妊娠特異性β1糖蛋白/α2糖蛋白
妊娠特異性β1糖蛋白/α2糖蛋白
別名 | SP1/SP3,妊娠関連α2糖蛋白,P2P,PAα2-G,α2-PAG(α2-妊娠関連糖蛋白) |
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臨床的意義
- 本検査は,異常妊娠の診断ならびに鑑別に必要である.特に,絨毛性疾患(胞状奇胎,絨毛癌,侵入奇胎,絨毛存続症)では血清SP1測定は重要である.
- SP1の産生は,受精後10日目には妊婦の血中で検出可能となり,妊娠期間を通じて増加する.妊娠末期には血清SP1濃度は著増し,100,000~290,000ng/mlにも達する.高値をとる原因としては,そのクリアランスが遅く,半減期は30~40時間であるからである.血清SP1濃度は,胎盤機能をよく反映し,妊娠維持に大切な役割を果たすと考えられるが,その生理的意義は未だ明確ではない.また,最近の研究でSP1遺伝子は,CEA遺伝子と高い類似性があり,CEAファミリーに属すると考えられている.
- SP1は絨毛性疾患である胞状奇胎では患者血清中にほぼ100%検出され,絨毛癌では約70%の頻度で検出される.胞状奇胎では高値を示し,絨毛癌の患者血清中での血清SP1とhCGの測定値は相関し,治療後の測定値は平行して変動する.絨毛癌と侵入奇胎の鑑別にSP1/hCG-β比が有用であるという報告がみられる.また,胞状奇胎では,血清SP1の測定レベルが高いほど続発性変化への可能性が高くなるとの報告がある.
- 乳癌や結腸癌などの非絨毛性腫瘍によってもSP1は産生され,腫瘍との関連も注目されている.近年,SP1は腫瘍マーカーとしても評価されつつある.
- 低値をとる疾患としては,切迫流産,子宮内胎児発達遅延,妊娠高血圧症候群である.切迫流産では,基準値より低値を示すが,切迫早産でも血清SP1は低くなる.子宮内胎児発達遅延では明らかに低値傾向を示す.
- 血清SP3は,肺癌や悪性黒色腫での腫瘍マーカーとして報告され,乳癌の再発の早期発見,治療効果の判定に有用であるとの報告がある.また,SP1と同様に切迫流産では低値をとる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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- β1:7.0ng/ml以下
- α2:1.5mg/dl以下
- 高値
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悪性黒色腫、 肺癌、 胞状奇胎、 絨毛癌
- β1:胞状奇胎,絨毛癌
- α2:肺癌,悪性黒色腫
次に必要な検査
絨毛性疾患か非絨毛性疾患かの鑑別が必要であり,さらにhCG,hCG-βなどの測定を行う.超音波検査などの画像診断も重要である.
- 低値
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子宮内胎児発育遅延、 切迫流産、 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
- β1:切迫流産,子宮内胎児発育遅延,妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
- α2:切迫流産
次に必要な検査
血清SP1濃度が妊娠の経過とともに低下する場合は超音波検査やCTGを実施し,妊娠管理を行う.併せてhCG,hCG-βなどの測定値との比較を行う.また,他の胎児胎盤機能検査であるヒト胎盤性ラクトーゲン(hPL),エストリオールを測定する.
( 大谷慎一 )
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