骨髄線維症
myelofibrosis
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 骨髄線維症は,造血幹細胞のクローン性疾患で,広範な骨髄の線維化,髄外造血,脾腫および造血不全を特徴とする疾患であり,原発性骨髄線維症と造血器悪性腫瘍をはじめとする悪性腫瘍などに引き続き生じる二次性骨髄線維症に分けられる.
- 原発性骨髄線維症は,若年者の発症はまれで,発症年齢中央値は 65 歳,男女比は約 2:1 である.
- 臨床所見
脾腫と貧血および末梢血への赤芽球,涙滴状赤血球や芽球の出現を認める場合は,本疾患を疑う. - 約 80%に貧血様症状,肝脾腫による腹部症状,出血症状,体重減少,発熱,盗汗などいずれかの症状を認める.
- WHO の診断基準に沿い診断する(表1).
- 検査所見
①末梢血液:貧血,血小板数の増減,末梢血液塗抹標本で赤芽球,巨大血小板,涙滴状赤血球,芽球の出現を認める.
②骨髄:骨髄穿刺ではほとんどが dry tap である.生検では,異型巨核球の増生,骨髄の線維化や骨硬化を認める.
③染色体検査:骨髄が dry tap である場合は,末梢血を用いて行う.
④JAK2 変異および他遺伝子変異:原発性骨髄線維症の約半数に JAK2 遺伝子の変異,約35%に CALR 遺伝子変異,5~8%に MPL 遺伝子変異を認める.
⑤肝脾腫:肝脾腫を高率に認める. - 治療
低リスク群では無治療経過観察や支持療法のみ,有症状や高リスク群では支持療法,蛋白同化ホルモン,内服抗癌剤,免疫調整薬(immunomodulatory drugs:IMiDs),分子標的薬(JAK2 阻害剤など),脾臓摘出・脾臓放射線照射や造血幹細胞移植などを検討する.
検査所見
①末梢血
貧血(約 50%で 10 g/dL 未満,約 20%で 8 g/dL未満),白血球数上昇(減少もあり),血小板数低下(時に上昇もあり).
末梢血塗抹標本検査で,赤芽球,巨大血小板,涙滴状赤血球を認め,約60%で,末梢血に芽球を認める.
②脾腫
約 90%に脾腫を認め原発性線維症の特徴的所見であり,左季肋下 10 cm 以下でも触知される巨脾を約40%で認める.
脾腫による満腹感,腹満感,左季肋部痛を呈し,多発脾梗塞を起こすこともある.
③肝腫大
40~70%で肝腫大を認める.門脈圧亢進症,静脈瘤などを合併することもある.
④骨髄穿刺・生検
骨髄穿刺吸引は dry tap であることがほとんどである.骨髄吸引が可能である場合もあるが,線維化の診断のためには生検が必須であり,必ず併せて行う必要がある.
生検所見では,病初期ではあまり線維化は目立たず異型巨核球,顆粒球系の増加が目立つが,病勢の進行とともに線維芽細胞などの間質細胞の増加とともに著明な骨髄の線維化や骨硬化がみられ造血細胞成分は減少する.
⑤染色体検査
染色体検査は,骨髄が dry tap であるときは,末梢血を用いて行う.わが国の解析では,染色体分析が可能であった症例の約 40%で染色体異常を認め,del (20),del(13),trisomy 8 が比較的高頻度にみられる異常である.また複雑な染色体異常を呈する症例もある.
⑥遺伝子変異
原発性骨髄線維症の約 50%の症例に,JAK2V617F変異が検出される.JAK2はチロシンキナーゼであり,その活性化は下流のシグナル伝達分子の STAT5 の活性化を引き起こし,増殖,生存シグナルが伝達されるが,同変異により,JAK2 が恒常的に活性化し,過剰な造血細胞の自律増殖が起こる.
なお,JAK2V617F は,原発性骨髄線維症以外に真性多血症の 95%以上,本態性血小板血症の約半数にみられる.
