アディポネクチン
アディポネクチン
臨床的意義
- 糖尿病,高血圧,肥満などの生活習慣病や,それらの集積したメタボリックシンドロームで低アディポネクチン血症がみられる.この結果,血管内皮細胞傷害や血管平滑筋の遊走・増殖の亢進により,動脈硬化病変が形成される.実際,冠動脈疾患のあるような患者でも,低アディポネクチン血症がみられる.喫煙者では非喫煙者より30%ほど低値となる.
- また,低アディポネクチン血症は糖尿病の発症予測因子となることが,Atherosclerosis Risk Communities Studyで報告されている.アディポネクチン濃度で4分位に分けると,第2・3・4分位のグループの糖尿病発症率は第1分位のグループに比べて0.57・0.39・0.18倍であったという(Diabetes, 53:2472-2478, 2004).先に述べたI164T多型のうち,TC遺伝子型を有する者の多くが高血圧であることも報告されている.
- 逆に,高アディポネクチン血症がみられるのは,糖尿病腎症などの腎機能障害があるときである.その一因は,腎機能の低下によりアディポネクチンのクリアランスが低下するためであるが,アディポネクチンの産生も亢進するといわれている.
- 治療との関連では,インスリン抵抗性改善薬であるピオグリタゾンなどのPPARγのリガンドであるチアゾリジン誘導体の投与は,アディポネクチンのプロモーター活性を上昇させて転写を増加させ,血中アディポネクチン濃度を20μg/ml程度まで増加させる.降圧薬であるACE阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が血中アディポネクチン濃度を20~30%程度増加させる.ARBのうち,テルミサルタンはPPARγのpartial agonistであり,血中アディポネクチン濃度をさらに上昇させる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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2~20μg/ml
(男性平均6μg/ml,女性平均9μg/ml)
変動要因 - 高値
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腎機能障害、 糖尿病でピオグリタゾン服用中
腎機能障害,糖尿病でピオグリタゾン服用中
- 低値
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メタボリックシンドローム、 冠動脈疾患、 喫煙者、 高血圧、 糖尿病、 肥満
糖尿病,高血圧,肥満,メタボリックシンドローム,冠動脈疾患,喫煙者
- 次に必要な検査
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高分子アディポネクチンの測定.
- 変動要因
- クエン酸の入った血漿では,血中アディポネクチン濃度が低めに出ることがある.
( 片山茂裕 )
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