ.肝障害でリガンジンが減少すると肝細胞内を胆汁酸は輸送できなくなる.
  • 毛細胆管膜からの胆汁排泄:胆管側膜上には,現在少なくとも3種類の細胞内ATPの加水分解を駆動力とした一次性能動輸送機序があると考えられている.第1は,胆汁酸に対する輸送体bile salt export pump(BSEP)であり,第2は,各種有機陰イオンに対する輸送体(MRP2)である.これらが障害されると胆汁酸は胆汁中へ排泄できなくなり,血中へ逆流する.
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基準値・異常値

基準範囲
HPLCによる分画の基準値を示す.
(参考基準値:単位μmol/l
  • 遊離ウルソデオキシコール酸(FUDCA):0.9以下
  • 遊離コール酸(FCA):1.3以下
  • 遊離ケノデオキシコール酸(FCDCA):1.9以下
  • 遊離デオキシコール酸(FDCA):1.2以下
  • 遊離リトコール酸(FLCA):0.1以下
  • グリシン抱合ウルソデオキシコール酸(GUDCA):0.9以下
  • グリシン抱合コール酸(GCA):0.6以下
  • グリシン抱合ケノデオキシコール酸(GCDCA):2.0以下
  • グリシン抱合
異常値を呈する場合

肝硬変、  肝障害、  急性および慢性肝炎

  • 急性および慢性肝炎,肝硬変肝障害が進行するに従い,グリシン抱合型(G)とタウリン抱合型(T)の比G/T比は低下する.
  • 肝実質障害例ではCA/CDCA比<1.0となる.
  • 胆汁うっ滞の場合はCA/CDCA比≧1.0となる.
  • 進行した非代償期の肝硬変においては二次胆汁酸であるデオキシコール酸(DCA)の低下が認められる.
  • 腸内細菌過剰増殖があると,嫌気性菌により胆汁酸脱抱合,7α-脱水酸化の亢進の結果,遊離型胆汁酸およびDCAの増加が認められることがある.
  • 血中の15分画を測定することで,胆汁の腸肝循環の動的病態が推測できる.

次に必要な検査
肝機能が異常なく,総胆汁酸が高く,遊離型やDCAが高値のときは,腸内細菌の増殖を考え,腸の検査を施行する.
( 松さき靖司 )
臨床検査項目辞典

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「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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