届け出が必要な感染症・輸入感染症
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 昔は日本でも流行し死亡率が高かったコレラ,腸チフス,赤痢などの各種感染症は,医療水準の向上,生活水準の向上,上・下水道の整備など公衆衛生状態の改善により患者数が激減し,発展途上国で感染して帰国後発症するか,あるいは輸入食品により感染するというケースが多くなった.
- 航空機の利用による国際交流の進展,海外渡航者の増加に伴い,日本ではほとんど見られなくなった上記のような疾患や,本来日本には存在しない感染症が海外から持ち込まれることが多くなり,輸入感染症とよばれている.
- 「輸入感染症」という用語は行政用語としてまず使われ,今日医学界でも使用されているが,明確な定義は存在しない.
- これらの疾患は一般の医療では遭遇する機会が極めて少ないため,医療従事者の側に経験や知識が乏しく,診断が困難である.初期治療が不適切になり予後を悪化させたり,適切な感染対策がとれずに集団感染が発生したりする危険性がある.診断のつかない発熱疾患の診療の際には,海外渡航歴も確認する必要がある.
- 今日の日本では頻度的に低いといっても国際的な視野に立てば,マラリアなど年間の総罹患者数,死亡者数などが圧倒的に多い感染症が含まれている.
- 日本では明治 30 年(1897 年)に制定された法律に基づいて法定伝染病が指定され,隔離などの対応が実施されていた.有効な治療薬(抗菌薬など)が多数使用可能な現代では,法定伝染病は診断さえつけば簡単に治療できる疾患が多くなり,実情にそぐわなくなっていた.大幅な法の改訂が実施されて 1999年4月に「感染症新法」が制定され,2003 年 11月,2013 年 3 月に一部改正され,名称は「感染症法」になった.
- 病原性の強い各種病原体を生物化学兵器として使用するテロリズムの発生が危惧されており,2001 年には実際に米国で炭疽菌が使用され,痘瘡(天然痘)やペストなども使用される可能性が指摘されている.
- この項目では届け出が必要な感染症や輸入感染症について一般の医者が最低限知っているべき基本的な事項について説明する.
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感染症の分類
<具体的分類>
- ①すべての医療機関が届け出る疾患:アメーバ赤痢,ウイルス性肝炎(E 型肝炎およびA 型肝炎を除く),急性脳炎(ウエストナイル脳炎,西部ウマ脳炎,ダニ媒介脳炎,東部ウマ脳炎,日本脳炎,ベネズエラウマ脳炎およびリフトバレー熱を除く),クリプトスポリジウム症,Creutzfeldt-Jakob 病,劇症型溶血性レンサ球菌感染症,後天性免疫不全症候群,ジアルジア症,侵襲性インフルエンザ菌感染症,侵襲性髄膜炎菌感染症,侵襲性肺炎球菌感染症,髄膜炎菌性髄膜炎,先天性風疹症候群,梅毒,破傷風,バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症,バンコマイシン耐性腸球菌感染症,風疹,麻疹
- ②指定された医療機関(小児科定点)が届け出る疾患:RS ウイルス感染症,咽頭結膜熱,A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎,感染性胃腸炎,水痘,手足口病,伝染性紅斑,突発性発疹,百日咳,ヘルパンギーナ,流行性耳下腺炎
- ③指定された医療機関(基幹定点)が届け出る疾患:クラミジア肺炎(オウム病を除く),細菌性髄膜炎(髄膜炎菌性髄膜炎は除く),マイコプラズマ肺炎,無菌性髄膜炎,感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに限る),ペニシリン耐性肺炎球菌感染症,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症,薬剤耐性アシネトバクター感染症,薬剤耐性緑膿菌感染症
- ④指定された医療機関(眼科定点)が届け出る疾患:急性出血性結膜炎,流行性角結膜炎
- ⑤指定された医療機関(インフルエンザ定点)が届け出る疾患:インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く)
- ⑥指定された医療機関(性行為感染症定点)が届け出る疾患:性器クラミジア感染症,性器ヘルペスウイルス感染症,尖圭コンジローマ,淋菌感染症
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