特発性血小板減少性紫斑病
ITP
idiopathic thrombocytopenic purpura
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 厚生省研究班による 2004~2007 年の集計によると総患者数は約 2 万人で,100 万人あたりの発症率は 11.6 人である.20~40 歳代の女性と 60~80 歳の中高年齢に発症のピークがある.
- 血小板に対する自己抗体によって血小板の破壊が亢進する.自己免疫機序を病名に反映させるため,International Working Group(IWG 2009)にて,immune thrombocytopenia (ITP)と呼ぶことが提唱された.
- 症状は,血小板減少による皮下出血や粘膜下出血である(Rodeghiero F,et al:Blood 121:2596-2606,2013参照).
- 診断のためには,自己免疫機序以外の血小板減少をきたす疾患の除外が必要である.
- 診断から 3 カ月までの症例を新規発症(newly diagnosed)ITP と総括し,診断後 3~12カ月の期間血小板減少が持続した症例を持続性(persistent)ITP,診断から 12 カ月以上経過しても血小板減少が持続している症例を慢性(chronic)ITP と分類ことが IWG 2009 より提唱されている.
- 治療は「成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2012 年版」に準ずる(藤村欣吾・他:臨床血液53:433-442,2012 参照). Helicobacter pylori (HP)陽性の場合はまず除菌治療を行い,除菌治療に抵抗性または HP陰性例で,血小板数 2 万/μL 以下または重篤な出血症状を呈する場合に副腎皮質ステロイド治療を行う.緊急時は免疫グロブリン大量療法を行う.二次治療は脾臓摘出,三次治療はトロンボポエチン(TPO)受容体作動薬が用いられる.
- 厚生省による難治性疾患克服研究事業の対象とされており,基準を満たせば病状に応じて医療費の自己負担分の一部が公費負担として助成される.
検査
①血球数
血小板数のみの減少を呈する.出血症状がないにもかかわらず血液検査で血小板減少を呈し,とくにその数値が変動する場合は,EDTA 依存性偽性血小板減少を鑑別する.この場合,クエン酸ナトリウム入り採血管で採血を行うか,塗沫標本にて血小板凝集塊を観察する.貧血を伴う場合は再生不良性貧血や,自己免疫性溶血性貧血の可能性がある.
②網状血小板
網状血小板は血小板の産生低下(再生不良性貧血など)で減少し,血小板の末梢での破壊亢進では増加する.自動血球測定装置を用いる方法が比較的簡便であるが,正常範囲の設定が明確でないため,あくまで参考程度にとどめる.
③血液像
若年者で巨大血小板が顕著であれば先天性疾患を考える.中高年であれば好中球などの血球形態の異型に注意して,骨髄異形成症候群を鑑別する.芽球の存在は急性白血病を示唆する重要な所見である.破砕赤血球が顕著な場合は血栓性血小板減少性紫斑病を考える.
④自己抗体
血小板表面に結合した抗体を直接測定する血小板関連IgG(PAIgG)が保険収載されており,ITP の6 割で高値となる.しかし特異度が低いために診断的価値は国際的には高くない.抗GPⅡb/Ⅲa 抗体は診断価値が高いものの,陽性率は30~50%程度と低く,保険収載されていない.なお,抗血小板抗体という検査項目の中には,血小板輸血不応時などに行うHLA-classⅠ抗体などの同種抗体を測定しているものがあり,検査内容に注意が必要である.抗リン脂質抗体はITP の4 割に陽性となるが,治療反応性には影響しない.抗リン脂質抗体症候群との鑑別のために凝固系の異常や血栓症などの臨床症状に注意が必要である.抗核抗体が高値の場合は,SLE との鑑別を行う.直接Coombs 検査が陽性の場合は,自己免疫性溶血性貧血を合併するEvans 症候群と診断される.
⑤骨髄検査
ITP における骨髄の典型像は,やや小型から成熟の巨核球の増加と血小板付着像の消失である.60 歳以上で貧血や全身症状を伴っている場合は,骨髄異形成症候群やリンパ増殖性疾患の鑑別のために骨髄検査が必須である.一方で小児や若年者では,正球性貧血を伴い再生不良性貧血の鑑別を要する場合や芽球を認める場合を除いて,骨髄検査は必ずしも必要ない.
血小板数のみの減少を呈する.出血症状がないにもかかわらず血液検査で血小板減少を呈し,とくにその数値が変動する場合は,EDTA 依存性偽性血小板減少を鑑別する.この場合,クエン酸ナトリウム入り採血管で採血を行うか,塗沫標本にて血小板凝集塊を観察する.貧血を伴う場合は再生不良性貧血や,自己免疫性溶血性貧血の可能性がある.
②網状血小板
網状血小板は血小板の産生低下(再生不良性貧血など)で減少し,血小板の末梢での破壊亢進では増加する.自動血球測定装置を用いる方法が比較的簡便であるが,正常範囲の設定が明確でないため,あくまで参考程度にとどめる.
③血液像
若年者で巨大血小板が顕著であれば先天性疾患を考える.中高年であれば好中球などの血球形態の異型に注意して,骨髄異形成症候群を鑑別する.芽球の存在は急性白血病を示唆する重要な所見である.破砕赤血球が顕著な場合は血栓性血小板減少性紫斑病を考える.
④自己抗体
血小板表面に結合した抗体を直接測定する血小板関連IgG(PAIgG)が保険収載されており,ITP の6 割で高値となる.しかし特異度が低いために診断的価値は国際的には高くない.抗GPⅡb/Ⅲa 抗体は診断価値が高いものの,陽性率は30~50%程度と低く,保険収載されていない.なお,抗血小板抗体という検査項目の中には,血小板輸血不応時などに行うHLA-classⅠ抗体などの同種抗体を測定しているものがあり,検査内容に注意が必要である.抗リン脂質抗体はITP の4 割に陽性となるが,治療反応性には影響しない.抗リン脂質抗体症候群との鑑別のために凝固系の異常や血栓症などの臨床症状に注意が必要である.抗核抗体が高値の場合は,SLE との鑑別を行う.直接Coombs 検査が陽性の場合は,自己免疫性溶血性貧血を合併するEvans 症候群と診断される.
⑤骨髄検査
ITP における骨髄の典型像は,やや小型から成熟の巨核球の増加と血小板付着像の消失である.60 歳以上で貧血や全身症状を伴っている場合は,骨髄異形成症候群やリンパ増殖性疾患の鑑別のために骨髄検査が必須である.一方で小児や若年者では,正球性貧血を伴い再生不良性貧血の鑑別を要する場合や芽球を認める場合を除いて,骨髄検査は必ずしも必要ない.