サイトメガロウイルス感染症
CMV
cytomegalovirus infection
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- CMV 感染は,健常人に起こりうる①「初感染」と,免疫不全者に起こる②「再活性化」の 2 つの病態がある(ほかに,妊娠期間中に CMV に初感染した母親から新生児に感染する巨細胞封入体症があるが,ここでは前二者について述べる).
- 初感染は,EBV の初感染によって起こる伝染性単核球症に似るが,平均年齢が高く,いわゆる不明熱の鑑別にあがる.通常,特別な治療は不要であり,対症療法を行う.
- 再活性化は免疫不全者に起こり,致命的となりうる.造血幹細胞移植患者における CMV肺炎や CMV 腸炎,AIDS 患者における網膜炎が代表的である.
- 再活性化の確定診断はしばしば困難であり,適切な患者背景の把握や,CMV 抗原血症検査,画像検査などから総合的に診断し,早期治療を開始することが重要である.
再活性化
- ①免疫抑制患者のCMV 再活性化によるCMV 感染症の症状は,発熱のみ,肝炎,肺炎,網膜炎,脳炎,食道炎,腸炎など多岐にわたる.
- ②CMV抗原血症検査は,CMVが白血球に感染した早期に,末梢血白血球の核にCMVpp65 抗原を発現することを利用している.CMVpp65 に対するモノクローナル抗体を用い,CMV 抗原陽性細胞を染色して鏡検する.わが国で検査することができるC10/C11 とHRP-C7 とでは,扱うモノクローナル抗体が異なる.検査結果は,カウントした細胞中(通常は50,000 個)にいくつ陽性細胞があるか,で報告される.
- ③CMV抗原血症は,CMV感染症の症状が出現する以前に陽性になることから,早期診断ができ,感染症の程度と相関し,治療効果判定にも利用できる.しかし,造血幹細胞移植における先制攻撃治療を除いて,陽性細胞がいくつになれば治療を開始する,という指針が存在するわけではない.
- ④CMV 肺炎では,ニューモシスチス肺炎,細菌あるいは真菌による重複感染がしばしば認められる.
- ⑤CMV 抗原血症は,腸管感染症に対してとくに感度が悪いとされる.網膜炎でも陽性になりにくい.これらの感染症に対しては,疑った場合に迷わず組織を採取し,同時に治療を開始するべきである.
- ⑥視覚異常の訴えがあった場合には,早急な眼底検査が必要であるが,症状がなくてもCD4 細胞数50/μL以下のような高リスク群では,定期的な眼科診察を推奨する.眼底出血を中心とした特徴的な眼科的網膜所見が認められた場合に診断する.PCRによる前房水や硝子体液からのCMV-DNA の検出は診断の確認に有用である.