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サーファクタントプロテインA

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略称 SP-A

臨床的意義

  • 本検査は,肺野にびまん性の線維化陰影が認められたとき,肺損傷の程度のスクリーニングとして測定する.また治療薬(ステロイドや免疫抑制剤など)中止の判断根拠にもなり臨床経過のよい指標となる.
  • 特発性間質性肺炎(IIP)の厚生労働省診断基準第4次改定では,血液・免疫学的所見に,LD,KL-6,SP-A,SP-Dのうちいずれか1項目以上陽性であること,という項目が盛り込まれた.なお,KL-6,SP-A,SP-Dのうちいずれか複数を実施した場合は,主たるもののみ算定されるので注意が必要である.
  • 肺胞上皮細胞以外の細胞にもKL-6の発現が認められるが,SP-AやSP-Dはより肺胞Ⅱ型上皮細胞に特異的と考えられる.
  • 肺損傷は肺胞上皮細胞(Ⅰ型とⅡ型)を中心とした広範囲な傷害を受ける.SP-Aはこれらの細胞に強く発現しているため,細胞傷害時に血中に増加する.
  • 血清SP-Aは各種びまん性肺疾患にて増加する.SP-A 43.8ng/mlをカットオフとしたとき,間質性肺炎の疾患群によりSP-Aの陽性率に差が認められる.特に,膠原病に関連した間質性肺炎ではSP-Aの陽性率は低く,放射線肺臓炎ではSP-Aの陽性率が高い傾向がある.また,SP-AはIIPのステロイド有効例では低下,急性増悪例では上昇し,IIPの病勢を反映する.
  • 特にSP-AはKL-6やSP-Dと比較して,より早期に上昇することが知られている.特に放射線肺臓炎において,胸部単純X線写真では異常陰影がはっきりしない軽症例でもきわめて早期に血清SP-Aが上昇し,診断が可能である.
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基準値・異常値

基準範囲
43.8ng/ml以下
変動要因
高値

過敏性肺炎、  特発性間質性肺炎、  放射線肺臓炎、  膠原病に関連した間質性肺炎

特発性間質性肺炎,膠原病に関連した間質性肺炎過敏性肺炎,放射線肺臓炎

次に必要な検査
KL-6の増加が認められた場合は,胸部X線検査(単純撮影やCT),呼吸機能検査,動脈血液ガス分析,気管支鏡検査,病理組織学的検索(VATSや開胸肺生検)などを行い,間質性肺炎の診断を確定する.その後は,KL-6やSP-A・SP-Dなどの肺特異的マーカーを指標として経過を観察する.
変動要因
  • 基準値を超える値が得られたときは,自覚症状がなくても注意深く経過観察し,臨床症状の悪化時にはステロイドパルス療法などを考慮する.
  • Takahashiらは,49名のIIP患者を3年間観察し,死亡した9名の臨床データを検討した.この死亡例の観察開始時点でのSP-Aは,全例がカットオフ値を超えており,平均119.7ng/mlと非常に高かった.生存例では平均値が66.7ng/mlと低く,陽性率も72%にとどまった.SP-Aがカットオフ値を超えない症例では3年以内の生存がある程度保証されるが,SP-Aが著しい高値を示す例では,特に自覚症状がなくても予後不良なので急性増悪の出現に注意を払うべきである.
  • 特に,副作用として間質性肺炎を引き起こす可能性のある薬剤(塩酸アミオダロンなど)を使用中の患者では,胸部X線写真,呼吸機能検査などの所見とも併せて,早期に薬剤投与中止などを考慮する必要がある.
  • 技術的変動や生理的変動についてはまだ詳しく解明されていない.
( 諏訪部 章 )
臨床検査項目辞典

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「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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