膠原病総論
collagen disease
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「臨床医マニュアル 第5版」は、医歯薬出版株式会社から許諾を受けて、書籍版より一部(各疾患「Clinical Chart」および「臨床検査に関する1項目」)を抜粋のうえ当社が転載しているものです。転載情報の著作権は,他に出典の明示があるものを除き,医歯薬出版株式会社に帰属します。
「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
詳細な情報は「臨床医マニュアル第5版」でご確認ください。
(リンク先:http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=731690)
Clinical Chart
- 膠原病とは,原因は自己免疫疾患として,病理学的には結合組織病,臨床的にはリウマチ性疾患として,それぞれの特徴を併せ持つ疾患群の総称である.病因は生命科学の進歩で一部が明らかとなりつつあるが,解明されていない点が多く不明と言わざるを得ない.
- 年齢の若い人も多い.女性に多い.有病者は 100 万人を超えると推定される.
- 関節痛,発熱,皮疹の頻度が多いが,全身諸臓器を侵す疾患のため多彩な症状や所見をきたす.
- 検査は,抗核抗体や各種自己抗体など免疫異常の検査と,好発する臓器の検査を行い炎症の程度と広がりを評価し病態の把握を行う.
- 早期に診断でき,早期に適切な治療がなされると治療成績は良い.
- 診断は,分類(診断)基準を満たすかによる.基準を満たさないうちに進行する症例もあり,判断に迷ったら専門医に相談する.
- 各疾患ごとに活動性を評価するscore化された指標があり,どのような場合に治療を行うかや治療効果の判定にも使用されている.
- 治療は,NSAIDs,ステロイド,各種免疫抑制剤,生物学的製剤,γグロブリン製剤,血液浄化法などがある.治療の選択に迷ったら専門医に相談する.
- 外来では,原疾患の再燃や副作用を含む合併症の発見がポイントである.感染症では肺炎や抗酸菌症,帯状疱疹が多く重症化しやすい.
- 膠原病に分類される疾患(表1)の多くが「特定疾患」(いわゆる難病)であり,医療助成の対象となる.膠原病は増悪寛解を繰り返し進行する症例も多く,内臓や肢体に障害が進行する.介護保険の給付や身体障害者福祉法の対象かなど,社会資源の適応も考慮する.
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表1 膠原病の種類
[古典的膠原病]
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)
強皮症(Scleroderma)
皮膚筋炎(dermatomyositis complex:DM)/多発性筋炎(polymyositis:PM)
結節性多発性動脈炎(polyarteritis nodosa:PN)
混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)
[その他の膠原病・膠原病類縁疾患]
シェーグレン症候群(Sjögren syndrome:SjS)
顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangitis:MPA)
Wegener 肉芽腫症(Wegener’s granulomatosis:WG)
アレルギー性肉芽腫性血管炎(allergic granulomatous angitis:AGA)
(チャーグ・ストラウス症候群(Churg-Strausssyndrome:CSS)ともいう)
過敏性血管炎(hypersensitivity angiitis)
ベーチェット病(Behçet’s syndrome[disease])
コーガン症候群(Cogan’s syndrome)
RS3PE(remitting seronegative symmetrical synovitis with pitting edema)
側頭動脈炎(temporal arteritis:TA)
成人スティル病(adult-onset Still’s disease:AOSD)
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)
線維筋痛症(fibromyalgia syndrome:FMS)
SAPHO 症候群リウマチ熱(RF)については古典的膠原病に分類されていたが,原因が判明したため,現在は膠原病から外されている.
検査
(赤星 透:疾患編・免疫・リウマチ/膠原病またはその類縁疾患, 臨床検査のガイドライン 2005/2006(日本臨床検査医学会編), 2005 参照)
①尿所見
尿検査で蛋白尿,血尿,顆粒・細胞性などの円柱
②白血球数やCRP,赤沈などの炎症反応の評価
③抗核抗体
膠原病全体で陽性率が高い(表5).抗核抗体の染色パターンからそれぞれの膠原病の診断の手がかりになる.
