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体表創傷、感染症

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臨床医マニュアル

「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。

「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.


詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。 (リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690

Clinical Chart

  1. 体表創傷,異物,皮膚・軟部組織感染症のいずれも臨床医である以上,遭遇する頻度の高い病態であることを銘記する.
  2. 体表創傷の診断においては,受傷部位ごとの重要組織損傷に注意する.
     ①顔面:骨折の有無,髄液漏の有無,涙小管・耳下腺管・顔面神経損傷
     ②頸部:頸動脈・頸静脈損傷の有無,迷走神経・副神経損傷
     ③四肢:大血管・腱・神経損傷
  3. 治療については,一次閉鎖(縫合)可能か否かを正しく評価して愛護的操作を心がける.一時閉鎖ができない場合は湿潤環境が維持できる処置を行うことを原則とする.
  4. 体表より迷入した異物は,できる限り早期の摘出を試みる.物質の種類にかかわらず画像検査(単純 X 線―できれば軟部組織撮影,CT など)を行うほうがよい.
  5. 軽症の皮膚・軟部組織感染症については疾患の違いを正しく理解しておく.
     ①丹毒:A 群レンサ球菌が原因菌.病変は浅在性
     ②蜂窩織炎:ブドウ球菌が原因であることが多いが,その他の菌種にも注意.丹毒よりは病変が深在性
     ③癤(せつ)・癰(よう):毛包の化膿性炎症.感染性粉瘤との鑑別が必要
  6. 重症感染症については,早期に診断をつけることが治療上きわめて重要である.特徴的な症状や臨床経過が存在する疾患もあるので,これらを見逃さないように注意する.
     ①TSS:発熱,血圧低下,全身の潮紅,消化器症状など
     ②TSLS:上気道炎症状,発熱,血圧低下,筋肉痛
     ③ビブリオ・バルニフィカス感染症:肝疾患や貧血の治療歴のある患者が魚介類の生食後に発熱,出現といった病歴
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診断・検査・病態

1.体表創傷総論
[診断]
 一般に体表創傷は目につきやすいので,ともすればそこに目を奪われやすいが,多発外傷の場合などは生命維持に必要な臓器損傷の診断を優先する.診療の手順については多発外傷を参照のこと.通常の救急疾患同様,情報(受傷時期・受傷機転など)は患者自身あるいは家族ら現場にいた人たちから可能なかぎり集める.得られた情報と初期評価から早期加療が必要な深部組織損傷が疑われる場合は,速やかに上席者や専門医にコンサルトする.結果として,たいした状態でなければそれにこしたことはない.コンサルトにあたり,口頭で情報を伝えるには「どこに,どのような」創傷が存在するかを評価できなくてはならない.表1に受傷機転からみた体表創傷の分類を示す.

2.部位別の創傷処置
1)頭部・顔面
[診断]
①重要な深部組織(涙小管・耳下腺管・顔面神経)損傷の確認(図3).
②顔面骨骨折を疑う所見
 開口・咬合の障害,三叉神経麻痺,眼球運動障害・複視,鼻出血,耳出血
2)その他の部位(体幹・四肢)
[診断]
 深部組織損傷の確認(固有の名称がついている血管・神経・筋肉・腱など).
 体幹部においては体腔内との交通の有無の確認.
3)手・足の外傷
4)切断四肢(指趾)への対応
[診断]
 受傷時間・受傷機転など,情報をできるだけ収集しておく.血管・神経ともに細い部位ではあるが,再建可能なものは再建することが望ましいため創の深さを正確に評価すること.自傷行為の場合,精神疾患の治療歴や,受傷時の薬物(アルコール・向精神薬など)使用についても情報を集める.
5)皮膚・軟部組織異物
[診断]
 異物迷入が疑われる場合,部位・受傷機転・異物の種類を問わず必ず画像検査を施行する.金属・ガラス片は,ほとんど単純Xp(接線方向での軟部組織撮影ができればよりよい)で同定可能である.また,木片・プラスチックなども軟部組織撮影でぼんやりとではあるが描出されることがある.位置関係を把握するため,必ず2 方向以上撮影する.また異物の種類や迷入している深さによっては,エコーが有用な場合があるので,単純写真で同定されない場合には試みる価値がある.通常単純Xp 撮影で描出が困難とされている植物性異物(木片含む)も,陳旧性のものでは繊維が吸収した水分によってCTやMRIで描出しやすくなることがある.

