播種性血管内凝固症候群
DIC
disseminated intravascular coagulation syndrome
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
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Clinical Chart
- わが国の DIC 患者数は年間 73,000 人であり,死亡率は 56.0%と報告されている.
- DIC の二大症状は,出血症状と臓器症状であるが,その病態(線溶抑制型,線溶亢進型,線溶均衡型)により症状が異なる.
- DIC には基礎疾患が必須であり,DIC を合併する頻度が高い基礎疾患には,敗血症,悪性腫瘍,産科疾患が挙げられる.
- DIC は早期診断・治療が重要であり,臨床症状の出現がない時点から治療介入することが望まれる.
- DIC治療においては基礎疾患の治療が最重要であるが,DIC治療の主体は抗凝固療法と必要に応じた補充療法である.
診断
診断基準には,厚生労働省DIC 診断基準(1988年),国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis:ISTH)診断基準,急性期DIC 診断基準(2005 年)があげられ,厚生労働省DIC 診断基準が最も用いられている.基礎疾患,臨床症状,検査所見(血小板数,FDP,フィブリノゲン,PT 時間比)を点数化し診断する(表2).
救急領域,特に感染合併DIC の早期診断には急性期DIC診断基準が有用であるが,血液疾患には適さない.
以下の分子マーカーは,DIC の病型を識別するために有用である.
①凝固系・線溶系亢進の指標
救急領域,特に感染合併DIC の早期診断には急性期DIC診断基準が有用であるが,血液疾患には適さない.
以下の分子マーカーは,DIC の病型を識別するために有用である.
①凝固系・線溶系亢進の指標
- ①FDP:フィブリノゲンおよびフィブリンの分解産物の総称.
- ②D-ダイマー:プラスミンによる安定化フィブリンの分解産物の総称.
- ①トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT):凝固活性化により生成されたトロンビンは直ちにアンチトロンビンと結合しTATを形成するため,凝固活性化の指標となる.
- ①プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体(PIC):プラスミン生成量を間接的に把握することができるため,線溶活性化の指標となる.
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表2 厚生労働省DIC 診断基準(1988 年改訂)
スコア 0 点 1 点 2 点 3 点 Ⅰ 基礎疾患 なし あり Ⅱ 臨床症状 出血症状(注1) なし あり 臓器症状 なし あり Ⅲ 検査成績 血清FDP 値(μg/mL) 10> 10≦ <20 20≦ <40 40≦ 血小板数(×103/μL)(注1) 120> 120≧ >80 80≧ >50 50≧ 血漿フィブリノゲン濃度(mg/dL) 150< 150≧ >100 100≧ プロトロンビン時間比 1.25> 1.25≦ <1.67 1.67≦ Ⅳ 判定(注2) DIC DIC の疑い(注3) DIC の可能性少ない 1.白血病その他注1 に該当する疾患 4 点以上 3 点 2 点以下 2.白血病その他注1 に該当しない疾患 7 点以上 6 点 5 点以下 Ⅴ 診断のための補助的検査成績,所見 1 . 可溶性フィブリンモノマー陽性 2 . D-D ダイマーの高値 3 . トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の高値 4 . プラスミン-プラスンインヒビター複合体(PPIC)の高値 5 . 病態の進展に伴う得点の増加傾向,特に数日内での血小板数あるいはフィブリノゲンの急激な減少傾向ないし,FDP の急激な増加傾向の出現 6 . 抗凝固療法による改善 Ⅵ 注 注1: 白血病および類縁疾患,再生不良性貧血,抗腫瘍剤投与後など骨髄巨核球減少が顕著で,高度の血小板減少をみる場合は血小板数および出血症状の項は0 点とし,判定はⅣ-1 に従う. 注2: 基礎疾患が肝疾患の場合は以下の通りとする. a . 肝硬変および肝硬変に近い病態の慢性肝炎(組織上小葉改築傾向を認める慢性肝炎)の場合には,総得点から3 点減点した上で,Ⅳ-1 の判定基準に従う. b . 劇症肝炎および上記を除く肝疾患の場合は,本診断基準をそのまま適用する. 注 3: 「 DICの疑い」患者で,「Ⅴ 診断のための補助的検査成績,所見」のうち 2項目以上満たせば DICと判定する. Ⅶ 除外規定 1 . 本診断基準は新生児,産科領域の診断には適用しない. 2 . 本診断基準は劇症肝炎のDIC の診断には適用しない.