④各種自己抗体(表6)
これは,その臨床的意義として,各膠原病の分類(診断)基準に含まれているような疾患を特徴づける疾患標識自己抗体であるのか,治療効果の判定や疾患の活動性によって変動する自己抗体であるのかを知っておく必要がある.
例えば抗U1-RNP 抗体は,MCTD の疾患特異的自己抗体であるが,MCTD を治療し寛解しても陰性化しない.一方抗dsDNA 抗体はSLE の疾患特異的自己抗体ではあるが,同時にループス腎症の活動性の指標として,ステロイド治療は抗dsDNA 抗体陰性化も目標とされる.
⑤Xp 検査
RA などでは,四肢の関節のXp 検査を行い,関節破壊の把握を行とともに,スコア化して治療効果の判定にも使用される.
SLE やSSc やPM/DM やMCTD では間質性肺炎や胸水のチェックを行う.
⑥エコー
RA では,関節エコーで,関節液の評価や滑膜の肥厚部位の血管新生の評価に使用される.
SLE では,漿膜炎の評価として,心嚢水や胸水の貯留の評価に使用される.
⑦CT
肺炎や間質性肺炎,胸水の評価に使用される.
⑧骨シンチグラフィー
転移性骨腫瘍や骨折や骨代謝疾患などで陽性に描出される.関節リウマチなど膠原病で関節炎をきたす場合も陽性となり,病的骨折の発見にも有効である.
⑨MRI
RA では関節滑膜の炎症がわかる,罹患関節の骨髄浮腫像があると活動性が高く骨破壊に至ることが知られている.PMR では肩甲下,三角筋下滑液包炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.PM・DM では横紋筋の炎症性疾患の病変部位が描出され,筋生検の指標になる.SNSA(seronegativespondyloarthritides)では仙腸関節炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.
⑩FDG-PET/CT
RA では関節滑膜や骨髄の炎症がわかる.関節炎の活動性と相関するという報告がある.PMR では肩甲下,三角筋下滑液包炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.これは,PMR と高齢発症のRA と鑑別に有用である.腫瘍随伴症状である場合,悪性疾患の部位も陽性に描出されるという利点がある.PM・DM では横紋筋の炎症性疾患の病変部位が描出され,筋生検の指標になる.悪性疾患を合併している部位も陽性に描出されるという利点がある.
SNSA では,仙腸関節炎の感度はMRI より高く,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.血管炎では,大動脈炎などの大血管炎はほぼ陽性になり,PNなどの中型血管炎は陽性となることがあるが,MPA などの小血管炎はほぼ陰性である.
尿検査で蛋白尿,血尿,顆粒・細胞性などの円柱
②白血球数やCRP,赤沈などの炎症反応の評価
③抗核抗体
膠原病全体で陽性率が高い(表5).抗核抗体の染色パターンからそれぞれの膠原病の診断の手がかりになる.
④各種自己抗体(表6)
これは,その臨床的意義として,各膠原病の分類(診断)基準に含まれているような疾患を特徴づける疾患標識自己抗体であるのか,治療効果の判定や疾患の活動性によって変動する自己抗体であるのかを知っておく必要がある.
例えば抗U1-RNP 抗体は,MCTD の疾患特異的自己抗体であるが,MCTD を治療し寛解しても陰性化しない.一方抗dsDNA 抗体はSLE の疾患特異的自己抗体ではあるが,同時にループス腎症の活動性の指標として,ステロイド治療は抗dsDNA 抗体陰性化も目標とされる.
⑤Xp 検査
RA などでは,四肢の関節のXp 検査を行い,関節破壊の把握を行とともに,スコア化して治療効果の判定にも使用される.
SLE やSSc やPM/DM やMCTD では間質性肺炎や胸水のチェックを行う.
⑥エコー
RA では,関節エコーで,関節液の評価や滑膜の肥厚部位の血管新生の評価に使用される.
SLE では,漿膜炎の評価として,心嚢水や胸水の貯留の評価に使用される.
⑦CT
肺炎や間質性肺炎,胸水の評価に使用される.
⑧骨シンチグラフィー
転移性骨腫瘍や骨折や骨代謝疾患などで陽性に描出される.関節リウマチなど膠原病で関節炎をきたす場合も陽性となり,病的骨折の発見にも有効である.
