原発性脳腫瘍
primary brain tumors
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
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Clinical Chart
- 原発性脳腫瘍の種類別の発生頻度は,神経膠腫,髄膜腫,下垂体腺腫,シュワン細胞腫の順となっており,脳ドックによる検診などで,偶然発見される無症候性髄膜腫などが増加傾向である.
- 脳実質内発生の悪性腫瘍の MRI 所見は,T1 強調画像で低信号,T2 強調画像で高信号,周囲に著明な脳浮腫を伴っており,不均一かつリング状に造影されることが多い.
- 脳腫瘍の内科的管理は,脳浮腫に対する治療が主になり,副腎皮質ホルモンと浸透圧利尿薬を用いるが,副腎皮質ホルモンは今後の脳浮腫の増悪を防止し,浸透圧利尿薬は現時点で存在する浮腫を排出する目的である.
- 脳実質内発生の悪性腫瘍は,浸潤性であり,手術で全摘出することは困難で,主に化学療法,放射線療法が標準治療とされている.
- 悪性神経膠腫に対する放射線療法併用化学療法は,アルキル化剤であるテモゾロミドと抗 VEGF 抗体ベバシズマブを併用する AVAglio レジメンがよく用いられている.
- 中枢神経系悪性リンパ腫の治療は,放射線治療や化学療法が一時的に著効するため,手術では全摘出せず,メトトレキセート大量療法とそれに続く放射線治療を行い,生存期間中央値は約 35~40 カ月程度は見込める.
診断
- ①臨床症状
脳腫瘍による臨床症状として,頭蓋内圧亢進症状と巣症状に分けられる.頭蓋内圧亢進症状は,頭痛や悪心,嘔吐,視力障害などがあり,脳ヘルニアを起こしてくると意識障害を伴うことになる.巣症状とは局所兆候を指し,局所の浸潤,隣接する構造物への圧迫によって,以下のような症状を起こす.
前頭葉:片麻痺,優位半球であれば運動性失語,側頭葉:優位半球で感覚性失語,頭頂葉:感覚異常,身体失認,優位半球でゲルストマン症候群,後頭葉:同名半盲.小脳や脳幹部病変では,複視,顔面知覚の異常,顔面麻痺,構音障害,小脳失調などが起こりうる.頭蓋内圧亢進症状と巣症状の有無と経過は,手術適応や時期を決めるための重要な因子である.
- ②画像診断
- ①MRI:脳腫瘍の診断において,MRI が最も威力を発揮する.T1 強調画像,T2 強調画像,ガドリニウム造影T1 強調画像は必須であり,腫瘍の広がりをみるときや,転移性脳腫瘍を検索するには3方向の撮影が有用である.一般的には脳実質内に発生する悪性腫瘍は,T1 強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示し,周囲に著明な脳浮腫を伴い,不均一かつリング状に造影されることが多い(図1).
神経膠腫は白質神経線維の走行に沿って浸潤発育することが多く,なかでもWHO grade Ⅳの膠芽腫では多房性に造影され,深部白質から発生する傾向にある.悪性リンパ腫は均一に造影され,拡散強調画像で高信号となり,鑑別に有用なことがある.また脳腫瘍との鑑別を必要とする疾患として,転移性脳腫瘍,脳出血,出血性梗塞,静脈性梗塞,多発性硬化症,脳炎,脳膿瘍などがある.転移性脳腫瘍は多発性が60%程度あり,皮髄境界に発生するのが特徴である.
- ②CT:脳腫瘍の画像診断では,ほとんどMRI に取って替わられているが,石灰化の検出や急性期の脳出血との鑑別に有用である.石灰化を伴う腫瘍としては,脳実質内腫瘍では乏突起神経膠腫,脳実質外腫瘍では頭蓋咽頭腫,髄膜腫などがある.
- ①MRI:脳腫瘍の診断において,MRI が最も威力を発揮する.T1 強調画像,T2 強調画像,ガドリニウム造影T1 強調画像は必須であり,腫瘍の広がりをみるときや,転移性脳腫瘍を検索するには3方向の撮影が有用である.一般的には脳実質内に発生する悪性腫瘍は,T1 強調画像で低信号,T2強調画像で高信号を示し,周囲に著明な脳浮腫を伴い,不均一かつリング状に造影されることが多い(図1).
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図1 右側頭葉に発生した膠芽腫の例
a:T1強調画像,b:造影T1強調画像,c:T2強調画像,d:FLAIR画像