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クロール(髄液)

クロール(髄液)

別名 塩素(髄液),クロールイオン(髄液),Cl(髄液)

臨床的意義

以下のとき本検査を行う.
  1. 発熱頭痛,嘔気・嘔吐意識障害など髄膜刺激症状を呈した例.
  2. 髄液検査で白血球増加や蛋白量増加など髄膜炎の疑いがもたれたとき.
  • 結核性髄膜炎の診断にのみ有用といってよい.髄膜炎は緊急治療が要求されるが,起炎菌(ウイルスを含む)の同定には日数を要し,特に結核菌(DNA検索法も不十分である)は塗抹検査では検出されないことが多く,培養検査も数週間かかるというのが実状で,したがって髄液Cl低下(Naも低下)という診断特異性の比較的高いこの検査が重視されている.
  • 健常人では髄液Cl/血清Cl比は1.2前後で,髄液が20%ほど高値である.結核性髄膜炎では髄液Clが低下するため,この比が1.0台(多くて1.05)にとどまる.すなわち髄液/血清比が鑑別法として意味がある.
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基準値・異常値

基準範囲
120~130mEq/l
変動要因
低値

急性細菌性髄膜炎、  急性腎不全、  繰り返しの嘔吐、  結核性髄膜炎、  髄腔内腫瘍、  多発性神経炎、  頭部外傷、  副腎皮質機能不全、  無菌性髄膜炎

低値

臨床的には低値のみが問題となる.

  • 高度減少:結核性髄膜炎(100mEq/l以下になることもまれでない)
  • 軽度減少:急性細菌性髄膜炎,髄腔内腫瘍,低Cl血症のとき(繰り返しの嘔吐,急性腎不全,副腎皮質機能不全など),頭部外傷
  • 軽度減少~基準範囲内:無菌性髄膜炎,多発性神経炎

次に必要な検査

髄液Cl値に低下をみたとき,髄液蛋白量の増加を確認し,ついで髄液結核菌の証明が要求される.塗抹染色(グラム染色,抗酸菌染色)を行うが,結核性髄膜炎であっても陰性のことがあり(特にフィブリン析出を伴う例ではこれに包蔵され検出しにくい),必ず培養検査を行う.結核菌は最近ではDNAプローブ法やPCRによる迅速診断も可能である.原発巣(肺結核が多い,再発例を含む)の検索も重要である.
変動要因
  • 髄液Clが高値を示す例に尿毒症があり,これに結核性髄膜炎を合併すると基準値を呈することになる.
  • なお,低値は激しい嘔吐を繰り返した例(胃液中の塩酸の喪失)でもみられるので注意が必要である.
( 伊藤機一 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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