2.皮膚・軟部組織感染症
1)遭遇頻度の高い疾患
[丹毒]
<検査>
 細菌学的検査ではA 群レンサ球菌,ついでB,C,G 群レンサ球菌が検出されることが多い.
[蜂窩織炎]
<検査>
 細菌学的検査ではブドウ球菌を認めることが多いが,化膿性レンサ球菌,大腸菌,嫌気性菌が認められることもある.
[癤(せつ)・癰(よう)]
<病態・診断>
  1. ①癤は毛孔へのブドウ球菌感染が毛包へと拡大した状態.これが拡大し多数の毛包に化膿性炎症が波及したものが癰.
  2. ②局所の発赤・腫張・疼痛をきたし,頂点に濃栓形成を認める.癰はさらに全身症状を合併することが多い.
[感染性粉瘤]
<病態・診断>
 癤・癰と鑑別を要する皮膚の良性腫瘍.粉瘤はもともと上皮性分でできた嚢腫壁を有し,内部に粥状角化物が存在する.多くの場合外界と交通している部分があり,ここから細菌が侵入すると化膿性炎症を引き起こす.
2)重症感染症
[トキシックショック症候群(TSS)]
<病態・診断>
  1. ①黄色ブドウ球菌の産生するスーパー抗原,あるいはエンテロトキシンによってT 細胞が活性化され,それが産生するサイトカインにより引き起こされる病態.
  2. ②全身の潮紅,落屑を認め,さらにショックに伴う諸症状(血圧低下,多臓器不全等)を伴う.ショックの出現に先行し咽頭痛や頭痛,さらには筋肉痛を伴う高熱,嘔吐下痢が出現することが多い.
  3. ③各種機関からガイドラインが刊行されているのでこれらを参照するとよい
[トキシックショック様症候群(TSLS)]
<病態・診断>
  1. ①わが国では劇症型A 群溶血性レンサ球菌感染症として知られている.黄色ブドウ球菌によるTSSに類似した症状を呈することからTSLS と呼ばれているが,こちらのほうが重篤.
  2. ②初期症状は発熱,咽頭痛,筋肉痛などであるが,非常に急速に進行しショック,軟部組織壊死,ARDS,DIC などを引き起こす.
[ビブリオ・バルニフィカス感染症]
<病態・診断>
  1. ①グラム陰性桿菌であるビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)による感染症.免疫力が低下した患者や肝硬変などの重篤な肝疾患を有する患者,さらに貧血で剤を内服中の患者は重症化する.感染経路は海産魚介類,特に汽水域でとれる甲殻類や河口域でとれる魚介類の生食,および加熱不足の料理を食べて感染する経口感染と,皮膚に創傷がある状態で汽水海水に入って経皮感染がある.
  2. ②初期症状は発熱と激しい疼痛が出現し,水疱・紫斑・紅斑など多様な皮膚病変が発症する.短時間に症状が急激に悪化し,ショックから多臓器不全を引き起こす.
[壊死性筋膜炎]
<診断>
 初期症状は蜂窩織炎に類似(発赤・腫張・熱感)するが,急速に水疱・血疱,表皮剥離,点状出血,壊死を生じる.部位や原因菌により膿の性状が異なる.ガス産生菌では浅筋膜上にガスが貯溜するため,触診で握雪感を感じる.
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表1 創傷の分類(受傷原因からの分類)
表はPC版サイトをご覧ください
図3 顔面の重要組織
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