日和見感染症(概論)
opportunistic infection
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
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Clinical Chart
- 日和見感染症は,免疫状態に異常がない個体では通常は感染しない弱毒菌や非病原性微生物などにより,免疫不全宿主に発症する感染症である.
- 免疫不全の種類により起こりうる感染症が異なるため,細胞性免疫不全,液性免疫不全,好中球減少症(骨髄抑制)に分類したうえで,どの病原体が原因菌である可能性が高いかを判断する.
- 症状は感染部位により異なり,発熱,全身倦怠感,食思不振などの全身症状に,臓器特異的症状が加わる.
- 日和見感染症は宿主の免疫応答が低下しており,感染巣の画像所見が非典型像を呈することも多く,注意が必要である.
- 細菌培養検査の結果が出るまでの間は,基礎疾患や免疫不全の種類から原因微生物をある程度推定し,empiric therapy を行う.
検査
①採血
白血球数の増加,左方移動,CRP の増加,血沈の亢進を認める.免疫不全の状態に応じて,β-D-グルカン,アスペルギルス抗原,クリプトコッカス抗原,カンジダ抗原,T-SPOT(ないしクォンティフェロンTB-3G),抗MAC 抗体,サイトメガロウイルス抗原(C7-HRP)などを検索する.ニューモシスチス肺炎ではβ-D-グルカンに加えてKL-6 も上昇する.
②細菌培養検査
免疫不全宿主は容易に敗血症となるため,血液培養(好気ボトル,嫌気ボトル)を2セット行うとともに,感染臓器に応じて,喀痰,尿,便,皮膚粘膜などから検体採取を行う.
③胸部単純Xp
細菌性肺炎は区域性の浸潤影を呈し,免疫不全宿主においては容易に大葉性肺炎に移行する.抗酸菌感染症は空洞とその周囲の散布巣,粒状影が特徴であるが,免疫不全宿主の場合,免疫応答の低下により感染を封じ込める肉芽腫の形成ができないため浸潤影を呈する場合もある.肺アスペルギルス症では浸潤影,すりガラス影,空洞性病変などを呈する.肺クリプトコッカス症は孤立性,あるいは多発性結節影が典型的であるが,免疫不全宿主の場合,抗酸菌感染と同じ機序で浸潤影を呈することもある.肺カンジダ症では単発性ないし多発性の浸潤影,結節影を認める.ニューモシスチス肺炎の初期には陰影を指摘しにくいことが多く,進行すると地図状のびまん性すりガラス陰影,網状陰影を認める.
④胸部CT
細菌性肺炎は区域性のconsolidation を呈する.抗酸菌感染症は空洞とその周囲の小葉中心性粒状影(tree-in-bud appearance)が特徴であるが,免疫不全宿主の場合,肉芽腫の形成ができないためconsolidationないしすりガラス陰影を呈する場合もある.侵襲性肺アスペルギルス症では単発性あるいは多発性の結節影,consolidation,空洞性病変を認める.発症早期には血管侵襲による凝固壊死と周囲の出血を反映したhalo sign(結節影やconsolidation の周囲にすりガラス陰影を伴う)を認める.好中球減少状態で感染した場合,好中球の回復期にair-crescent sign が出現することがあり,予後良好の指標となる.肺クリプトコッカス症は胸膜から数mm 離れた肺末梢に結節影を認めることが多いが,免疫不全宿主の場合,consolidation を呈することもある.状態がよければ造影CT を行い,consolidation 内部の壊死像の検索などを行う(抗酸菌,放線菌など).
⑤腹部CT
肝臓や脾臓などへの播種性感染症の場合,造影CTにより膿瘍形成を示唆するring enhancement lesion を認める.
⑥頭部CT/MRI
造影CT/MRI により膿瘍形成を示唆するring enhancement lesion を認める.
⑦気管支鏡
胸部異常陰影があり,喀痰で病原微生物が特定できない場合は気管支鏡により下気道検体を採取する.肺真菌症は下気道検体や気管支洗浄液では同定できない場合も多く,経気管支鏡的肺生検による菌糸の確認など病理組織学的診断を要する場合もある.ただし,喀痰・胃液検査で確定できない場合は感染対策を講じたうえで検討する.
