成人T細胞性白血病・リンパ腫
ATL
adult T-cell leukemia/lymphoma
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
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Clinical Chart
- HTLV-1(human T-cell leukemia virus type-1)の感染者が,30~70 年以上の潜伏期を経て発症する.発症年齢平均 68 歳であり,HTLV-1 陽性の母親から母乳を介しての感染者がほとんどである.感染者は,西日本,九州に多い.感染者の約 5%が ATL を発症するとされ,年間約 1,000 人が新規発症する.
- 臨床所見として,倦怠感,表在リンパ節腫脹,発熱,下痢,腹痛などを認めることがあるが,特異的な所見は乏しい.紅斑や結節など種々のタイプの皮疹を認めることがある.
- 検査所見
①白血球数増加,血清 LDH や可溶性 IL-2 レセプターの上昇を認める.末梢血に花弁様核を持つ異常リンパ球を認めることが多い.リンパ節腫脹など病変部位があれば積極的に生検を行う.
②HTLV-1 抗体が陽性である.確定診断は,腫瘍細胞の DNA に HTLV-1 の proviral DNAの組み込みを確認すること(サザンブロット法)であるが保険未収載である.腫瘍細胞の表面マーカーは,末梢性 T 細胞であり,CD4+8-25+が大部分である.
③高カルシウム血症をきたすことが多い. - 治療を始める前に,病型を急性型,リンパ腫型,慢性型,くすぶり型に分類する.
①くすぶり型や予後不良因子(LDH,BUN,Alb の異常値)を持たない慢性型には無治療で経過観察を行う.
②急性型,リンパ腫型には化学療法が行われる.悪性リンパ腫に準じて治療が行われるが,mLSG15 療法(VCAP-AMP-VECP 療法)が行われることが多い.高齢者,PS (perfomans status)不良例等には,CHOP 療法なども行われる.近年分子標的薬(抗CCR4 抗体:モガムリズマブ)も発売され,使用されている.化学療法中や慢性型の症例でもニューモシスチス肺炎やサイトメガロ感染症など日和見感染を起こすことが多く,治療に難渋する. - 予後として,
①急性型,リンパ腫型は化学療法での治癒は難しく,多くの例で再発・難治となり,日和見感染症の合併もあり,平均生存期間は 9~13 カ月と不良である.治癒が望めるのは造血幹細胞移植のみであり,ドナーが確保できる若年者には推奨される.
②くすぶり型,慢性型では長期生存例もあるが,平均生存期間 4 年ほどとの報告もあり,必ずしも予後は良好ではない.