感染性心内膜炎
infective endocarditis
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
(リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 不明熱の診断において重要な位置を占める疾患.不明熱をみたら,まず念頭におくべきである.特に頻度の多い症状や所見として,発熱,心雑音がある.
- 弁膜症や先天性心疾患(異常血流の影響)をもつ患者がかかるケースが多い.また,人工弁置換術後に生じたり,歯科的処置,耳鼻咽喉科的処置,婦人科的処置,泌尿器科的処置などが引き金になったりすることも多い.
- 合併症には,うっ血性心不全や全身性の塞栓症がある.
- 可能なかぎり,抗菌薬投与前には血液培養(2 連続 3 セット)を行う.
- 経胸壁心エコーは,疣腫の診断において非侵襲的で特異度の高い検査であるが,検出感度は十分とはいえない.経食道心エコーについても考慮する.
- 抗菌薬は高用量・長期間となる.高い効果を期待しつつ,副作用の出現に注意を払う必要がある.なお,エンピリック治療は,Streptococcus viridans,ブドウ球菌,腸球菌をカバーする.
チェックリスト
①問診
先天性心疾患,弁膜症や人工弁置換の有無.また最近,歯科・耳鼻咽喉科・婦人科・泌尿器科的処置の既往がないか.糖尿病・肝硬変・腎不全・ステロイド投与などの免疫能低下の原因はないか.
②症状・身体所見
発熱(80~85%),心雑音(80~85%),関節痛・筋肉痛(15~50%),全身性塞栓症(40%,特に脾・腎・脳・四肢動脈).その他,点状出血,爪下線状出血,Osler 結節(指頭部にみられる紫色または赤色の有痛性皮下結節),Janeway 発疹(手掌と足底の無痛性小赤色斑),Roth斑(眼底の出血性梗塞で中心部が白色)などがみられることもある.また,神経学的症状が30~40%にみられ,脳卒中に起因するものが多い.塞栓だけでなく,感染性動脈瘤の破裂,塞栓部位での動脈炎による動脈破裂,梗塞後出血などがある.
③血液検査
①検血一般:血液像(核左方移動,中毒顆粒),白血球増加,貧血
②CRP 高値
③リウマチ因子陽性
④血性補体価の低下
⑤梅毒反応偽陽性
④尿検査
腎動脈塞栓による顕微鏡的血尿~高度な血尿,蛋白尿,免疫複合体による糸球体腎炎を合併することがあり(15%以下),その場合は赤血球円柱,白血球円柱をみる.
⑤心電図
本疾患に特異的な所見はなく,基礎疾患によってそれぞれの所見を呈する.
⑥胸部Xp
特異的な所見はないが,肺うっ血などの心不全徴候の有無を確認する.また,肺血栓,塞栓による斑状陰影が出現することがある.
⑦血液培養
24 時間以上かけて連続3 回行う.発熱時にかぎる必要はなく,また,静脈血と動脈血で培養陽性率に差はないため,静脈血で十分である.抗菌薬投与前に行うことが基本ではあるが,投与後の場合,可能ならば48 時間抗菌薬を中止し,抗菌薬を吸着するレジン入り培地を用いる.
⑧細菌学的検査
病原微生物に対する有効な抗菌薬の最小発育阻止濃度(minimal inhibitory concentration:MIC),最小殺菌濃度(minimal bactericidal concentration:MBC)を測定しておくと抗菌薬の選択に役立つ.
⑨心臓超音波
必須の検査である.心エコー図の陽性所見としては,①弁尖または壁心内膜に付着した可動性腫瘤(疣贅),②弁周囲膿瘍,③生体弁の新たな部分的裂開といった心内膜の所見や新規の弁閉鎖不全などがあげられる.
診断精度は,経胸壁心エコーに関しては感度60%;特異度98%,経食道心エコーは感度76~100%;特異度94~100%と報告されている.特に,人工弁置換例や弁周囲膿瘍の診断においては経食道心エコーの診断精度が優れている.
経食道心エコー所見が陰性であっても依然として臨床的に感染性心内膜炎の疑いが強い場合は1週間前後で再検するのが望ましい.経食道心エコーと経胸壁心エコーを組み合わせて両検査とも陰性の場合,陰性診断予測率は95%である.
先天性心疾患,弁膜症や人工弁置換の有無.また最近,歯科・耳鼻咽喉科・婦人科・泌尿器科的処置の既往がないか.糖尿病・肝硬変・腎不全・ステロイド投与などの免疫能低下の原因はないか.
②症状・身体所見
発熱(80~85%),心雑音(80~85%),関節痛・筋肉痛(15~50%),全身性塞栓症(40%,特に脾・腎・脳・四肢動脈).その他,点状出血,爪下線状出血,Osler 結節(指頭部にみられる紫色または赤色の有痛性皮下結節),Janeway 発疹(手掌と足底の無痛性小赤色斑),Roth斑(眼底の出血性梗塞で中心部が白色)などがみられることもある.また,神経学的症状が30~40%にみられ,脳卒中に起因するものが多い.塞栓だけでなく,感染性動脈瘤の破裂,塞栓部位での動脈炎による動脈破裂,梗塞後出血などがある.
③血液検査
①検血一般:血液像(核左方移動,中毒顆粒),白血球増加,貧血
②CRP 高値
③リウマチ因子陽性
④血性補体価の低下
⑤梅毒反応偽陽性
④尿検査
腎動脈塞栓による顕微鏡的血尿~高度な血尿,蛋白尿,免疫複合体による糸球体腎炎を合併することがあり(15%以下),その場合は赤血球円柱,白血球円柱をみる.
⑤心電図
本疾患に特異的な所見はなく,基礎疾患によってそれぞれの所見を呈する.
⑥胸部Xp
特異的な所見はないが,肺うっ血などの心不全徴候の有無を確認する.また,肺血栓,塞栓による斑状陰影が出現することがある.
⑦血液培養
24 時間以上かけて連続3 回行う.発熱時にかぎる必要はなく,また,静脈血と動脈血で培養陽性率に差はないため,静脈血で十分である.抗菌薬投与前に行うことが基本ではあるが,投与後の場合,可能ならば48 時間抗菌薬を中止し,抗菌薬を吸着するレジン入り培地を用いる.
⑧細菌学的検査
病原微生物に対する有効な抗菌薬の最小発育阻止濃度(minimal inhibitory concentration:MIC),最小殺菌濃度(minimal bactericidal concentration:MBC)を測定しておくと抗菌薬の選択に役立つ.
⑨心臓超音波
必須の検査である.心エコー図の陽性所見としては,①弁尖または壁心内膜に付着した可動性腫瘤(疣贅),②弁周囲膿瘍,③生体弁の新たな部分的裂開といった心内膜の所見や新規の弁閉鎖不全などがあげられる.
診断精度は,経胸壁心エコーに関しては感度60%;特異度98%,経食道心エコーは感度76~100%;特異度94~100%と報告されている.特に,人工弁置換例や弁周囲膿瘍の診断においては経食道心エコーの診断精度が優れている.
経食道心エコー所見が陰性であっても依然として臨床的に感染性心内膜炎の疑いが強い場合は1週間前後で再検するのが望ましい.経食道心エコーと経胸壁心エコーを組み合わせて両検査とも陰性の場合,陰性診断予測率は95%である.