⑨MRI
RA では関節滑膜の炎症がわかる,罹患関節の骨髄浮腫像があると活動性が高く骨破壊に至ることが知られている.PMR では肩甲下,三角筋下滑液包炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.PM・DM では横紋筋の炎症性疾患の病変部位が描出され,筋生検の指標になる.SNSA(seronegativespondyloarthritides)では仙腸関節炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.
⑩FDG-PET/CT
RA では関節滑膜や骨髄の炎症がわかる.関節炎の活動性と相関するという報告がある.PMR では肩甲下,三角筋下滑液包炎,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.これは,PMR と高齢発症のRA と鑑別に有用である.腫瘍随伴症状である場合,悪性疾患の部位も陽性に描出されるという利点がある.PM・DM では横紋筋の炎症性疾患の病変部位が描出され,筋生検の指標になる.悪性疾患を合併している部位も陽性に描出されるという利点がある.
SNSA では,仙腸関節炎の感度はMRI より高く,坐骨や棘突起や大転子周囲の滑液包炎が描出される.血管炎では,大動脈炎などの大血管炎はほぼ陽性になり,PNなどの中型血管炎は陽性となることがあるが,MPA などの小血管炎はほぼ陰性である.
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表5 抗核抗体
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表6 各種自己抗体
自己抗体 臨床的意義 抗dsDNA 抗体*# SLE の疾患標識抗体であり,感度は57.3%であるが,特異度は97.4%と高くSLE 診断での有用性は大きい.ループス腎症の活動性と相関するが,CNS ループスの活動性とは相関しないことが多い. 抗Sm 抗体*# SLE の15~30%に陽性となる.中枢神経ループスやループス腎炎(遅発性腎炎),生命予後不良例との関連が指摘されている.SLE に特異度が高い. 抗U1-RNP 抗体*# MCTD 疾患標識抗体であり,レイノー症状,手指腫脹や肺高血圧症とよく相関する.SLE においても30~50%に陽性となり,手指腫脹,レイノー症状を伴いやすい.PSS でも陽性となる. 抗Scl-70 抗体*# PSS の15~30%に陽性となる.皮膚硬化の範囲が広く,また肺線維症や強皮症腎などの臓器障害を合併しやすいなどのびまん型PSS 症例に陽性となる.抗セントロメア抗体との併存は稀である.抗トポイソメラーゼ抗体とも呼称される. 抗セントロメア抗体*# 強皮症で陽性となる.皮膚硬化の範囲は狭く,肺合併症なども比較的少ない限局性強皮症(LcSSc)の症例(クレスト症候群)で陽性となる.原発性胆汁性肝硬変症においても陽性になることがある. 抗Jo-1 抗体*# 多発性筋炎/皮膚筋炎の20~30%に陽性となる.皮膚筋炎よりも多発性筋炎の方に多く検出される.抗PL-7,抗PL-12,抗EJ,抗OJ,抗KS 抗体とともに抗アミノアシルtRNA 合成酵素(aminoacyl tRNA synthetase:ARS)抗体の群に属し,間質性肺炎,多関節炎,mechanic‘s hand(機械工の手)などの臨床的特徴や疾患予後と関連している.これらを持つ症例は抗ARS 抗体症候群と呼ばれる. 抗SS-A/Ro 抗体*# シェーグレン症候群の50~70%に陽性となる.SLE,強皮症,多発性筋炎/皮膚筋炎など他の膠原病でも高率に検出される.乾燥症状との関連性は高い.本抗体陽性の母親から生まれた児に新生児ループスと呼ばれる心ブロックや皮疹の報告がある. 抗SS-B/La 抗体*# シェーグレン症候群の20~30%に陽性となる.疾患特性が高い.本抗体陽性例は高γグロブリン血症,リウマトイド因子,皮膚病変(紫斑,血管炎)が高頻度に認められる. 抗PCNA 抗体 SLE(<5%),特に中枢神経ループスやびまん性増殖性糸球体腎炎において認められる.SLE の他,肝炎(HCV,HBC)において検出される. 抗リボソームP 抗体 中枢神経ループスの精神障害との相関が高いことが知られている. *:疾患標識自己抗体,#:保険適応