IgG4関連疾患
RD
lgG4-related disease
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- IgG4関連疾患の代表として自己免疫性膵炎(AIP)がある.
- AIPはしばしば閉塞性黄疸で発症し,ときに膵腫瘤を形成する特有の膵炎であるが,通常の膵炎と異なり激しい腹痛を生じることはない.
- AIPでは,血清中のIgG4(IgGのサブクラス4)が上昇することが多く,ステロイドに劇的に反応する.1型と2型に分類されるが,本邦ではほとんどが1型である.
- 血清IgG4が上昇する膵外の病変が報告されており,それらの多くで病理学的にIgG4陽性形質細胞の浸潤が証明されることから,IgG4関連疾患(IgG4-RD)と呼ばれる.
- IgG4-RDはきわめて多彩であるが,頻度の高いものに唾液腺炎(ミクリッツ病),肺門リンパ節腫大,硬化性胆管炎,後腹膜線維症,間質性腎炎がある.
AIP の診断
AIP はそれ自体には強い症状はない.黄疸や腹痛といった症状が半数~1/3 程度の患者でみられるが,その他は食欲不振や倦怠感などの非特異的なものが多い.
血液検査にも胆管に炎症が及べば肝機能異常やビリルビン値の上昇を伴うが,全く正常のこともある.血中膵酵素もほぼ正常のことが多い.ただ,高γグロブリン血症を伴う場合は,A/G 比が低下するため,ルーチンの血液検査ではここが診断のヒントになる.AIPを疑えば,総IgG とIgG4 値を測定する.
腹部超音波では「ソーセージ様」と呼ばれるびまん性の膵腫大が特徴であるが,限局性腫大の場合は,膵癌との鑑別が必要である.
造影CT では膵全体がびまん性に腫大し,膵の辺縁には帯状の被膜様構造(capsule-like rim)を伴うのが典型的である(図1).
2011 年に膵臓学会より提唱された診断基準があり,一部を表1 に示す.
ここでも,膵癌・胆管癌との鑑別には十分な注意を払うことが要求されている.びまん性腫大の場合は診断はそれほど困難ではないが,限局性腫大や腫瘤形成性の場合に「膵癌を否定する」ことは相当困難である.このようなケースではEUS-FNA を施行するべきであろう.
血液検査にも胆管に炎症が及べば肝機能異常やビリルビン値の上昇を伴うが,全く正常のこともある.血中膵酵素もほぼ正常のことが多い.ただ,高γグロブリン血症を伴う場合は,A/G 比が低下するため,ルーチンの血液検査ではここが診断のヒントになる.AIPを疑えば,総IgG とIgG4 値を測定する.
腹部超音波では「ソーセージ様」と呼ばれるびまん性の膵腫大が特徴であるが,限局性腫大の場合は,膵癌との鑑別が必要である.
造影CT では膵全体がびまん性に腫大し,膵の辺縁には帯状の被膜様構造(capsule-like rim)を伴うのが典型的である(図1).
2011 年に膵臓学会より提唱された診断基準があり,一部を表1 に示す.
ここでも,膵癌・胆管癌との鑑別には十分な注意を払うことが要求されている.びまん性腫大の場合は診断はそれほど困難ではないが,限局性腫大や腫瘤形成性の場合に「膵癌を否定する」ことは相当困難である.このようなケースではEUS-FNA を施行するべきであろう.
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図1 AIPの造影CT所見
膵全体が腫大し,膵の分葉状構造が不明となっている.これほどの腫大にもかかわらず急性膵炎と異なり,周囲の脂肪組織濃度は上昇していない.辺縁にわずかに被膜様構造を認める.
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表1 自己免疫性膵臨床診断基準2011(抜粋)
A 診断項目 Ⅰ 膵腫大 a びまん性腫大
b 限局性腫大Ⅱ 主膵管の不整狭細像 ERCP での不整狭細像 Ⅲ 血清学的所見 高IgG4 血症(≧135 mg/dL) Ⅳ 病理所見 a 3 つ以上を認める
b 2 つを認める
①高度のリンパ球,形質細胞浸潤と線維化
②強拡1 視野あたり10 個を超えるIgG4 陽性形質細胞浸潤
③花筵状線維化(storiform fibrosis)
④閉塞性静脈炎(obliterative phlebitis)Ⅴ 膵外病変 a 臨床的病変
臨床所見および画像所見において,膵外胆管の硬化性胆管炎,硬化性涙炎・唾液腺(Mikulicz 病)
あるいは後腹膜線維症と診断できる
b 病理学的病変
硬化性胆管炎,硬化性涙炎・唾液腺炎,後腹膜線維症の特徴的病理学像を認めるオプション
ステロイド治療の効果専門施設においては膵癌や胆管癌を除外後に,ステロイドによる治療効果を診断項目に含むこともできる.悪性疾患の鑑別が困難な場合には,超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)細胞診まで行っておくことが望ましいが,病理学的な悪性腫瘍の除外なく,ステロイド治療による安易な治療的診断はさけるべきである. Ⅰ確診 ①びまん型 Ⅰa+Ⅲ/Ⅳb/Ⅴ(a/b) ②限局型 Ⅰb+Ⅱ+[Ⅲ/Ⅳb/Ⅴ(a/b)]の2 つ以上
または
Ⅰb+Ⅱ+[Ⅲ/Ⅳb/Ⅴ(a/b)]+オプション③病理組織学的確診 Ⅳa Ⅱ準確診 限局型Ⅰb+Ⅱ+[Ⅲ/Ⅳb/Ⅴ(a/b)] Ⅲ疑診 びまん型 Ⅰa+Ⅱ+オプション 限局型 Ⅰb+Ⅱ+オプション AIP を示唆する限局性膵腫大を呈する例でERP 像が得られなかった場合,EUS-FNA で膵癌が除外され,Ⅲ/Ⅳb/Ⅴ(a/b)の1 つ以上を満たせば疑診とする.さらにオプション所見が追加されれば準確診とする.