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シアリルSSEA-1抗原

シアリルSSEA-1抗原

別名 シアリルLex-i抗原,SLX,FH-6

臨床的意義

  • シアリルSSEA-1抗原は,各種の癌,特に腺癌の患者血清で高値となる.本抗原の検出により,肺腺癌,膵癌,卵巣癌の診断,経過観察,治療効果のモニタリングを行う.
  • 肺癌に加え,膵癌をはじめとする消化器癌,および卵巣癌患者血清で40~60%の症例で上昇する.胆道系の癌,肝癌,大腸癌では20~40%の陽性率が報告されている.肺癌では,本抗原は肺腺癌での陽性率が高く,ついで肺扁平上皮癌,大細胞癌の順となり,小細胞癌での陽性率は低い.肺腺癌における陽性例はゲフィチニブ(イレッサ®)の適応と重なる.卵巣癌においては,漿液性のう胞腺癌および粘液性のう胞腺癌で高値となる.
  • 膵癌をはじめとする消化器癌においては,シアリルSSEA-1抗原の陽性率はCA19-9には及ばない.しかし,本抗原はⅡ型基幹糖鎖のグループに属しており,CA19-9はⅠ型基幹糖鎖に属する.このため両抗原の測定値の間には相関がみられず,両者の並行測定により診断率が向上する.
  • 膵癌,胆道系の癌,大腸癌などの血管内皮への接着では,シアリルLeaが主要な役割を演じるが,肺癌乳癌,卵巣癌,肝癌などの血管内皮への接着では本抗原をはじめとするシアリルLex系統の糖鎖が主役を演じる.また,これらの癌では,臨床的な統計上も,本抗原陽性の癌細胞を持つ患者の術後生存率は有意に悪い.
  • 本抗原は,消化器系の良性疾患での偽陽性はきわめて少ない.ただし重症の慢性肺疾患,特にびまん性汎細気管支炎(DPB)で高値をみる.
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基準値・異常値

基準範囲
38.0U/ml以下(腫瘍マーカーとしてのカットオフ値)
陽性

胆道癌、  乳癌、  肺腺癌、  卵巣癌、  膵癌

肺腺癌,卵巣癌,膵癌,胆道癌,乳癌

偽陽性

びまん性汎細気管支炎(DPB)、  気管支拡張症、  重症肺結核、  肺線維症

良性疾患では,びまん性汎細気管支炎(DPB),肺線維症,気管支拡張症,重症肺結核など

次に必要な検査
  • 本抗原陽性の癌患者は血行性転移の危険度が高いと考えられ,陽性の場合は原発巣の大きさにとらわれずに遠隔転移の有無を精査する必要がある.
  • 画像診断や病理診断などで確認する.
( 神奈木玲児 )
臨床検査項目辞典

「最新 臨床検査項目辞典」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部の項目を抜粋のうえ当社が転載しているものです。全項目が掲載されている書籍版については、医歯薬出版株式会社にお問合わせください。転載情報の著作権は医歯薬出版株式会社に帰属します。

「最新 臨床検査項目辞典」
監修:櫻林郁之介・熊坂一成
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, inc., 2008.

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