トロンボキサンB2
トロンボキサンB2
略称 | TXB2 |
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臨床的意義
- 本検査は,血小板凝集の亢進や動脈硬化症,狭心症,糖尿病,高脂血症など血栓症を合併しやすい疾患,血管や血圧の異常が疑われる場合に行われる.また,喘息発作時にも行われる.
- 魚を大量に摂取するエスキモーで虚血性心疾患の発生率が少ないことは,よく知られている.魚油に含まれるエイコサペンタエン酸からは,不飽和結合を3個もつPGI3あるいはTXA3が生じる.PGI3の血小板凝集抑制作用は減弱しないが,TXA3の血小板凝集作用や血管収縮作用が弱まるためと考えられている.
- 血小板でPGH2から産生されるTXA2は,ただちにTXB2に変換される.血中TXB2を測定することは,主として血小板凝集能をみることとなる.しかしながら,循環血中のTXB2濃度は,ガスクロマトグラフィによる測定では2pg/mlである.通常の採血条件では血小板凝集によるTXA2の産生を含めて測定することとなる.
- 正確に血小板のTXA2の産生能をみるためには,血小板浮遊液を作製し,種々の凝集刺激の前後で測定することが好ましい.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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15pg/ml以下
- 高値
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狭心症、 心筋梗塞直後、 新生児、 腎血管性高血圧、 水腎症、 糖尿病、 動脈硬化症、 妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、 肺血栓症、 分娩時、 慢性糸球体腎炎
肺血栓症,動脈硬化症,心筋梗塞直後,狭心症(特に冠血管攣縮;局所を灌流する血液の測定が望ましい),糖尿病,慢性糸球体腎炎,水腎症,腎血管性高血圧,妊娠時〔特に妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)〕,分娩時,新生児
- 低値
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アスピリンや非ステロイド系酸性抗炎症薬服用時、 血小板の量的・質的異常
(測定感度10pg/ml未満)
血小板の量的・質的異常(特にシクロオキシゲナーゼ欠損症やトロンボキサンA2欠損症に伴う血小板顆粒の放出異常),アスピリンや非ステロイド系酸性抗炎症薬服用時
- 次に必要な検査
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アデノシン二リン酸(ADP)やコラーゲンに対する血小板凝集,できればアラキドン酸に対する血小板凝集も調べる.糖尿病では網膜症と腎症の程度の評価,糸球体腎炎は腎機能の程度をチェックする.
( 片山茂裕 )
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