心筋炎
myocarditis
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「臨床医マニュアル 第5版」 編集:臨床医マニュアル編集委員会
Copyright:(c) Ishiyaku Publishers, Inc., 2016.
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Clinical Chart
- 心筋を炎症の場とした炎症性疾患の総称.急性心筋炎と慢性心筋炎からなるが,臨床の場で遭遇するのは,ほとんどが前者である.
- 基礎心疾患(高血圧,虚血性心疾患,弁膜症など)がない者が,感冒症状や消化器症状を呈する先行感染に続いて,数時間~数日で心症状(心不全,不整脈,心膜炎などによる)をきたしたときに疑う.
- 症状,検査に特異的な所見はなく,疑うことが診断の第一歩となる.上述の病歴と,心筋マーカー(心筋トロポニン I や T など)の上昇から疑い,急性心筋梗塞を除外することで診断される.確定診断は組織診断によるが,心筋生検は行われないことが多い.
- 軽症であっても入院管理とし,バイタルサイン,心電図モニター,血液検査,12 誘導心電図,心エコー図を経時的にチェックする.
- 原因はウイルスによるものがほとんどであるため,治療は合併症(心不全,不整脈)への対処が中心となる.安静は最も重要な治療のひとつである.
- 多くは 1~2 週間の急性期を乗り切れば,自然軽快するが,約 5%は心原性ショック,心不全,不整脈から死に至る.
- 劇症型心筋炎でも,急性期を乗り切れば予後は良好である.重症の徴候があれば,早めに専門医に紹介する.
診断
- ①症状
- ②身体所見
- ③血液検査
- ④心電図
- ⑤胸部Xp
- ⑥心エコー図 ⑦冠動脈造影
- ⑧心内膜心筋生検
- ① 確定診断は唯一組織診断によるが,心筋生検が行われることは少ない.
- ② 重症例や遷延例では治療効果の判定にも役立つ.
- ③ 心内膜心筋生検は,心エコーで異常を認める部位を中心に,3 カ所以上を採取したい.
- ④ 感度は10 日以内では約90%だが,1 カ月以降では約60%と低下する.早期の生検が望ましい.
- ⑤ ⅰ心筋変性,壊死像と,ⅱそれに近接する炎症細胞の浸潤像を認める.また,ⅲ間質の浮腫も認める.さらに,電子顕微鏡や免疫組織学的手法は,より詳細な情報を提供し得る.
- ⑥ 病理組織学的には,ⅰリンパ球性,ⅱ巨細胞性,ⅲ好酸球性,ⅳ肉芽腫性に分類される.ⅰはウイルス感染によるものが多い.
- ⑨その他
- ① 心臓核医学検査で,67Ga の心筋集積は特異性が高いが,感度はあまり高くない.99mTc ピロリン酸心筋シンチは比較的高感度で心筋炎病巣に一致した集積像を描出する.111In-標識抗心筋ミオシン抗体の心筋集積も感度が高いが,わが国ではまだ臨床導入されていない.
- ② ガドリニウム造影心臓MRI のT1 強調像や遅延造影で信号強度の増強像が認められ,さらにT2 強調画像など炎症部位に一致した所見(主に炎症性浮腫像)が心筋炎診断に有用との報告がある.
有意な所見は認めないが,急性心筋梗塞の除外のために必要である.