髄膜炎
meningitis
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部（各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」）を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は，他に出典の明示があるものを除き，医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 頭痛と発熱を呈する患者をみたら髄膜炎を常に疑って診察することが重要である．
- 項部硬直などの髄膜刺激徴候は細菌性髄膜炎では大部分の症例で認めるが，他の髄膜炎では不明瞭のことがまれではない．不適切な抗菌薬使用により髄膜炎症状が修飾されている可能性も頭に入れておく．
- 髄膜炎の診断がついたら次のステップとして抗菌薬の大量投与を必要とする細菌性髄膜炎か否かを鑑別する．細菌性髄膜炎では治療開始までの時間が短いほど予後良好であり治療開始の遅れが致命的となる．
- 髄膜炎を疑えば，ただちに血液培養や CT で頭蓋内占拠性病変を否定したうえで髄液検査を行い治療に移る．劇症型では髄液採取直後からその結果を待たずに治療を開始する．
- 「無菌性」髄膜炎の診断は必ずしもウイルス性髄膜炎とイコールではない．このなかに抗菌薬の投与を要する疾患が隠れている可能性がある．
理学所見・検査
表2に髄膜炎の検査の進め方を示した．理学所見としては程度の差はあるが髄膜刺激徴候が共通して認められる．症例により意識障害や脳神経症状を示すことがある．問診，神経学的所見から髄膜炎が疑われたら，原則として頭部 CT で占拠性病変を否定したうえで，髄液検査を行う．一方，局所神経徴候や脳ヘルニア徴候を認める場合はただちに治療を開始する（図2）．この場合，脳膿瘍などの頭蓋内占拠性病変が疑われるため，頭部CTまたMRIを至急に実施する．ただし，詳細な検査を待っている間に適切な抗菌薬の投与が遅れることは避ける．
①髄液検査は本症では診断・治療にかかわる中心的検査であり，①髄膜炎の診断，②原因の鑑別診断，③治療経過をみるうえで欠くことができない．採取した髄液はただちに検査室に送り，細胞数・分画，グラム染色・鏡検，培養検査を依頼する．
②髄膜炎ではどのタイプでも初圧上昇と細胞増多を，多くの症例で蛋白増加を認める．鑑別診断では髄液糖/血糖比の低下，細胞の分画が重要である（表3，図2）．髄液糖/血糖比は 0.6 以下が異常値で，0.4 以下は細菌性髄膜炎が強く疑われる．多核白血球増多があれば細菌性髄膜炎の可能性は高い．ただし，多核白血球増多は結核性髄膜炎の病初期にも認めることがある．また，リステリア菌性髄膜炎ではリンパ球優位となることがあり注意を要する．髄液蛋白増加は無菌性髄膜炎では軽度のことが多く，100～120 mg/dL を超えることはまれである．
③発疹，耳下腺腫脹などがあればウイルス性髄膜炎が，結節性紅斑があれば Behçet 病，サルコイドーシスが，眼症状があればBehçet病，サルコイドーシス， Vogt－小柳－原田病が考えられる．また，髄膜炎菌血症ではウイルス性の発疹に類似した皮疹が見られることがあり，点状出血斑，紫斑が出現することもある．
④細菌性髄膜炎の細菌培養の検出率は未治療で 70～80％であるが，抗菌薬投与が先行した場合，陽性率は50％以下になる．塗抹の検出率は低い．髄液の培養と同時に血液培養も必ず行う．
⑤中耳炎や副鼻腔炎が原因として疑われる場合には嫌気性培養も出したほうがよい
⑥無菌性髄膜炎と判断される場合には，「McGee ZA, Baringer JR：Principles and practice of infectious diseases, 3rd ed (ed. by Mandell GL, et al). p.741, Churchill Livingstone, New York, 1990」を参考に感染性髄膜炎を鑑別する必要がある．
⑦結核性髄膜炎では菌の検出率は 10～40％と低く，アデノシンデアミナーゼ（ADA）高値や PCR 法での結核菌 DNA 検出が早期診断に参考になる．
