アルコール性肝障害
別名 | alcoholic liver disease |
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- bio-psycho-social aspectsのすべてに目配りすべき疾患.内科的対応(生物学的異常の是正)に終始すると,「飲める体に戻す」だけで,長期的にみると患者の健康破壊に手を貸すことにもなりかねない.
- しばしば背景にアルコール依存問題が存在するため,必要に応じ適切な精神科との協力関係を要する.
- アルコール性肝炎では黄疸を呈して外来を受診することが多い.すばやくHBs抗原,HCV抗体を確認し,腹部エコーで閉塞性黄疸を除外し,病歴を的確に聴取してアルコール性肝障害の診断を行う.
- 治療の基本は断酒である.
- アルコール性肝障害の臨床4型を理解し,患者のStageと予後を把握する.
- 肝障害はアルコールによる全身疾患の一部であることを念頭に,他臓器(特に神経,血液,心臓,糖代謝・膵臓)にも注意して診療する.
- 近年(2000年以降),アルコール性肝癌(alcoholic hepatocellular carcinoma:AL-HCC)の,肝癌全体に占める比率が急増中であり,重要性が増している.AL-HCCは必ずしも依存症とは限らないが,肝発癌リスクを低減するうえで断酒は重要である.
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検査
- ①血液検査
- ①血算:大球性正色素性貧血をしばしば認める.鉄欠乏による小球化に打ち消されて MCV が見かけ上正球性になることがあり,要注意.血小板数は,病期の推定には役立たない.白血球数>10,000は重症のアルコール性肝炎を意味し,入院適応(白血球数>20,000 では死亡率 20%).
- ②血液生化学:AST>ALT であることが大半で,γ-GTP 高値.ただしγ-GTP の値と重症度は必ずしも比例しない.Ch-E は他の原因の肝疾患同様重症度を反映する.
- ③凝固系:蛋白合成能を反映.アルコール性肝炎のときは,肝性昏睡度と併せて急性肝不全を判断する指標になる.
- ②腹部エコー
胆道系疾患の除外とともに,アルコール性肝障害では脂肪浸潤を反映して肝実質が高輝度になり,肝腫大を反映して肝縁が鈍化することを評価する. - ③腹部 CT
肝腫大,脂肪浸潤の評価とともに,膵炎の評価を行う. - ④Tc(テクネシウム)フチン酸肝シンチグラム,造影エコー
アルコール性肝障害の機序として腸管内細菌由来のエンドトキシンが肝網内系を刺激することが発端であり,重症であれば肝網内系不全となる(フチン酸肝シンチグラムで肝臓が描出困難になる).肝網内系を描出するフチン酸シンチ,ソナゾイドやレボビストを使用した造影エコーではこれを把握できる.同様の理由で SPIO-MRI も有用である. - ⑤非侵襲的硬度診断
超音波を用いた組織弾性イメージング法は,音響放射圧や加振器による低周波振動によるずり波の伝搬速度をプローブで検出し,組織硬度を非侵襲的に検出する方法である.幾多の問題点が残されているが,現在保険適用となったフィブロスキャンでは 12 kPa を越せば F4(肝硬変)と判断できるとされる.だが現段階では肝硬変と非硬変肝との数値の重なりは大きく,肝生検に完全に替わるものではない. - ⑥肝生検(腹腔鏡)
肝障害度(stage)を正確に把握するためには,肝生検が必要である.肝線維症以上の段階には,腹腔鏡併施が望ましい.アルコール性肝障害では,腹水貯留を認め,臨牀的に肝硬変と考えていても小葉改築傾向をあまり認めないことがあり,予後の推定や正確なインフォームドコンセントのためにも,肝生検はできる限り施行することが望ましい.
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