⑧上部/下部消化管内視鏡
消化管への感染が疑われ,便培養などでも同定できない場合は検討する.
⑨髄液検査
中枢神経系の感染症が疑われる場合は,禁忌でなければ髄膜炎に準じて腰椎穿刺を行う.
白血球数の増加,左方移動,CRP の増加,血沈の亢進を認める.免疫不全の状態に応じて,β-D-グルカン,アスペルギルス抗原,クリプトコッカス抗原,カンジダ抗原,T-SPOT(ないしクォンティフェロンTB-3G),抗MAC 抗体,サイトメガロウイルス抗原(C7-HRP)などを検索する.ニューモシスチス肺炎ではβ-D-グルカンに加えてKL-6 も上昇する.
②細菌培養検査
免疫不全宿主は容易に敗血症となるため,血液培養(好気ボトル,嫌気ボトル)を2セット行うとともに,感染臓器に応じて,喀痰,尿,便,皮膚粘膜などから検体採取を行う.
③胸部単純Xp
細菌性肺炎は区域性の浸潤影を呈し,免疫不全宿主においては容易に大葉性肺炎に移行する.抗酸菌感染症は空洞とその周囲の散布巣,粒状影が特徴であるが,免疫不全宿主の場合,免疫応答の低下により感染を封じ込める肉芽腫の形成ができないため浸潤影を呈する場合もある.肺アスペルギルス症では浸潤影,すりガラス影,空洞性病変などを呈する.肺クリプトコッカス症は孤立性,あるいは多発性結節影が典型的であるが,免疫不全宿主の場合,抗酸菌感染と同じ機序で浸潤影を呈することもある.肺カンジダ症では単発性ないし多発性の浸潤影,結節影を認める.ニューモシスチス肺炎の初期には陰影を指摘しにくいことが多く,進行すると地図状のびまん性すりガラス陰影,網状陰影を認める.
④胸部CT
細菌性肺炎は区域性のconsolidation を呈する.抗酸菌感染症は空洞とその周囲の小葉中心性粒状影(tree-in-bud appearance)が特徴であるが,免疫不全宿主の場合,肉芽腫の形成ができないためconsolidationないしすりガラス陰影を呈する場合もある.侵襲性肺アスペルギルス症では単発性あるいは多発性の結節影,consolidation,空洞性病変を認める.発症早期には血管侵襲による凝固壊死と周囲の出血を反映したhalo sign(結節影やconsolidation の周囲にすりガラス陰影を伴う)を認める.好中球減少状態で感染した場合,好中球の回復期にair-crescent sign が出現することがあり,予後良好の指標となる.肺クリプトコッカス症は胸膜から数mm 離れた肺末梢に結節影を認めることが多いが,免疫不全宿主の場合,consolidation を呈することもある.状態がよければ造影CT を行い,consolidation 内部の壊死像の検索などを行う(抗酸菌,放線菌など).
⑤腹部CT
肝臓や脾臓などへの播種性感染症の場合,造影CTにより膿瘍形成を示唆するring enhancement lesion を認める.
⑥頭部CT/MRI
造影CT/MRI により膿瘍形成を示唆するring enhancement lesion を認める.
⑦気管支鏡
胸部異常陰影があり,喀痰で病原微生物が特定できない場合は気管支鏡により下気道検体を採取する.肺真菌症は下気道検体や気管支洗浄液では同定できない場合も多く,経気管支鏡的肺生検による菌糸の確認など病理組織学的診断を要する場合もある.ただし,喀痰・胃液検査で確定できない場合は感染対策を講じたうえで検討する.
⑧上部/下部消化管内視鏡
消化管への感染が疑われ,便培養などでも同定できない場合は検討する.
⑨髄液検査
中枢神経系の感染症が疑われる場合は,禁忌でなければ髄膜炎に準じて腰椎穿刺を行う.