転移性脳腫瘍
別名 | metastatic brain tumor |
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疾患スピード検索で表示している情報は、以下の書籍に基づきます。
「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- がん患者の約 10%に転移性脳腫瘍があり,全脳腫瘍の 18%に当たるが,肺癌からの転移が半数以上を占めている.
- 転移性脳腫瘍の 60%以上は多発性であり,原発性脳腫瘍に比べて,画像上脳浮腫が強いのが特徴である.
- 保存的治療には,脳浮腫対策として,ステロイドと浸透圧利尿薬を使用することがあるが,それぞれ副作用もあるため,臨床症状や合併疾患などを考慮して使用する必要がある.
- 直径 3 cm 以下,単発性,摘出可能な腫瘍局在,余命 3 カ月以上,全身麻酔が施行可能な症例は,総合的に判断して外科的治療を検討する.
- 単発脳転移では,外科的治療後に全脳照射を追加するのが一般的であるが,全脳照射による脳障害を回避するため,新病巣が出現してから定位照射で治療するという方法もある.
- 多発性脳転移では,すべて直径 3 cm 未満で,2~4 個であれば全脳照射+定位照射を行うのが標準的であるが,わが国ではガンマナイフが普及しているため,定位照射を行っている施設も多い.
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診断
①臨床症状
他の臓器に悪性腫瘍が存在し,転移性脳腫瘍を疑うような脳神経症状が出現した場合に検査を行う必要がある.原発性脳腫瘍と同様に,転移性脳腫瘍でも頭蓋内圧亢進症状と局所症状にわけることができるが,転移性脳腫瘍に特徴的な症状というものはない.したがって,臨床症状については,原発性脳腫瘍の[診断]①臨床症状を参照されたい.しかしながら,転移性脳腫瘍の場合は,急速に増大し,腫瘍周囲の脳腫瘍も著明であり,頭痛,嘔気,嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状は比較的急速に進行する.がん細胞が脳脊髄液を介して,くも膜下腔に広がる癌性髄膜炎では,局所症状を呈することなく,頭蓋内圧亢進症状のみのことも多い.
②画像診断
脳腫瘍全国集計調査報告によると,転移性脳腫瘍は60%以上が多発性である.原発性脳腫瘍と同様に,画像診断は造影MRI が中心となるが,腫瘍の大きさに比して周囲の浮腫が強いことが特徴とされ,造影剤によって増強される.脳浮腫が強いためCT でも検出可能な場合も多いが,一般的に5 mm 以下の腫瘍を確実にとらえるならばMRI が必要であり,浮腫がない転移巣を見いだす場合には当然造影が必要である.一般的にT1 強調画像では等信号ないし低信号,T2 強調画像で高信号を示し,腫瘍の増殖が速いため内部が壊死して,造影剤ではT1 強調画像でリング状に増強されることが多い(図1).ときに画像上脳膿瘍と鑑別を要することがある.脳膿瘍も多発性のことがあり,またリング状に増強されるためであるが,拡散強調画像で内部は高信号であり,膿瘍と診断される(図2).また髄膜癌腫症では,腫瘍塊をつくらず,脳表に沿った増強陰影や水頭症が観察される.
③腫瘍マーカー,その他全身検索
原因不明の転移性脳腫瘍は5%前後あるが,このような場合,各種腫瘍マーカーは原発巣の検索に有用である.また原因不明の転移性脳腫瘍だけでなく,原発がすでにわかっている転移性脳腫瘍の他臓器病巣の検索にも,全身検索は必須である.胸部Xp,全身CT,腹部エコーなどは少なくともしておきたい検査であり,骨シンチ,PET による全身検索も場合によっては有用である.脳腫瘍全国集計調査報告の原発巣頻度(Report of brain tumor registry of Japan (2001-2004) 13th edition:Neuroligia medicochirurgica 54(supplement):77, 2014 参照)を念頭に,検索を行っていくことになる.
他の臓器に悪性腫瘍が存在し,転移性脳腫瘍を疑うような脳神経症状が出現した場合に検査を行う必要がある.原発性脳腫瘍と同様に,転移性脳腫瘍でも頭蓋内圧亢進症状と局所症状にわけることができるが,転移性脳腫瘍に特徴的な症状というものはない.したがって,臨床症状については,原発性脳腫瘍の[診断]①臨床症状を参照されたい.しかしながら,転移性脳腫瘍の場合は,急速に増大し,腫瘍周囲の脳腫瘍も著明であり,頭痛,嘔気,嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状は比較的急速に進行する.がん細胞が脳脊髄液を介して,くも膜下腔に広がる癌性髄膜炎では,局所症状を呈することなく,頭蓋内圧亢進症状のみのことも多い.
②画像診断
脳腫瘍全国集計調査報告によると,転移性脳腫瘍は60%以上が多発性である.原発性脳腫瘍と同様に,画像診断は造影MRI が中心となるが,腫瘍の大きさに比して周囲の浮腫が強いことが特徴とされ,造影剤によって増強される.脳浮腫が強いためCT でも検出可能な場合も多いが,一般的に5 mm 以下の腫瘍を確実にとらえるならばMRI が必要であり,浮腫がない転移巣を見いだす場合には当然造影が必要である.一般的にT1 強調画像では等信号ないし低信号,T2 強調画像で高信号を示し,腫瘍の増殖が速いため内部が壊死して,造影剤ではT1 強調画像でリング状に増強されることが多い(図1).ときに画像上脳膿瘍と鑑別を要することがある.脳膿瘍も多発性のことがあり,またリング状に増強されるためであるが,拡散強調画像で内部は高信号であり,膿瘍と診断される(図2).また髄膜癌腫症では,腫瘍塊をつくらず,脳表に沿った増強陰影や水頭症が観察される.
③腫瘍マーカー,その他全身検索
原因不明の転移性脳腫瘍は5%前後あるが,このような場合,各種腫瘍マーカーは原発巣の検索に有用である.また原因不明の転移性脳腫瘍だけでなく,原発がすでにわかっている転移性脳腫瘍の他臓器病巣の検索にも,全身検索は必須である.胸部Xp,全身CT,腹部エコーなどは少なくともしておきたい検査であり,骨シンチ,PET による全身検索も場合によっては有用である.脳腫瘍全国集計調査報告の原発巣頻度(Report of brain tumor registry of Japan (2001-2004) 13th edition:Neuroligia medicochirurgica 54(supplement):77, 2014 参照)を念頭に,検索を行っていくことになる.
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- 図1 腎癌の転移性脳腫瘍のMRI
- a:造影T1強調画像,b:T2強調画像,c:FLAIR画像
左前頭葉に造影される腫瘍本体があるが,周囲の脳浮腫が強く,右頭頂葉病変の浮腫の一部も見える.