アミラーゼアイソザイム(尿)
アミラーゼアイソザイム(尿)
臨床的意義
- 急性膵炎では発症から数日を過ぎて血中アミラーゼが正常化した後にも尿中アミラーゼの高値が持続するため,尿中アミラーゼの測定は急性膵炎の診断のみでなく経過観察にも有用である.しかし,高アミラーゼ血症の鑑別診断は血中アミラーゼアイソザイムの測定や,アミラーゼクリアランスとクレアチニンクリアランスの比(ACCR;【→】「アミラーゼ(尿)」p.167)で可能であることから,高アミラーゼ血症の鑑別に尿中アミラーゼアイソザイム測定を追加する必要はない.尿中アミラーゼ低値で,アミラーゼアイソザイムパターンが正常の場合には,腎機能障害かマクロアミラーゼ血症の可能性が高い.
- 膵疾患では,高アミラーゼ血症・尿症で,尿中アミラーゼアイソザイムが著明なP型優位となる.唾液腺疾患やアミラーゼ産生腫瘍(肺癌,卵巣癌,骨髄腫),糖尿病ケトアシドーシス,術後や外傷・熱傷・ショック後,人工心肺使用後,肺炎,肝硬変,子宮外妊娠破裂などによる著明なS型高アミラーゼ血症の場合には,尿中アミラーゼアイソザイムもS型優位となる.しかし,軽度のS型高アミラーゼ血症の場合には,尿中アミラーゼアイソザイムは正常のアイソザイムパターンを示すことが多く,S型高アミラーゼ血症の診断はできない.
- 健常人尿では,必ずP型アミラーゼがS型アミラーゼよりも優位であり,尿中P型アミラーゼがS型アミラーゼより低値の場合に,膵外分泌機能不全と診断できる.
- 尿中アミラーゼは血中アミラーゼより半減期が長く,かつP型アミラーゼはS型アミラーゼより尿中排泄率が高いので,臨床上膵疾患が疑われるが,血中アミラーゼが正常である場合や,膵炎発症後数日経ている症例において,膵疾患のスクリーニングとして用いることもできる.
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基準値・異常値
- 基準範囲
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P:55~90%,S:10~45%(参考値)
変動要因 - 異常値を呈する場合
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Sjögren症候群、 急性膵炎、 消化管の穿孔または穿通など膵液の消化管外漏出、 唾液腺疾患、 唾液腺摘出、 放射線照射後(下顎部・頸部)、 慢性膵炎の急性増悪、 慢性膵炎非代償期、 膵のう胞、 膵癌、 膵癌による膵の広範囲破壊、 膵広範切除・膵全摘後
- 変動要因
- 長期保存後試料では,P型,S型のmajor bandの活性が低下し,minor bandの活性が増加したり,新たなminor bandが出現する特異なアイソザイムパターンを呈することがある.
- 著明なS型アミラーゼアイソザイムの活性亢進がみられた場合には,採尿時の状況をチェックすることにより,唾液を混入させた詐病を診断できる.
( 大槻 眞 )
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