可溶性E-セレクチン

略称	sCD62E
別名	可溶性CD62E，可溶性ELAM-1

E-セレクチンの発現は，IL-1，TNF-α，IFN-γなどの炎症性サイトカインや活性酸素などの刺激によって，数分以内に血管内皮細胞上で著明に増強し，循環血中の白血球との接着に関与する．したがって，自己免疫，感染，腫瘍浸潤，移植拒絶，アレルギー，動脈硬化などを契機にもたらされる炎症性病態の形成に深く関与する．
循環血中に検出される可溶性E-セレクチンは，血管内皮細胞表面に発現したものが遊離したもので，細胞外成分の大部分を有する．また，炎症部のみならず癌細胞周囲など血管新生が活発な組織ではE-セレクチンの発現は相対的に増強する．
以上のことから，循環血中の可溶性E-セレクチンを測定することによって，E-セレクチンを発現する血管内皮細胞の細胞数の増加や内皮細胞上のE-セレクチンの発現量の増加を推測できる．
本検査は，上記のような炎症性疾患の活動性や程度，担癌組織における血管新生の程度，また治療効果を知りたいときに応用できる．
CRP，赤沈，白血球数などの一般的な炎症マーカーで十分な情報が得られない際に代用できる可能性がある．

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基準範囲

18.3～66.2ng/ml
変動要因

高値

各種炎症性疾患の活動期：①成人呼吸促迫症候群（ARDS），全身性炎症反応症候群（SIRS），②敗血症などの重症感染症，③関節リウマチや血管炎症候群などの各種全身性自己免疫疾患，④移植拒絶，⑤アレルギー性疾患，⑥動脈硬化症，⑦その他：サルコイドーシス，糖尿病腎症など
癌：悪性黒色腫，Hodgkin病，慢性Bリンパ球性白血病，成人T細胞白血病，膀胱癌，膵癌，乳癌，肝細胞癌，転移性肝癌

次に必要な検査

本検査は，基本的には炎症性疾患の活動性の指標と考えられ，経過を追って病態の進行の程度や治療の効果をみることが主目的と考えられる．また，一般的な炎症マーカー，他の可溶性接着分子などと比較検討することが肝要である．

変動要因

マウス抗体を用いるEIAであるので，抗体療法を受けて生体内に抗マウス抗体を有する患者では，異常高値または低値を呈する．

（田中良哉）

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