①髄液検査は本症では診断・治療にかかわる中心的検査であり，①髄膜炎の診断，②原因の鑑別診断，③治療経過をみるうえで欠くことができない．採取した髄液はただちに検査室に送り，細胞数・分画，グラム染色・鏡検，培養検査を依頼する．
②髄膜炎ではどのタイプでも初圧上昇と細胞増多を，多くの症例で蛋白増加を認める．鑑別診断では髄液糖/血糖比の低下，細胞の分画が重要である（表3，図2）．髄液糖/血糖比は 0.6 以下が異常値で，0.4 以下は細菌性髄膜炎が強く疑われる．多核白血球増多があれば細菌性髄膜炎の可能性は高い．ただし，多核白血球増多は結核性髄膜炎の病初期にも認めることがある．また，リステリア菌性髄膜炎ではリンパ球優位となることがあり注意を要する．髄液蛋白増加は無菌性髄膜炎では軽度のことが多く，100～120 mg/dL を超えることはまれである．
③発疹，耳下腺腫脹などがあればウイルス性髄膜炎が，結節性紅斑があれば Behçet 病，サルコイドーシスが，眼症状があればBehçet病，サルコイドーシス， Vogt－小柳－原田病が考えられる．また，髄膜炎菌血症ではウイルス性の発疹に類似した皮疹が見られることがあり，点状出血斑，紫斑が出現することもある．
④細菌性髄膜炎の細菌培養の検出率は未治療で 70～80％であるが，抗菌薬投与が先行した場合，陽性率は50％以下になる．塗抹の検出率は低い．髄液の培養と同時に血液培養も必ず行う．
⑤中耳炎や副鼻腔炎が原因として疑われる場合には嫌気性培養も出したほうがよい
⑥無菌性髄膜炎と判断される場合には，「McGee ZA, Baringer JR：Principles and practice of infectious diseases, 3rd ed (ed. by Mandell GL, et al). p.741, Churchill Livingstone, New York, 1990」を参考に感染性髄膜炎を鑑別する必要がある．
⑦結核性髄膜炎では菌の検出率は 10～40％と低く，アデノシンデアミナーゼ（ADA）高値や PCR 法での結核菌 DNA 検出が早期診断に参考になる．
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表 2 髄膜炎の検査・診断の進め方
1 問診
髄膜炎を疑う症状があるか初発症状と経過
2 神経学的所見
①髄膜刺激徴候 ② 眼底検査
③局所神経症候 ④ 意識レベルなど
3 頭部 CT，頭部 MRI
①くも膜下出血，頭蓋内占拠性病変の否定
②合併する病変（水頭症，膿瘍形成，血管炎による脳梗塞）
＊髄液検査の禁忌症でなければ 4 へ進む
4 髄液検査
①髄液一般検査（髄液初圧，髄液細胞数・分画，髄液蛋白，髄液糖/血糖比，LDH）
②沈渣による細菌・真菌・結核菌の塗抹染色・鏡検および培養：グラム染色，墨汁染色，抗酸菌染色
③可能であれば行われるべき検査として，細菌抗原検査および細菌の遺伝子検査（PCR）
④細胞診
⑤ウイルス抗体価
⑥angiotensin converting enzyme（ACE）値：サルコイドーシス
アデノシンデアミナーゼ（ADA）値，PCR 法：結核腫瘍マーカー（CEA，CA 19－9 など）：髄膜癌腫症
⑦施行を考慮してもよい検査として，CRP，乳酸値，プロカルシトニン，髄液サイトカイン（TNF－α，IL－1）
⑧凍結保存
5 各種培養：細菌性髄膜炎が疑われる場合に施行
血液，尿，喀痰なども含めて行う
6 一般血液検査
白血球数，赤沈，CRP，プロカルシトニン，免疫グロブリンなど
7 細菌性髄膜炎では感染ルートの検索
副鼻腔炎，中耳炎，う歯，肺感染症，心内膜炎，髄液漏の有無 -
図2 髄液所見からみた髄膜炎の鑑別
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表 3 髄膜炎の髄液所見
圧（mmH2O） 細胞数（/mm3） 細胞分画 糖（mg/dL） 蛋白（mg/dL） 正常 50～180 ＜5 リンパ球 40～80
（血糖の 2/3）15～40 細菌性髄膜炎 200～400 以上 500～10,000 多核球 0～20 100～1,000 ウイルス性髄膜炎 100～300 5～500 リンパ球 40～80 20～100 結核性髄膜炎 200～600 25～1,000 リンパ球 ＜40 100～200 真菌性髄膜炎 200～600 25～1,000 リンパ球 ＜40 50～500