また,原発性骨髄線維症の 5~8%に,トロンボポエチン(TPO)のレセプターである MPL の膜貫通部位での変異が認められる.また,JAK2 変異または MPL変異を有しない症例の約70%で CALR遺伝子の変異が近年同定されている.
その他にも多数の遺伝子変異(TET2,C-CBL, ASXL1,EZH2 など)が報告されている.
貧血(約 50%で 10 g/dL 未満,約 20%で 8 g/dL未満),白血球数上昇(減少もあり),血小板数低下(時に上昇もあり).
末梢血塗抹標本検査で,赤芽球,巨大血小板,涙滴状赤血球を認め,約60%で,末梢血に芽球を認める.
②脾腫
約 90%に脾腫を認め原発性線維症の特徴的所見であり,左季肋下 10 cm 以下でも触知される巨脾を約40%で認める.
脾腫による満腹感,腹満感,左季肋部痛を呈し,多発脾梗塞を起こすこともある.
③肝腫大
40~70%で肝腫大を認める.門脈圧亢進症,静脈瘤などを合併することもある.
④骨髄穿刺・生検
骨髄穿刺吸引は dry tap であることがほとんどである.骨髄吸引が可能である場合もあるが,線維化の診断のためには生検が必須であり,必ず併せて行う必要がある.
生検所見では,病初期ではあまり線維化は目立たず異型巨核球,顆粒球系の増加が目立つが,病勢の進行とともに線維芽細胞などの間質細胞の増加とともに著明な骨髄の線維化や骨硬化がみられ造血細胞成分は減少する.
⑤染色体検査
染色体検査は,骨髄が dry tap であるときは,末梢血を用いて行う.わが国の解析では,染色体分析が可能であった症例の約 40%で染色体異常を認め,del (20),del(13),trisomy 8 が比較的高頻度にみられる異常である.また複雑な染色体異常を呈する症例もある.
⑥遺伝子変異
原発性骨髄線維症の約 50%の症例に,JAK2V617F変異が検出される.JAK2はチロシンキナーゼであり,その活性化は下流のシグナル伝達分子の STAT5 の活性化を引き起こし,増殖,生存シグナルが伝達されるが,同変異により,JAK2 が恒常的に活性化し,過剰な造血細胞の自律増殖が起こる.
なお,JAK2V617F は,原発性骨髄線維症以外に真性多血症の 95%以上,本態性血小板血症の約半数にみられる.
また,原発性骨髄線維症の 5~8%に,トロンボポエチン(TPO)のレセプターである MPL の膜貫通部位での変異が認められる.また,JAK2 変異または MPL変異を有しない症例の約70%で CALR遺伝子の変異が近年同定されている.
その他にも多数の遺伝子変異(TET2,C-CBL, ASXL1,EZH2 など)が報告されている.
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表 1 WHO 第 4 版分類における原発性骨髄線維症の診断基準
大基準 1. 通常細網線維性/膠原線維性線維化を伴う巨核球の増加と異型性の存在.
有意な細網線維症が見られない場合には,巨核球系の異型,増加に加え,顆粒球系細胞の増殖と赤芽球の減少で特徴づけられる骨髄細胞密度の増加.2. 真性赤血球増加症,慢性骨髄性白血病,骨髄異形成症候群やその他の骨髄系腫瘍の診断基準を満たさないこと. 3. JAK2V617F 変異あるいは MPL W515L/K のようなクローン性マーカーの存在.
JAK2V617F 変異が見られない場合,骨髄線維化やその他の変化が感染,自己免疫疾患あるいはその他の慢性炎症性疾患,ヘアリー細胞白血病あるいはその他のリンパ系腫瘍,転移性悪性腫瘍,中毒性骨髄障害などによる二次性の原因によるものであることを示唆する所見がないこと.小基準 1. 白赤芽球症 2. 血清 LDH の上昇 3. 貧血 4. 脾腫 大基準3項目すべてと小基準2項目以上を満たす場合に診断.