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特発性間質性肺炎

略称 IIPs
別名 Idiopathic Interstitial Pneumonias

疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。

臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias:IIPs)は,間質性肺炎の中で膠原病に合併する間質性肺炎,慢性過敏性肺臓炎,薬剤性肺炎,じん肺といった原因が明らかな二次性の間質性肺炎を除外した原因不明なものを指す.したがって単一の疾患のようにくくられているが,実際は臨床的特徴と経過,画像・病理所見もさまざまな疾患の集合体である.
  2. その病型分類は一般臨床医にはかなり複雑に思われるが,経過が急なものから慢性の経過で予後良好なものまで存在するため,呼吸器内科専門医への紹介のタイミングを見極めることが重要である.
  3. 数カ月の経過で徐々に症状が進行した場合は,通常診断・治療にかける時間も週単位で問題ない.数日の経過で進行している場合は,速やかな鑑別診断と治療を必要とするため,種々の検査の結果が揃う前に,入院・呼吸器専門医へのコンサルトが望ましい.
  4. 典型的な IPF/UIP(ideopathic pulmonary fibrosis:特発性肺線維症/usual interstitial pneumonia:通常型間質性肺炎)は病理所見がなくても臨床経過と画像所見で診断可能である.
  5. 病型によって治療戦略は異なる.特発性肺線維症に対して,現在のところ明らかに有効性が証明された薬剤は存在しない.
  6. 特発性間質性肺炎のうち特発性肺線維症は予後不良な疾患である.安定している患者も急性増悪で一気に生死にかかわる状況になりうる.予後不良の因子を認識し,将来的な人工呼吸の使用など Advance directive(事前指示)を意識した診療を心がける必要がある.
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検査

①胸部Xp
 両側中下肺野優位の線状・網状影,進行すると粗大輪状影(蜂窩肺)となる.肺容量の縮小に伴い,横隔膜挙上を認める.IPF では輪状影が中心であるのに対し,他のIIPs では病変が不均一であったり,斑状影やすりガラス影が混在していたりする.
②胸部CT
 2011 年のATS/ERS/JRS/ALAT のガイドラインでは,画像的にIPF/UIP の3点を満たし,これに反する7つの所見の組み合わせでIPF/UIP の診断を決定する.3つの所見は,①胸膜下の陰影分布,②網状陰影とすりガラス陰影,③蜂巣肺.7 つの反する所見は,①上葉優位,②気管支血管束周囲に優位の陰影分布,③多数の粒状陰影,④モザイク・パーヒュージョン,病変部から離れた部の大型嚢胞,区域性浸潤影,となっている.3 つの所見が揃い,7つの所見のいずれもない場合に,definite UIP,蜂巣肺を欠く場合possible UIP,それ以外はinconsistent with UIP(not UIP)となる.画像所見がUIP で,臨床的に間質性肺炎の原因が特定できない場合(=特発性),外科的な生検による病理検査なしにIPF/UIP と確定診断ができる.
③血液検査
 LDH はIPF の52%,軽症IPF でも41%で上昇が見られると報告されている.細胞損傷に伴い上昇するので特異的なものではないが,急性増悪時などの状態悪化時には上昇することがある.KL-6,SP-A,SP-D は間質性肺炎のマーカーであり,間質性肺炎と他のびまん性肺疾患の鑑別や,活動性の評価,治療反応性の評価などに用いられる.特発性間質性肺炎以外の膠原病肺,過敏性肺臓炎,重症薬剤性肺炎,放射線肺炎,ニューモシスチス肺炎などでも上昇する.SP-Aは細菌性肺炎でも上昇することがあり,SP-Aは腎障害,SP-Dは心不全で上昇するが,KL-6は腎機能障害や心不全で影響されない.KL-6 は肺腺癌,乳癌,膵臓
癌でも上昇することがある.診療報酬上は同一月には1項目しか算定できない.CRP は急性間質性肺炎や急性増悪の時以外は軽度上昇にとどまることが多く,強陽性の場合は感染の合併なども考慮する.
④動脈血液ガス
 厚生労働省の特定疾患認定基準の重症度の指標として用いられる(日本呼吸器学会 びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会 編:特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第2版. 南江堂, 2011 参照).労作時に低酸素血症をきたす患者は予後不良である.通常換気障害は伴わないためPaCO2は正常か低値であるが,末期やCOPD 合併例では上昇する.
⑤肺機能検査
 拘束性換気障害が特徴的である.肺活量(VC)が減少し,一秒量(FEV1.0)の減少よりも肺活量の減少が著しいため一秒率(FEV1.0%)はむしろ高値となる.肺拡散能の測定が可能な施設では,上記所見に加えて肺拡散能(DLCO)の低下,全肺気量(TLC)の減少などを確認できる.
⑥気管支肺胞洗浄(BAL),経気管支肺生検(TBLB)
 どちらもIIPs の除外診断に有用である.IIPs の病型鑑別のためには,どちらも決定的判断材料にはならない.BAL は好酸球性肺炎,薬剤性肺炎,ニューモシスチス肺炎,レジオネラ肺炎,サイトメガロウイルス肺炎,肺胞蛋白症の診断に,TBLB は前述に加え粟粒結核,肺真菌症,癌性リンパ管症,悪性リンパ腫,過敏性肺炎,じん肺の診断に役立つ可能性がある.適応についてまず呼吸器内科専門医にコンサルとすること.
⑦外科的肺生検(開胸,胸腔鏡)
 BAL やTBLB で診断のつかない間質性肺炎の確定診断の目的で行われるが,侵襲を伴う検査であり,検査後の間質性肺炎の急性増悪の報告もあることから,適応については呼吸器内科,胸部外科専門医にコンサルとすること.
⑧診断基準
 画像所見を重視した2011年のATS/ERS/JRS/ALAT のガイドラインの診断基準は上述したが,日本では現在のところ日本呼吸器学会の特発性肺線維症の臨床診断基準を基本にする(図1).特発性肺線維症とほかの特発性間質性肺炎では予後や治療反応性などが異なるため,それほど高齢でなくADL が保たれている場合は,胸部CTで典型的な蜂巣肺を呈さなければ,ほかの特発性間質性肺炎と鑑別のため外科的肺生検を検討する.
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図1 特発性間質性肺炎(IIPs)診断のためのフローチャート
最終診断の項における「……注)」については,外科的肺生検を行っても7つの病型に入れ難い症例の存在に考慮し,最終診断に余地を残していることを意味している.
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